『新しい旅館のあり方と地方創生
― 宿泊観光業におけるDX事例 ― 』
講師:
元湯 陣屋 代表取締役 女将
宮﨑 知子 氏
【開催後レポート】
参加者のコメント
大小、様々な気づきをいただきました。なかでも『”監視”と”連携”はデジタル化できる』『指示を出す側、受ける側の心理的格差は情報共有で平等化できる』と気づいたことが大きかったです。
当たり前と思われていることを否定してみる。
全く違う分野のやり方考え方を取り入れる。
選ばれるために何をするのかという視点と積極的にこちらが選ぶという視点をもつということの重要性。
人を動かすためのヒント。
マネジメントをする立場なので、シンプルに何が大事なのか、何を目指すのかというビジョンを明確にして、部下に伝えていくことで、自分一人では少しの変化しか起こせなかったことが、何倍もの速度で変化を起こしていけそうだと思った。
また、一方的に私からの発信をするのではなく、第三者にも言ってもらう。褒めてもらう。といった環境も作れるとよい。
来て満足度が下がるお客様には来ていただかなくていい、ネガティブな情報を発信されるようなお客様には来ていただかないほうがいい、といったお話はまさしく目からウロコでした。
目の前の売上や利益にフォーカスを当てすぎて「私たちのお客様かどうか」という観点を見失うことがよくあります。値引きして無理やりシステムを導入し、お互いが幸せになれないシチュエーションを何度も見てきました。
ブランド価値を高め、お客様に真の満足を提供するためには、「私たちのお客様かどうか」を見極めることが大切だと改めて感じました。
掴んだ価値は、比較するからビジョンが生まれる、という点です。異分野での経験から「こうだったら良いのに」「もっとこうしたら良い」というビジョンになり、そのビジョンと現状のギャップから「なんでだろう」という違和感や課題になり、その見つけた違和感や課題を解決するために、ITの力を使うという本来のDXの意義の手触りを感じることができました。
特に、大事なのは質問もさせていただいたビジョンにあると思います。多くの企業で、「こうだったら良いのに」というビジョンが描けないことが、DXを叫んでも進まない原因だと感じます。また、戦略の実行は、経営者が正しく権力を使うことであると思っています。まさに、立てた戦略を実行するために、インセンティブ設計(貴賓室のお話)を行い、社員を巻き込んでいかれたというお話しも、目からウロコでした。
システムに完成はない、常にアップデートし変わり続ける、といったお話は、非常に共感できる内容でした。社会も市場も環境も変わっていく中で、会社や経営も変わっていくのは必然であるのに、システムだけが変化についてこれていないというのは明らかに歪だと思います。導入して本稼働して終わりと思いがちですが、使い始めるところがスタートで終わりはないと考えなおす必要があると思いました。また、Excelはデータの墓場、といった言葉にはドキッとさせられました。
事業戦略・経営者目線におけるDXの目的とシナリオが明確なのが秀逸です。システムの考え方もクラウド利用だけでなく一元的なシステム化にしたというポリシーのメリットに気付かされました。それぞれの用途・個々の事業要請で別々に作るとシステムがいっぱいできて、確かにデータの二重登録とデータを引っ張ってきてEXCELで処理して報告資料化している現状に気付かされました。
最初のシステムの選定時に安易な目先の課題解決だけではなく、将来も見据えた選定をしていたところ。
システムの精度や機能性にとらわれずに目的を本質的にとらえてそれへ向けた解決策を探す。
準備に時間をかけずに挑戦できることはすぐに取り掛かり、実現させたほうが良い。
私は金融業に従事しており、労働集約型であることは旅館宿泊業と似ているが、「DXは馴染まない」とやや諦めモードになっていた。しかし、宮崎社長の話を聴いて、「例え一部であっても、DXは導入できるのでは」と、妙な自信が芽生えた。
1. デジタルマーケティング、情報の整理、可視化による活用方法。
2. 繋がりたい人、集約したい顧客のみを集めて満足度を上げる、顧客の集中と選択
本質を見極めて、軸をブラさずに愚直に日々を積み上げていくこと。
問題が山積みだと、課題っぽいことに時間を掛けて対応した気になってしまいがちだが、その中でも何がキーになるのかを見極めて、大切なことを守りながら、時にはそのために犠牲を払いつつもやり遂げることが大事になのだと感じました。
自分に起った事象(ピンチ)をチャンスに変える為に、ポジティブ思考で事象を捉えて常に行動(発想)する。出来ない言い訳でなく、出来る事を考える。
宮﨑様と旦那様の
「追い込まれている状態からの起死回生は、腹のくくり方で決まる」がまさしく今回掴んだ価値と考えています。
また、馬鹿者、よそ者、若者が時代を変えるとおっしゃられました。
私は、よそ者として価値を最大化したいと考えました。
本題ではなかったですが、かなり顧客のターゲットを明確にしているなと感じました。
特に、緑屋のシステムでスマホを持っている人限定にしていたり、単価を上げる際に稼働率は下がるときなど。売上に走ってしまうと顧客像がブレて提供する価値もブレることが多くある中で、とてもすごい決断だなと感じました。
個々の持っている情報がいかに宝の山なのか、引き出して活用する事の価値を改めて学びました。
例えばですが、新しくオープンした旅館は現地払いをなくしたとおっしゃってて、現地払いをしないこと→金庫が不要→ということはバックルームが不要→スタッフが表に出て接客ができる、というのを聞いて、単純に現金払いをなくす=手間が省ける、ということだけではなく、その先に何段階も価値があることにつながるんだな、と感じました。そこまで深く戦略的に考えていくことを日々意識していきたいと思いました。
マルチタスクを広げるという点は弊社にも取り入れることができる。弊社では事業の幅が広く、メインで担当しているもの以外への業務に携わることへの抵抗感が大きく思える。そのため日常業務から幅広く社内の事業に触れることで、抵抗感をなくしスムーズな協力関係が築けるだろう。
自ら成功したノウハウを自社内にとどめることなく、同業他社さらには地域発展に展開していくことで観光産業全体を振興しようとしている姿勢。
陣屋の旅館の展開、陣屋コネクトの展開、里山コネクトの展開、さらにコンサルティング事業と、常に時々の課題解決をするための展開に積極的であること。状況を可視化して、効果と生産性を追求し続けている真摯さ。
業務を効率化し、高付加価値の所にシフトし、単金をあげる。CS・ES・プロフィットの3つを上げる戦略を考える参考にしたい。
単価アップ(高付加価値、高単価、低稼働率)戦略実現の施策として、スモールスタート(おもてなしの実験場として貴賓室活用)で実証し、従業員・パートへ浸透させた点、およびワークスタイル変革(週4日休館制採用)により多様な働き方を求める人材のニーズにマッチさせた点
最近の「目からウロコ!」の講師に共通して言える事ですが、ピンチをチャンスに変える行動力、発想、マインド。
感性が大切なことだが習得が難しい。
お客様への返答によって、お客様が諦めてしまうことがある。
ナビゲーターの井上さんの
「気づく感性を持てなければ、問題にも気づけず、解決の糸口も見つからない」
「普段から良いものを見て、感じて、アウトプットする」
という言葉も響きました。
【開催概要】
タイトル | 新しい旅館のあり方と地方創生 ― 宿泊観光業におけるDX事例 ― |
日時 | 2024年1月29日(火) 18:00〜 アクセス可 18:15〜20:00 研究会 |
講師 | 宮﨑 知子(みやざき ともこ)氏 元湯 陣屋 代表取締役 女将 |
申込方法 | BPIA会員以外の方も参加できます。 事前のお申込みが必要です。 下記フォームまたはFacebookイベントページよりお申込みください。 |
開催方法 | Zoom ※参加表明をいただいた方には、後日、開催情報(URL等)をお送りします 【Zoom開催にあたっての注意事項】 ※ 表示名は「氏名」にしてください。 受付時にお申込者リストと照合するため、お名前がわかる状態にしてください。 表示名がリストと一致しない方は、ご退出いただく場合があります。 ※ 参加者の方も「顔出し(カメラON)」でご参加ください。 移動中等、顔出しができない場合は、事前にご連絡ください。 ※ 質問の際以外は、ミュート(マイクOFF)にしてください。 ※ 初めてZoomをお使いになる方は、事前にZoomのインストールが必要です。 |
備考 | 勧誘・セールス・就職活動等を目的とした方の参加は固くお断りします。 |
2024年、最初の講演は、2014年 「BPIA総会」の特別講演、2018年「企業活性化研究会」の企業訪問で、お世話になった鶴巻温泉 元湯 陣屋の女将、宮﨑知子さん。
2014年の総会では、当時社長していらっしゃったご主人の宮﨑 富夫氏に「プラットフォーム革新が切り開く新しい旅館経営」と題して、旅館が本当に欲しいシステムを開発するために現場スタッフ・エンジニア・経営者がどう一体となってシステムを開発し、導入を実現させたかのお話を伺いました。
2018年の企業活性化研究会では、働き方改革の視点から実際に陣屋さんを訪問。
前述の基幹システムに加えて、センサーや自動認識などのIoTも活用し、「旅館に休日なし」といわれる業界で週休3日を実現。
「CS(顧客満足)、ES(従業員満足)、Profit (利益率)を世界一に」を実現するさまざまな施策を、実際に現場で見学させていただきました。
そして、今回。
旅館業も大きなダメージを受けたコロナ禍を乗り越え...
乗り越えたどころか、この間、「陣屋」は新たな事業展開をしていました!
次世代型温泉旅館の「緑屋」を長野、長崎、兵庫などに展開。
進化を続ける「陣屋」の取り組みについてお話を伺います。
宮﨑さんの情熱やバイタリティ、決意を肌で感じていただきたく、今回は会場開催にいたしました。
ぜひ、ご参加ください。
【講師より】
2009年に元湯陣屋を主人と事業継承してから、旅館を立て直すために業務のIT化を進めました。
当時まだDXという言葉は有りませんでしたが、当初よりクラウドサービスに着目し、基幹システムの自社開発を始めます。
自身の旅館を良くするためが目的でしたが、次第にどんな宿泊施設にも同様の課題が存在することから、問題解決ツールとして陣屋でのノウハウと共に同業他社へのライセンス販売を始め、今では500施設以上に利用いただくシステムとして業界に定着してきました。
現在はこの取り組みを一施設に留まらず、地域で利用する仕組みとしてもリリースを開始し、地方創生に貢献しています。
今回はこの現在の観光業でのDX事業についてもご紹介いたします。
宮﨑 知子(みやざき ともこ)氏
元湯 陣屋 代表取締役 女将
■ナビゲーター
井ノ上 美和
■主催
BPIA (ビジネスプロフェッショナルインキュベーション協議会)
■共催
ITmedia エグゼクティブ