-高齢者就業の際の、求職者への提案
-高齢者雇用の際の、求人企業への提案 他
定年について
日本の出生率は長年に亘って減少を継続したが、日本の人口は増え続けた。その原因は寿命が延びたことである。終戦のとき10歳であった、昭和10年生まれの日本人男子の出生時の平均余命は44,8歳で江戸、明治時代と大差ない。終戦直後の日本人男子の平均寿命は51歳だったといわれる。それが、今は80歳である。
日本の企業で最初に定年制を定めたのは明治30年代で55歳だった。平均寿命より10歳も上で、今なら90歳だから、その歳まで働いたら表彰ものであろう。寿命は延びたが、定年は放っておかれた。それが、いま、多くの社会問題を惹起している。年金、介護も無関係ではないが、定年後の再雇用こそ、その最大の被害者である。
日本の戦後経済の急成長を支えたものは、日本特有の終身雇用、年功序列賃金、企業内組合だった、といわれてきた。しかし、今は、それはむしろ日本が戦後置かれたほとんどゼロレベルからの急成長という特殊な社会環境の結果であって、本当に戦後が終わり、経済が成熟すると、自然に消滅し、むしろ戦前の状態に帰りつつあると考えられている。
その間にあって、定年制は置き去りにされ、寿命の延びに応じて延長されることはなく、むしろ、異常な終身雇用、年功序列賃金制度の調整のための、高年齢、高給社員の追い出しの手段として使われている趣がある。これはきわめて異常であり、日本経済の健全な発展、および日本国民の生活水準の維持と物心両面における豊かな暮らしのためには、可及的速やかに是正されるべきである。
ただ、定年をたとえば、戦前にならって、平均寿命より10歳上に設定するということは、定年の意味そのものを変えることである。定年は、まだ働ける、働く意欲を持っている人を強制的に辞めさせる手段であってはならない。そういう意味で、いま、日本で行われている定年制は本質的に廃止されるべきであろう。定年のない社会、すなわち、働きたい人、働く能力のある人はみな働ける状態の実現が、この高再研の基本にある。
高年齢者の働く希望について
すでに、多くの統計や調査により、高年齢者が継続して働くことを希望していることは明らかである。
ここで、高年齢者の定義を行いたいが、年金の本格的支給開始年齢は65歳である。企業に対する、定年延長の要求も65歳が基準になっている。一方、多くの企業、団体、政府などの職場では、50歳を過ぎると、多くの従業員に、出向、役職定年などさまざまな人事の措置を講じている。そこで、ここでは、一般的に50歳以上を高年齢とし、その高年齢者が継続して働く際の問題を考えたい。
高年齢者が就業において対面する問題の1つは定年である。別の章で論じた寿命と定年廃止は別にして、現実の定年に即して何が議論されているだろうか。定年後の豊かな生活についてのテーマは多い。マネープラン、趣味、健康、生き方、生きがいなど、そして一部では生涯現役での仕事など数多くある。しかし、基本的な問題、つまり、定年という区切りは必要か、自然か、最善か、人はある時点で働かなくてよいということを決めてよいのか、という問いには答えていない。
高再研では、定年という概念を廃止して、高年齢で、継続して働くことを基本テーマとしたい。高年齢者には、成長期のつまり50歳未満の人にくらべて、異なった肉体的条件がある。また、家族との関係、社会との交わりかたにも差異がある。なお、働くことの内容は原則として、雇用される知識労働者に限定したい。これは、純粋な肉体労働は対象としにくいこと、また自営業や、医師、弁護士などは、同様に年齢により条件が変わることはないので、対象とならないからである。
そのようなことで、知識労働者は50歳以降も雇用されて働く希望をもっており、そのときの制度、ルールなどが、再考の余地があると考えて、研究を進める。
高年齢者就業のプラスとマイナス
日本において、高年齢者が就業を継続することのプラス面としては、次のようなことが考えられる。
- 労働力不足の補完となる。よって日本の経済成長に寄与する
- 健康の維持に役立ち、医療費の節約になる。介護問題の改善にもなる
- 年金の節約につながり、かつ所得税の納入により国庫に寄与する
- 経済活動の活性化により、GNPおよび消費税増進に貢献する
- 家庭不和の減少により、離婚、精神病、犯罪など社会負担が減る
- 海外および外国企業の支援ができ、日本の国際的評価が高まる
マイナス面としては、次のようなことが考えられる。
- 若者の職場を奪う
- 低賃金化を加速する
- 経済合理性を無視した就業が発生する
- 健康を損なう場合がある
- 安全面での経費が増える可能性がある
- 老人虐待などの風潮を醸成する可能性がある
以上の視点から、プラス面を強調しすぎない、またマイナス面を回避するための努力が必要である。あくまでも被雇用者の条件、希望を重視すること、社会的影響への考慮を忘れないこと、が肝心である。
高齢者就業の際の、求職者への提案
- 知識、能力の明確な開示
提供できる知識、経験、業務遂行上の能力などを明文化し開示する。
- 将来に対する意欲の表明
雇用されるのは過去の自分ではなく、現在の、そして将来の自分である。過去に訣別し、これから何ができるか、何をやりたいか、を明確に表明する。
- 過去の成果、経歴を語らない
資料として提出するのはいいが、前記2のように、過去には本質的に価値がない、とリセットする。生きる知識や経験は現在の能力として評価してもらう。
- 新しい環境への順応
新しい職場は、全く異なった文化、価値観を持つと自覚する。相手を理解し、その価値を認め、順応した上で、自分の能力を発揮する。先方の過去、現在を非難してはいけない。一緒によい未来を創るために参加したと自覚する。
- 健康管理の重視
定期的健康診断を受けて、その結果に基づき健康管理をする。常に体力の維持につとめ、また、休養に配慮して無理をしない。
- 給与、待遇の条件
できるだけ低い給与で働けるようにする。給与を優先順位の先におかない。世の中の役に立つこと、健康、生きがいなどを優先する習慣をつける。人の嫌がることを率先してやるような気持ちをもつ。働いていることがすでに社会的価値を持っているので、それ以上の、仕事の貴賎はない。プライドを持って働ける。
- 身だしなみ、態度
老醜をさらしてはいけない。身だしなみはいつもきちんと。服装は質素でも清潔に。態度、物腰は丁重に。感情を露骨に出してはいけない。年寄りのわがままほど醜いものはない。
- つきあい
過去の会社や就業先に関連する仕事はしない。また、友人や親類縁者を利用したり、そのお世話になるような仕事はしない。また、自分で出資したり、協賛金を出したりするようなことは決してしない。
- 目標の設定
短期を旨とする。長期のコミットはしない。また、できないこと、他の要因で左右される売上、利益などの約束はしない。
- 現状と将来の認識
高齢者の場合、知力は増進できるが、体力とそれに伴う気力は必ず低下する。それを条件に働き方を考える。仕事の無理な取り組みはしてはいけない。給料、収入は、仕事の中身を変えない限り、減少していくことを認識する。高望みをしないで、できる範囲で長期にわたり働き続け、人に迷惑をかけない、世の中の役に立つ、自分の人生を充実させる、という考えを主体に考える。
高齢者雇用の際の、求人企業への提案
- 業務の内容の特定
できるだけ詳細な仕事内容、目標を明示した書類を提示する。その仕事が、直ちに行えることを条件とする。内部の事情やルールに慣れるためのオリエンテーションは必要であるが、研修などはしない。
- 試用期間の設定
通常の試用期間ではなく、その間に何をして、どのような結果を出すか、書類で明記する。その結果により採用の取り消しはできないが、次のステップのために必要である。
- 短期目標の設定
常に、短期の目標、すなわち四半期、半年、一年の単位で、なすべきことを双方合意しておく。ただし、売り上げノルマ、利益目標など、当人の努力以外の要素で決定される惧れのあるものを、目標としてはならない。
- 雇用期間の限定
原則として、一年ごとの雇用契約とし、給与などの条件は一年ごとに更改する。ただし、解約する客観的条件がなければ、更新し、また改善する必要があればそのようにする。定年はもうけない。
- 健康管理の実施
採用時の健康診断を条件とする。また、定期的な健康診断を行う。
- 過労条件の回避
労働条件に関しては、就業規則通りでないものも受け入れることとし、個別対応をおこなう。事前に双方同意を原則とする。
- 係累、過去の就業先の利用の禁止
業務の遂行上、家族、親類縁者、友人関係などの利用はしない。また、過去の就業先に対する営業活動、利用活動などはおこなわない。また、過去の経歴の宣伝上、営業上などの利用もおこなわない。
- 高齢者には、働きやすい環境を提供し、精神的、肉体的安全を推進する。
- 高齢者には、社会的評価を得やすい肩書き、タイトルを与え、敬意をもって接し、その自主性を尊重する。
- 他の従業員にくらべて、不利な差別をおこなってはならない。