| テーマ: | 業務プロセス改善への取組 〜三井物産の事例 |
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| 講 師: | 吉岡 亮 氏 三井物産株式会社 業務プロセス管理第二部 部長 |
| 日 時: | 2008年7月2日(水)15:00-17:00 |
| 場 所: | 三菱総研ビル 13階 B会議室 |
三井物産は2002年から米国SOX法の対応をしている。その対応過程と現状、今後のシェアドサービス化の検討状況を紹介する。
当社はNasdaqに上場しているため、US-SOX法が施行されることに伴い、対応が必須となった。対応を検討する際、COSOのフレームワーク(*)を使って、以下の3つの観点から推進することとした。
しかし、これらはSOX法対応として実施して当然のことである。当社ではさらに、以下の観点も重視した。
その理由は当社では業務セグメントが多岐に渡ることに加え、親会社本体のみならず関係会社における統制環境の整備も火急の課題となっていることから慢性的に人手不足の状態となっており、今後は従来にも増して社外の人材に業務を分担してもらわなければ業務が回らないためである。そのため、人材の有効活用という観点では社員以外の人でも業務遂行が可能になるように親会社の会計関連業務の標準化・可視化を進めると共にBPRを通じて業務を整理することを目指した。その際、部分的にではあるがERPを導入していたのでSOX法対応も兼ねて業務の標準化に活用することを検討した。
(* COSO) Committee of Sponsoring Organization of the Treadway Commissionが公表した内部統制のフレームワーク。事実上の世界標準。)
当社は業務セグメントごとに組織が分かれていて情報システムも企業間システムなど個別システムをそれぞれ持っていた。又、業務の進め方も各業界の特性・慣習などもあって、互いの領域についてはあまり共有知識がなく、あたかも小さい会社の集合体のようであった。今回のBPRの機会をとらえて、組織を全体最適の視点で見直し、同じ機能ならば同じ業務のやり方及び内部統制の手法を導入することを目標とした。
まず、それまで当たり前だった業務セグメント別管理組織を廃止し、機能別組織に再編した。具体的にはそれぞれの商品セグメントに営業審査部門や経理部門などが存在していたのだが、それを全体の経理及びリスクマネジメント業務をする部署に統合した。具体的には経理部に加えて信用リスクや市場リスクマネジメントを統合して管理する部署に集約し、意思決定の迅速化と責任の明確化を図った。又、業務プロセスを管掌する業務プロセス管理部を新設すると共に、受渡・決済系の業務を統合して別会社化した。
組織の変更に伴い、社内の業務フロー、運用を再定義した。これまではシステム入力など1人の担当者がすべての手続きをすることも可能な業務もあったが、今後は機能別に承認プロセスを明確にし、チェック機能が働くように社内規定・運用を見直した。これにより誰がどこまでの権限があるのかを規定の形で明文化することができた。機能別組織導入当初はどこに相談すればいいのかわかりにくいと不評であったが運用を継続することで徐々に定着してきている。またERPが導入されている業務セグメントではERPの業務プロセスを活用して職務分離の徹底を図った。又、ERP以外を使用している部署においてもERPに準じた業務プロセスを導入、統制環境の整備を行った。
現在はまだ従来の個別最適から全社最適への過渡期と考えている。今後数年かけて全社最適の業務プロセスの確立を目指すことになるであろう。全社最適を実現するために、営業部門の理解と協力を得ながらプロセス改善に継続的に取り組んでいる。どこが何をやるのか、何ができるのかをビジュアルに示して理解を得られるよう工夫している。最近になって各プロセスに必要な標準文書フォーマットの多くがそろってきた。これにより業務プロセスが明確になるばかりでなく、仕事の属人化を防止し、社内処理の効率化が推進された。標準文書フォーマットの中には、書類を作成する際に使われる、エクセルのマクロも含まれている。重要な業務プロセスに係るマクロはオフィシャルなマクロを用意し、それ以外は利用しないように運用している。さらに、既に全社共通化されている業務についてはタスク処理マニュアルなどを作り、担当が誰であっても基本的に同じレベルでチェックが可能なように整備をしている。例えば、代金振込を第三国にするよう言われた場合のチェックリストなどを整備し、不正な取引に巻き込まれることがないようにしている。また、日常的にモニタリングを実施して滞留している在庫の処理を進めたり、契約即受け渡しの売上計上の妥当性のチェック、期ずれとなった会計データの理由分析などを通じて業務処理レベルの改善を行っている。こういうことが可能になったのも業務プロセスを整理したからだと言える。そのモニタリング結果や外部監査の結果を踏まえて業務プロセス改善を継続している。これまで全社共通プロセスが確立されていなかった、リース債務等のオフバランスポジション関連の業務についてもプロセスの見直しを進めている。
現在のところ順調に新業務が導入されているが、今後この取り組みが定着するかどうかは営業部門の協力が鍵である。そのためにも営業部門とのより一層の協力体制が重要と考え、マニュアルや規定を営業が理解しやすいようにしたり、研修を拡充して周知を図るなど様々な取り組みを継続する必要がある。また事務処理を担当する人に規定を理解してもらい、業務プロセスを継続的に見直せるようになってもらいたいため、ある程度の期間、業務を担当してほしいと考えている。そのためこれまで派遣社員に依頼していた業務を正社員或いは契約社員に切り替えられないか検討している。そして、連結決算のスピードアップ・グループ全体の統制環境の整備に対応するために、関係会社への展開も課題である。また、この取り組みには結果的に相当なコストがかかっている。今後コストと効果のバランスをどうとるのかが課題である。
今後は経理処理全般を別会社化できないかと考えている。別会社化することで柔軟な人事政策が可能となり、これまでより幅広い社外人材を活用できるようになる。また、別組織とすることでより一層の業務プロセスの見える化、効率化が可能になると期待している。しかし、シェアードサービス会社側に、自分たちは単純事務だけを担当しているのだという思いを持たれないよう、シェアードサービス会社側のモチベーションを維持するためにも一定の判断業務を担ってもらったり、親会社とのコミュニケーションの機会を十分に取る、ローテーションを行う、などによって動機付けるといった配慮も必要だと感じている。
まとめ
文書化が終わった今が実は本当のスタートだといえる。そして、これまで検討してきた方針を確実に推進するためには専任の組織、スタッフが必要である。さらに、継続的なプロセス改善が必要なので、トップが絶えず引っ張る必要がある。社内でもERP導入で解決しようという動きがあったが、ITは万能ではない。なによりも社員の意識改革の方が重要である。そして、全社視点でのリスク分析とマネジメントが重要である。
Q 各業務セグメントから、「今の業務は変えられない」という声はないのか
A 基本的には業務を変更するようお願いしているが、中には変えられないとい う意見をもらう業務もある。ただ、その業務が当社にとって本当に必要な、或 いは最適な方法による業務なのかどうか検証するようにしている。必要性の認 められない業務はこれを機会にやめるようにしている
Q この取り組みでコスト削減はできたのか
A 現状ではそこまでメリットは出ていない。これからだと考えている。取り組みの最初の時期は多くのタスクに対応するため、ある程度労力をかける必要はあると思われる。コスト削減というよりはこの取り組みを通して業務の課題に気付くことが重要である
Q SOX法対応ではかなり費用がかかっているのではないかと推察されるが
A 関係会社で負担しているものもあり、はっきりは判らないが従来の倍程度ではないかと思う。
Q 現在全体の内どの程度まで取り組みが進んでいると考えているのか
A 骨格はできているが現場の理解、定着を考えるとまだまだ半分程度で、完成まで今後数年かかると思われる。業務プロセス整備と内部統制の整備の重要性を社員全員が理解するようにすることが目標である
Q 「ERPを使うことで業務を標準化した」という話をよく聞くが、御社ではどうだったのか
A 当社ではERPの業務カバー率がそれほど高くないので、ERPを利用している、いないに関わらず最低限の統制レベルを設定し、推進した。その意味で、ERPがあってもなくても今回の取り組みの効果は出たと考えている
Q 取引先からは何か言われているか
A 特にはないが、今後は各社ともJ-SOXの導入を機に内部統制の向上が進むと思うので理不尽な要求がお互い通らなくなると推測される
(1)現時点の状況
*内部統制環境の整備の途上
*具体例
(2)今後の課題
*営業部との一層の協調体制の構築
*社内規程・マニュアル・通知の精緻化、事例化
*関係会社との一体運営
*会計制度変更への対応
*コストと効果とのバランス(リスクの適切な評価と対応策)
*現在の決済系業務のみならず経理処理全般の別会社化
*目的
*課題