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新ビジネスモデル研究会(第6回)
「ソリューションを創造する仕組みと知恵
〜コクヨオフィスシステム・次世代ワークプレイス事業のケース」

新ビジネスモデル研究会(第6回)

テーマ: 「ソリューションを創造する仕組みと知恵
〜コクヨオフィスシステム・次世代ワークプレイス事業のケース」
講 師: 林 賢 (コクヨオフィスシステム ソリューション開発室 室長)
日 時: 2008年4月22日(火) 18:15〜20:15
場 所: アーク情報システム(市ヶ谷)AKビル2階「大会議室」

「新・ビジネスモデル」研究会第6回は、コクヨオフィスシステム株式会社、ソリューション開発室、室長の林賢氏による講演が行われた。コクヨオフィスシステムは、オフィスのコンサルティングからスペースデザイン、構築・家具販売などのオフィスソリューションを提供する会社。同社では9年前からオフィスでも自宅でもない第三の仕事場(サードプレイス)であるDESK@(デスカット)サービスを提供している。フリーアドレス制の導入が進み、セントラルオフィスのあり方が変わりつつある今、次世代ワークプレイス・ソリューションが注目を集めている。講演の要旨は以下の通り。

 コクヨオフィスシステムは2000年にコクヨから分社、独立したオフィスソリューションを提供する会社である。オフィスにかかわるコンサルテーションか らプランニング、プロジェクトマネジメント、工事・調達・運用管理サービスまでを含めて顧客に提供できる機能を持つ。年間約8000件のリアルオフィスを 提案(約4000件を受注・構築)。またコクヨグループ各社のファシリティマネジメントの戦略企画も担当している。2007年3月に当該案件で第1回 ファシリティマネジメント大賞の奨励賞を受賞し、同年の大賞(鵜沢賞)も当社のワークスタイル・コンサル案件で受賞している。2007年10月には第8回 のテレワーク推進賞の優秀賞も受賞して いる。クリエイティブな働き方を目指してテレワークに取り組む当社の姿勢が評価されたようだ。私は2年前より現職につき、ワークスタイルやワークプレイス のコンセプトを創造する次世代ワークスタイル研究開発グループと、未来価値ビジョンから未来事業創造を行う事業開発グループを推進している。

図1

 中でも今、当社が注力しているのがデスカットやビジネスサポートセンター(BSC)である。デスカットとは、セントラルオフィス(ファーストオフィス) でも自宅(セカンドオフィス)でもない、第三の働く場所、サードプレイスのこと。現在、直営4店、提携店5店の合計9店舗で運営している。一方ビジネスサ ポートセンターは、大規模オフィスビル向けのサービスとして、ビルのオーナーのニーズが高まっている。というのは「経済特区」の大規模オフィスビルには、 関連サポート施設を設けると30階のビルで31階で申請できるというような「緩和措置」があるからである。今回は当社の先端オフィス作りへの取り組みと、 サードプレイスとしてのデスカットの意義、その魅力に焦点を絞り、解説していく。TV会議システムのレンタルサービスの提供も開始、さらなる使い勝手の向上を図ってい る。その結果、回遊型の固定顧客も増え、新規事業として軌道に乗りはじめた。

変革するワークスタイルでサードプレイスに注目が集まる

 政府が進める2025年までを視野に入れた成長に貢献するイノベーションの創造のための長期的戦略指「イノベーション25」や経済産業省が推進している クリエイティブ・オフィスなどにより、これからのオフィスには知識創造、感性価値創造ができるような「場」づくりが求められている。またダイバーシティやワーク・ライ フ・バランス、セキュリティやユビキタスネットワークなどという基本機能も網羅する必要がある。これらのPEST分析より当社が注目しているのが、第三の仕事場、いわゆるサードプレイスだ。サードプレイスという定義を始めてもちこんだのが、全世界にコーヒーチェーン店を展開するスターバックスであると聞いている。その後、米国の都市社会学者であるレイ・オルデンバーグ氏が、「The Great Good Place」という著書の中で、サードプレイスを以下のように定義づけている。

  1. 心がニュートラルになる
  2. 出会いの場の提供
  3. いつでもいける
  4. 4. 知的フォーラムや個人のオフィスとしても機能する
  5. 包容力があり、誰にでも開かれている。

 日本の次世代ワークプレイスもこのような方向に向かいそうだ。つまり、私たちはサードプレイスを、キーマン、ナレッジワーカー、クリエイティブクラスの人たち と出会える場としてはもちろん、知識やアイデアを創造するプロセスそのものを「イノベーションセンター/フィチャーオフィス」コンセプトの中で効率的に取 り組むための装置としてサード プレイスに期待し、自らこうした「場」を研究開発していこうとしている。

図2

図3

サードプレイス「デスカット」の魅力

 このサードプレイスの位置づけで当社が提案するのが、デスカットである。デスカットは個人席や個室などの@レンタル・スペース・サービス、会議室や会議 システムなどを貸し出すAレンタル・会議・サービス、そしてプリントやコピー、ファックス、スキャナーなどの一般オフィス設備に加え、電話応対や郵便物の 受け取りなど連絡応対業務を代行するオフィスプラスというBビジネス・サポート・サービスの3つで構成されている。その魅力の第一は、15分という単位で 自社オフィス同様の環境が手に入ること。第二に施錠可能で遮音性の高い個人席、VLANの導入などセキュリティへのきめ細かな配慮がなされていること。そ して第三に東京や新宿、品川、大阪梅田など、駅からアクセスの良い場所にあることだ。さらに最近では、ノートタイプのシンクライアントやノートPC4〜5 台を月3000円で、レンタルロッカーで預かるサービスも開始した。つまりこれまでの自社オフィス同様、手ぶらで(モバイルPCを持ち歩くことなく)デス カットに寄って仕事することも可能になるのである。さらに6月からはお客様のテレビ会議室とデスカットのテレビ会議室や(FOMAなどで)マチナカからの 会議参加も可能なWeb会議システムのレンタルサービスの提供も開始、さらなる使い勝手の向上を図っている。その結果、回遊型の固定顧客も増え、新規事業 として軌道に乗りはじめた。 分散ワークを支援する「デスカット」は下記スライドのようにエコでクリエイティヴなワークスタイルを実現するプラットフォームでもある。

図4

図5

「エコ/クリエイティブなワークスタイル」を実現するためのワークプレイス作り

 デスカットをはじめとするサードプレイスとファーストプレイス、セカンドプレイスをうまく活用して野中郁次郎先生が言われる知識創造企業が必要とする、知識を生み出すプロセスをモデル化した「SECIモデル」の循環型ワークプレイスの一部としたいと考えている。

 SECIモデルは言い換えると、刺激を受けてアイデアを出し、そのアイデアを練り上げて、発信するプロセスである。それをサポートするような仕掛けをオ フィスに取り入れることができないか。人は1カ所に留まると刺激を受けるのは難しい。そこで当社ではセンターオフィスとホームオフィス、顧客先やデスカッ トなどのサードプレイスを活用する「拡がるオフィス」作りをし、その効果を測っていく。当社の場合、首都圏のオフィスは霞が関と横浜の2箇所。しかしコクヨ グループの他の事業会社には両国や渋谷、品川などにオフィスがある。それらと、デスカットのオフィスをすべて自社オフィスとし、それらの中で高い(昇華されたレベル)での「共創」をしていきたいという意味あいからセントラルオフィスの霞が関ライブオフィスを「響創(レゾナンス)」というコンセプトとした。

 響創オフィスづくりへの第一歩になったのが、2003年に現在の霞が関ビル18階への移転を伴った大規模リニューアル。各従業員を行動特性によりラン ナー(営業)、ウォーカー(設計、プランナー)、シッター(内勤業務)、マネジャー(複合型)と4つに分け、それぞれが効率的に働けるよう大括りでデスク ワーク ステーションのスペックを決めました。IPセントレックス方式の電話やV0IPインフラでシンプルワイヤリング。IPフォン、無線LAN搭載ノートPC、 IP固定電話、IPモバイルフォンなど4つの種類のデバイス約1000台を完全ワイヤレス・インフラで導入した。現在はあたりまえのオフィス環境ですが、 当時は最先端オフィス環境としてマイクロソフトやインテルの米国本社からも注目を集め調査団がやってきた。2005年には島型対抗式オフィスで換算すると 50名強のスペースを、リビングスタイルのオープン・コラボレーション・エリアに改装。このエリアは予約なしで自由にリラックスしてコラボレーションでき る空間。柱にWebカメラを取り付け、レビューミーティングなどを行った場合、名古屋、大阪などの支社側にその様子を配信できる仕組みとなっている。 2007年にはよりコミュニケーション重視型にするため、大規模リニューアルを実施。セントラルオフィスは2.5人に1席とし、他の事業会社のオフィス、 顧客先やデスカットのようなサードプレイスにオフィスを分散したのである。セントラルオフィスのデザインは、基本的に97年当時のものを踏襲。同オフィス はコラボレーション、コミュニケーション中心のオフィスとして機能させるため、集中して考えるようなブースは設けていない。集中して考える場所としては、 サードプレイスや部分在宅勤務を位置づけている。つまり適業適所のオフィスの実現しようというものだ。

 そういう最先端のオフィス環境になっているため、私たちは約2時間ごとにオフィスを移動し各所でコミュニケーションを自然体で行う。午前を1ブロッ ク、午後を2ブロックというように一日を3ブロック以上の仕事単位に分け、一単位ごとに働く場所とテーマを決めてスケジューラーに入力することを習慣化し ている。

 セキュリティ面への配慮としては、セキュアカードを導入。これにより、入退室からネットワークへの接続、PCの起動、各所のセキュアプリンタへの入出力が可能になっている。

 今後、当社ではよりエコでクリエイティヴなワークスタイルからイノベーションワークプレイスを構築していく。

 コクヨオフィスシステムではオフィス投資決定前のオフィスコンサルティングをはじめ、経営戦略を受けてプログラミングするサービスも強化している。このプロセスを重視することで、ライフサイクルの長いオフィスが実現するだけでなく、様々な運用の課題を見つけることができるからである。

図6

 クリエイティブクラスが集まるような「場」をどうやって提供していくか。今後も私たちはその実現を目指した未来価値創出事業を展開していく。

図7

デスカットに対するさまざまな質問、課題が飛び出す

 上記のような林氏の講演に対し、様々な質問が飛び出した。主に質問が集中したのはデスカットのサービスについてである。最初の質問「デスカットに回遊型 顧客がついたという話がありましたが、それはどんな顧客を指しているのか」というもの。それに対し林氏は「回遊型顧客とは複数のサードプレイスに寄り、仕 事をする分散ワーク・メリット(時間の有効利用、FMコストの変動費化等々)享受型の顧客のことを指す」と解説。「どのくらいの時間を利用するのか」とい う問に対し、「法人ユーザーだと1〜2時間。個人ユーザーの場合は、15分や30分利用の場合もある」と回答。利用内容は各種様々だが「集中作業や思考作業も多い」(林氏)ようである。 デスカットの利用を促進するために、企業として解決しなければならない問題もあるという指摘も挙がった。 その一つが、社員の管理をどうするかということである。それに対して林氏は、携帯電話のGPS機能やRFIDタグ、センサーなどのソリューションを取り入 れ、オンとオフを発信・受信できるような仕組みサービスも研究開発していると答えた。

 また管理するための仕組みとして、ITで縛ることだけではなく、人事・評価制度を整備することも大事なのではという問いかけもあった。それを受け林氏は 「場を提供するだけではなく、ワークスタイルを積極的に変えるような“自律型“行動規範の整備、評価制度の能力活用重視型へのシフト・チェンジをしないとうまくいかない。そのあたりはビジネスパートナーとも協調し、対応していきたい」と語り、講演を締めた。