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新ビジネスモデル研究会(第4回)
More Media 時代におけるコンテンツビジネス

新ビジネスモデル研究会(第4回)

テーマ: More Media 時代におけるコンテンツビジネス
講 師: 坂野 哲平 (スキルアップジャパン株式会社 代表取締役社長)
日 時: 2008年2月26日(火) 18:15〜20:15
場 所: アーク情報システム(市ヶ谷)AKビル2階「大会議室」

「新・ビジネスモデル」研究会オープンセミナー第4回目は、スキルアップジャパン代表取締役社長の坂野哲平氏による講演が行われた。数年前より言われてきた通信と放送の融合。テレビ局も積極的に取り組んできたものの、日本では未だ成功モデルは見つかっていない。コンテンツ配信にかかわる包括的なソリューションを開発・提供しているスキルアップジャパンは、通信と放送の融合の最初の勝ちパターンになれる可能性を秘めている。同社の斬新なビジネスモデルを、代表取締役社長の坂野哲平氏が紹介した。

坂野哲平氏

 坂野氏がスキルアップジャパンを設立したのは、早稲田大学理工学部と卒業と同時期の2001年4月。その理由について坂野氏は、「大学時代に学んでいたセキュリティ周りの知識と、ソフトウェア開発経験を生かして、安心して使えるeラーニングをはじめとするBtoCの仕組みを作り、提供していこうと考えたから」という。

顧客に合わせたコンテンツ配信にかかわるアライアンスビジネススキームを提供

 1設立当初よりスキルアップジャパンは、動画/音楽配信のデジタルコンテンツ著作権保護システム「DR-PROVIDER」、安全なソフトウェアのダウンロード販売を実現する「Soft Pier」、有料デジタル写真集ビューア「JoyPOP」、会員制ライブ映像配信の運営・構築が容易にできる「Chat Box」、物販/デジタルコンテンツECサイト構築に必要な機能を標準装備した「DigPot」など、デジタルコンテンツ販売や配信に必要となる様々なソフトウェアを開発していった。しかし「3〜4年目ぐらいまでは、ほとんど売れず苦労した」という。

 そこで同社は上記のソフトウェアを販売するだけではなく、お客様のビジネスモデルに合わせソリューションを、業界の枠を超えたアライアンスビジネススキームにて提供するようなビジネスへと転換。 現在では、スカイパーフェクTVやフジテレビなどのテレビ局、扶桑社や幻冬舎などの出版社、大手芸能事務所、日本郵政公社、丸紅、富士フイルムなどをはじめとする、大手顧客と取引が成立するまでに成長した。

 実際、ビジネスも確実に伸びており、7期目となった2008年3月末の売上/利益共に好調に推移し、「適切な時期での上場したい」と坂野氏。

 では同社が提供しているコンテンツ配信ビジネスプロセスアウトソースとはどういうものか。坂野氏は、「スカイパーフェクTV」を展開している(株)スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(スカパー)を例に紹介。「スカイパーフェクTV」とは通信衛星を使ったデジタル放送サービス。放送事業者約100社が参画、約290にも及ぶチャンネル数を持つ。そのスカパーもインターネット化への流れを重視し、「スカパー動画」というインターネット事業を立ち上げることとなった。スキルアップジャパンは、同インターネット事業のバックヤードを担当している。続けて「現在スカパーは、「スカパー動画」だけではなく、You Tubeなどの動画投稿サイトやWindows Media Center上に展開するサイト、携帯電話などインターネット上のさまざまなメディアに、スカパーコンテンツを展開しており、スキルアップジャパンはこの部分のバックヤードも担っている」という。

 またインターネット通販(EC)の事例も紹介。それが、丸紅と事業提携した「セレクトスクエア」である。実際の販売にかかわる業務、例えばシステム提供だけではなく、コールセンター業務から在庫管理、決済処理、販売代行、配送管理までを担当している」と坂野氏は語る。

動画コンテンツは無料配信の時代に

 スキルアップジャパンのビジネスが通信と放送の融合の最初の勝ちパターンになると期待できるのか。第一に「動画配信コンテンツは無料配信の時代になる」(坂野氏)こと。この背景にあるのが、個人からの画像投稿で人気を集めている世界最大の動画投稿インターネットサイト「YouTube」と、世界最大のインターネットテレビサービス「Joost」の存在である。JoostはP2P電話「Skype」の創業者らが開発したサービスで、2万以上の番組、300以上のチャンネルが無料で権利処理がされているものを視聴できるというもの。「つまりもはやペイパービュー でお金をとるビジネスは成立は極めて難しい。つまり広告モデルでしか成り立たない」と指摘する。Joostの動画コンテンツを坂野氏は実際に紹介。Joostで配信された動画の質は、非常に滑らか、スムーズで、参加者からは感嘆の声も聞かれたほどである。

 第二に日本の広告費の中で、インターネット広告のみが伸びていること。テレビや新聞、雑誌、ラジオなど各メディアは縮小しているため、他のメディアと連携し、補う必要がある。その補完メディアがインターネットだというのだ。の傾向は今後も続くと予測できる、と坂野氏は語る。

 しかしながら例えばテレビ局は2011年の地上デジタルへの完全以降を目指して多額の設備投資を行い、補完メディアとなるインターネットに「十分な資金がまわせていない」状態なのだ。だからこそ、スキルアップジャパンの出番となる。「当社は各種メディアへの技術アダプテーションを提供できる。つまり当社であれば一つの放送テープを持ち込んでもらえれば、いろんなメディアに適用していくことができる」と坂野氏。

 スキルアップジャパンにアウトソースするメリットはそれだけではない。複数のメディアに展開する際にかかるコスト増をスキルアップジャパンが負担する点もメリットの1つである。「配信事業者はリスクをミニマイズした上でインターネットコンテンツビジネスに取り組める」(坂野氏)のだ。「当社がコスト増というリスクを背負うことになるが、それは各種マネタイズ手法でカバーする」と坂野氏は強調する。

インフラコストとメディアアダプトコストの低減に課題

 坂野氏が上げる「各種マネタイズ手法とは、有料コンテンツのオンデマンド配信、スポンサー向けアンケートサービス、電子書籍の販売、広告モデル、EC連携モデルなどである。「テレビ以外のメディアで上がってきた収益だけではインフラの増強費を賄うのは苦しい」と坂野氏。そこで同社は、インフラとメディアアダプトのコスト低減に関する研究に取り組んでいる。「コンテンツ配信コストの低減というテーマで、現在、導入を検討しているのがP2P配信技術などのネットワーク負荷軽減技術だ」と坂野氏。P2Pとはインターネットを介して不特定多数のコンピュータ同士がつながり、お互いに情報をやり取りすることが可能な仕組み。「P2P配信技術を使えば、例えば隣の人がパソコンで自分が見たいと思っていたコンテンツを見ていたら、そのパソコンからコンテンツを入手することができるようになる。配信ユーザー数と比例して肥大化する配信コストを減衰させることができる」と坂野氏。2008年4且から本格的に研究開発を開始し、チリ大学などの海外の大学機関とも提携している。 

 もう一つの課題がモバイル向け映像の最適化である。現在、地上波、デジタルテレビ向け配信映像はモバイル向けに映像エンコードを行うと、文字が潰れたり、重要な情報が消失したりしてしまう。これによりワンセグ配信時などタイムラグがますます広がってしまう。そこで現在導入を検討しているのが、画像認識による自動フォーカス技術、文字情報を自動認識して切り出しテロップ化する技術の2つである。 これらの技術を開発してコストをいかに低減していけるかは、コンテンツ配信に関するビジネスプロセスのアウトソース事業という、新しいビジネスモデルを軌道に乗せ、さらなる発展をする大きな鍵となることは間違いない。

今後、テレビはどうなっていくのかに質問が集中

 まず質問があったのは、このビジネスがなぜうまくいくかということ。それに対して坂野氏は「放送に比べ、インターネットのインフラにおけるコストパフォーマンスは非常に悪い。当社は、コンテンツ配信に必要なハードウェアからソフトウェア、運営体制、企画制作体制を一式揃え、提供している。これがシステムだけを提供する他社とは根本的に異なり、ワンストップで提供ができ、コストの圧縮と売上収益の最大化ができている」と応えた。

 またスキルアップジャパンがコンテンツを保有し、配信することに関して、放送局は不安を抱いていないのかという質問に対して、坂野氏は「放送局はコンテンツホルダーなので、これからも立場は揺るぎようがない」と回答。さらに続けて「むしろ彼らはインターネット事業には苦戦を強いられているので、積極的にコンテンツのマネタイズに取り組んでいる当社のような存在を歓迎されている。放送局が脅威を感じているのは、JoostやYou Tube、Googleだ」という。坂野氏は「これまで日本のインターネット広告モデルの4割は、検索エンジンの連動モデル。広告料の85%を外資系検索エンジンベンダーに持っていかれていた」と語る。「当社が拡大すれば、それを防げる。日本のコンテンツを海外に出していくなど、日本のコンテンツ市場のためにも頑張りたい」(坂野氏)

 「近い未来に TVとパソコンは融合し、インターネット経由でテレビ番組のような高品質のコンテンツがどんどん流れることが一般化するはず」。坂野氏は最後にそう語り、講演を終えた。