2007年度BPIA総会 / 講演会

 日時: 2007年11月9日(金)
於:霞ヶ関ビル 1F プラザホール
講演風景
<Contents>
■講演 「「ワーク・ライフ・バランス」から「ライフ・ワーク・バランス」へ
     〜生きがい、働きがい、やりがいの面白ワルツ♪を踊ろう!」
渕野 康一 氏

渕野 康一 氏
株式会社東レ経営研究所
取締役 人材開発部門長
関係資料(PDF 685KB) →

私は40歳からジャズピアノを始めました。ジャズピアノは複数ある私の趣味の一つ。今日はみなさんとのいい出会いを記念して、私の最も好きなカナダの作曲家でありピアニストでもあるアンドレ・ギャニオンの「めぐり逢い」を流しながら、講演を行いたいと思います。私が講演で音楽を流すのには、理由があります。音楽は日ごろの仕事によるストレスをリラックスさせる効果があります。埼玉医科大学教授和合治久氏が書かれた書籍『モーツァルトを聴けば病気にならない』によると、生活習慣病の低減にも役立つ効果があると書かれています。音楽は人生を面白くする手段でもあり、「音楽上手」は今日の本題の「面白上手」のひとつです。

■「ワーク・ライフ・バランス」で満足してはいけない

現在の日本は成熟した「知恵社会」を迎えており、多忙さを極めています。そんな多忙さに埋没せずに主体的に生きるためにはどうすればよいのでしょうか。私が提唱したいのが、「ライフ・ワーク・バランス」の実践です。
従来までの私たちは会社や仕事一辺倒の「ワーク・ワーク・ライフ」を送っていました。しかしそれではいけないと最近では、生活と仕事のバランスをとろうという「ワーク・ライフ・バランス」という考え方が主流になってきました。しかしこれで満足するのではなくもう一歩先を見据えて、生きがい、働きがい、やりがいが得られる「ライフ・ワーク・バランス」社会へと移行することが重要だと考えています。
通常、私たちが働き方や生き方を考える際、まず会社があり、そこで与えられた仕事をし、その中で生活とのバランスをとるということをしがちです。しかし本来、生きがいややりがい、働きがいのある人生を送るには、まずどんな人生(ライフ)を送りたいかということを考えることが先決です。それが決まって初めて、どんな仕事(ワーク)に就くか、そしてその仕事ができる会社はどこか、を決めていくのです。つまり、ワーク(仕事)が先ではなく、ライフ(人生)が先でありたいのです。「生きがい、やりがい、働きがい」の3つが揃ってはじめて、「面白人生のワルツ♪」が踊れるのです。

■社員一人ひとりの働きがいが企業の活力の源泉になる

なぜ今、「働きがい」に注目する必要があるのでしょう。企業の活力の源泉の一つは、そこで働く社員の活力です。そして活力を生み出す源泉は「働きがい」なのです。「働きがい」こそ、最高の内発的動機付けであり、組織求心力になるからです。
では「働きがいのある会社」とはどんな会社なのでしょう。私は「働きがいのある会社」の定義を次のように定めています。社員が①働いている会社や経営者・管理者の人たちを“信頼”し、②自分の仕事に“プライド(誇り)”を持ち、③一緒に働く仲間との“連帯感”や④“社会に役立っている実感(貢献)”があり、⑤“夢や希望”を持って将来が見渡せる、場所。これは「働きがいのある組織」を専門に調査研究している団体「Great Place to Work Institute(GPTW)」が提唱しているモデルを参考にしたものです。昨年、日本において初めて世界共通の「働きがいのある会社」調査が行なわれました。しかしその調査に参加したのはたった60数社しかありませんでした。
一方、若手社員の「働きがい」の現状はどうなっているのでしょう。2006年12月に、GPTW協力の下、東レ経営研究所と企業活力研究所が20代〜30代の正社員1000人にインターネット調査を行ったところ、「働きがいを感じている」と答えた人は27%でした。また「今の会社での仕事に関し、将来の夢や希望を持てるか」という質問に対しては、「持っている」と答えた人は29%、「持っていない」と答えた人は44%という結果となりました。さらに「今の会社で何年ぐらい働くつもりですか」という質問に対しては、10年以上働くと答えた人は35%、一方、3年以内に辞めると答えた人は30%でした。今の会社での仕事に将来の夢や希望を抱けずにいる半数弱の人は、会社への帰属意識が薄く、転職予備軍といえるのかもしれません。
この調査では、働きがいに影響を与える因子についても明らかになりました。特に影響を与えていたのが、①責任ある仕事、②気軽に話せる上司、そして③働きに見合う給与、という因子です。①「責任ある仕事」とは、単に責任が重いのではなく、意義や面白さ、やりがいが感じられる仕事のことです。②「気軽に話せる上司」には、えこひいきをしない、公正な上司に対する信頼や尊敬、また本人に対しても上司が信頼・信用していることも含まれています。また③「働きに見合う給与」も、単に高い報酬を求めるのではなく、働きに見合った公正な評価や処遇を求めているのです。これからは「働きやすい会社」ではなく、社員一人ひとりのやる気度、満足度とも高い「働きがいのある会社」へ発展していくことが望まれているのです。
このように重要な「働きがい」を阻害している要因もあります。第一に90年のバブル経済崩壊以後の要員合理化やコスト経営などによって、「働きがい」を感じる余裕やゆとりがなくなってしまったこと。第二が電子メールや携帯電話などITツールの急速な普及により、直接対話が急減したこと。第三が個人業績と賃金を重視する成果主義により、行き過ぎた格差や連帯感が乱れてしまったこと。第四は日本人が初めて経験する豊かな成熟社会、「知恵社会」に適応する新しい生き方および働き方が確立されていないこと、第五に将来に向けての希望や夢の喪失と漠然とした不安が高まっていることです。

■「面白主義」こそが「働きがい、いきがい、やりがい」が得られる方法論

生きがい、働きがい、やりがいが得られる「ライフ・ワーク・バランス」を実践する方法論として私がオススメするのが、「面白主義」です。
冒頭でも述べましたが、現在は「知恵社会」、知恵が競争力をもつ社会です。「知恵」を出すためには、人は「本気」になる必要があります。「本気」になるためには、それを面白がることです。面白いと感じれば感じるほど、「知恵」の生産性は高まります。また先の調査でも分かるとおり、現代の若者は仕事の面白さ、やりがいを求めています。企業の現実は厳しい今だからこそ、面白さが必要なんです。
私がいう「面白い」とは、わくわくドキドキ、知的興奮する、エキサイティングな様子を指します。面白さは「意義(やりがい、使命)」「没入(夢中、忘我)」「創造(夢、挑戦)」「非日常性(変化、意外性)」「連帯(平等、仲間、共有)」「感受性(はっとする)」「主体性(自らやる)」の7つの「面白要素」で構成されています。「面白主義」の実践とはこれらの「面白要素」を活用して「面白サイクル」をぐるぐる回していくことでもあるのです。
「面白サイクル」ではまず、自発的に仕事に取り組むことが前提です。自ら目的をもって仕事に取り組むと仕事は面白いものです。その面白さが増してくると気分も乗ってきます。するとやる気が沸き、知恵やアイデアも出てきます。知恵やアイデアが出ると上司に評価・承認され、ほめられます。そうなるとますます面白くなり、「やるぞ感」がさらに高まります。このサイクルが回ることで成長するのです。「面白サイクル」を回すには、①暗い「労働」観ではなく明るい「朗働」観を持つこと、②面白がる、感動する、などの感受性の向上、③仕事への主体性を確保する、という3原則があります。
一方、やらされ感のある仕事は面白くなく、いやいやがまんして仕事をするため、仕事への取り組み姿勢もいい加減になります。そんな態度では知恵やアイデアも出ないため、評価・承認はされず、けなされたり怒られたりするでしょう。そうするとますますつまらなくなり、自信も喪失してしまいます。このような「がまんサイクル」が続くと人の成長は停滞をしてしまい、10年も経つころには、「面白サイクル」を回せた人材とでは、大きな差がついてしまうのです。

■「面白リーダー」を目指そう

しかし「がまんサイクル」に入った人でも、「面白主義」を実践する「面白リーダー」に出会えれば、「面白サイクル」へと転換する可能性があります。「面白リーダー」は「働きがい」を高めるリーダーとも言い換えることができます。
「面白リーダー」とは、「①明快な夢やビジョン(使命感)を持っている」「②明るく前向き」「③厳しくて温かい」「④謙虚で感謝、感動しやすい」「⑤遊び心(ユーモア)や趣味を持っている」「⑥信頼できる、尊敬できる」という6つの行動特性を持つ人です。先ほどお話した「働きがい」を高める三大要因である①意義ある仕事を任せてくれ、②公正な評価をしてくれる、③気軽に話せる上司 と言い換えることができるでしょう。
そして私はぜひ、みなさんにも「面白リーダー」になることをオススメしたいのです。 「面白リーダー」とは、面白さとまじめさがうまくバランスを採れており、また厳しく温かく、部下に接することができるリーダーです。厳しく温かい上司は、高い志や目標と、本質、事実を見抜く目、かつ信頼して見守ること、いざというときに支えることができるのです。
次に、コミュニケーションの本質は「心の交流・対話」です。心が通じ合う対話・交流を大切にして信頼関係が築くことです。そのためには「感謝上手、聴き上手、ほめ・叱り上手」になることです。「感謝上手」は動機付け力につながります。できて当たり前ではなく、毎日1回は心をこめた「ありがとう」の一言を付けたり、謙虚に学ぶ言動を発したり、多くの人の協力や支えに「おかげさま」の一言をつけたりすることを実践するのです。「聴き上手」とは対話・傾聴力です。それを可能にするためにも傾聴、カウンセリング、交流分析、コーチングを定期的に学ぶことです。「ほめ・叱り上手」も動機付け力につながります。「ストローク」(人間の存在価値を高める言動)と「ディスカウント」(人間の存在価値を認めない言動)を自覚し、「ストローク」による会話ができるよう心の通じ合う対話・交流を心がけましょう。そうすれば風通しの良い職場風土、企業文化が創造できるはずです。
人生も仕事も豊かになる「面白主義」。今すぐ実践して「面白リーダー」となり、みなさんで日本の未来を明るいものにしていきましょう。


■シンポジウム  「ここまできた業務プロセス可視化の考え方と技術」
シンポジウム風景
<パネリスト>
天野 和昌  ソニックソフトウェア株式会社 事業開発部 部長
杉  達也  日本オラクル株式会社 システム製品統括本部営業推進本部Fusion Middleware推進部 担当シニアマネジャー
市橋 暢哉  マイクロソフト株式会社 デベロッパービジネス本部 業務執行役員 本部長
高橋  徹  サン・マイクロシステムズ株式会社 ソフトウェア・ビジネス統括本部 プリンシパル・ソリューション・アーキテクト
<モデレータ>
田岡 賢輔  富士ソフト株式会社 営業本部 ビジネス・コンプライアンス室長
関係資料(SymposiumPDF.zip 2.8MB) →
田岡氏
田岡 コーディネータ/富士ソフト このパネルでは、BPM(Business Process Management)やBAM(Business Activity Monitoring)を使って、業務をどう可視化するか、企業としてのパフォーマンスを上げていくか。そのために、どうやったらうまくいくかという議論をしたいと思います。
 技術的な観点では、最近はSOA(Service Oriented Architecture)が流行っていて、サービスの連携やプロセスのモデリングと実行、つまりアプリケーションが連携した形で動くような仕掛けが出てきています。一方で企業の不祥事を防ぐための内部統制の動きがあり、これは業務プロセスの改善につながる。そこにBPMやBAMが使われる可能性があります。しかし現実には、SOAや内部統制の文脈でBPMが普及しているかというと、そうではないように思います。
そこで最初に、皆さんは現状を今どうとらえているのか、BPMやBAMの普及は進んでいるのかというところからご意見を伺います。オラクルの杉さん、いかがですか。
杉氏
杉 日本オラクル BPMはそれほど新しいものではなく、考え方自体は昔からありました。では現状はどうかというと、全社規模のBPMはまだ難しいという印象です。業務部門の人たちの多大な協力が必要ですし、実際に動かすとなると業務フローの整理が前提になるので、進めるに当たってはかなりのガバナンスを利かせた取り組みが必要なんですね。弊社も含めて、BPMやBAMの製品自体は非常に充実してきましたが、ユーザー側の体制がそこまで整ってきていない。内部統制(日本版SOX法)は、そういう意味ではいいきっかけになると思いますし、いいきっかけにしたいと思っています。
田岡 コーディネータ/富士ソフト 利用サイドがまだ準備できていないということですね。マイクロソフトの市橋さんはどうでしょうか。
市橋氏
市橋 マイクロソフト ビジネス・プロセスには全部、人が絡んできます。ここに難しさがあると考えています。我々はそもそもプロセスが静的な、つまり定義可能な存在としてあり得るのかという疑問を持っていて、製造業の工程とは違って、データをハンドリングし、業務をこなす「人」という存在にもっとフォーカスしなければならいのではないか、という考え方です。弊社の「People Ready Business」という主張もこういったことを含んでいるんです。
田岡 コーディネータ/富士ソフト 面白いご指摘ですが、プロセスをきちんと整備しないと、例えばSOX法の対応で非常に難しい問題が出てくるのではないですか。
市橋 マイクロソフト SOX法は、ほとんどがドキュメントの整備です。ドキュメントを整備することで、後から見たときに行われたことを確実にエビデンスとして残すということがSOX法の基本です。プロセスを無視するということではなく、どう捕らえるのか、ということをもっと考えるべきだと、いうことです。
田岡 コーディネータ/富士ソフト 次にサンの高橋さん、今のことも踏まえてご意見をいただければ。
高橋氏
高橋 サン・マイクロシステムズ 反対のことを言わせていただくと、昔、私の客先だったある銀行では、壁中に細かい業務ロジックが書いてあって、すべてが分かるようになっていました。もう一つ、昔からワークフローという概念があります。ですからプロセスはありました。
BPMの現状ですが、サンはCAPS(Composite Application Platform Suite)という製品を出しており、米国では数百社に売れています。日本ではまだテスト段階で、本格的に活用している企業は残念ながらありません。CAPSにはEAI機能があるので、こちらを使いつつBPMの活用を模索しているという感じです。
田岡 コーディネータ/富士ソフト 黎明期というようなイメージですね。ソニックの天野さん、お願いします。
天野氏
天野 ソニックソフトウェア ESBを中心にSOAのお話をする中で、BPMの話題は意外と出てこないのが日々の実感ですね。「BPMはまだどういう効果が出るのか分からないのでやらない、とにかく今はまずコストを下げたい」といった感じです。BAMに関しても経営指標をモニターするツールとしてという発想はなく、リスク管理のような、ある意味、特化した形で利用が始まっている程度です。
田岡 コーディネータ/富士ソフト BPMは投資効果が見えないと?
天野 ソニックソフトウェア そうですね。IT投資には必ずROI(費用対効果)を求められますが、我々もそれに対する明確な回答ができないというジレンマがあります。そこは今後、チャレンジすべき分野だと思っています。
田岡 コーディネータ/富士ソフト ありがとうございます。私自身の経験をお話しすると、BAMやBPMのコンセプトは評価していただける。しかし具体的に導入となると、どこに使えばいいのか、何から手を付けるのかが分からないという話になります。やはりユーザー企業側のマインドがまだできていないという気がしています。
そこをベンダーとして、どう打破するかですね。各社は当然、ユーザー企業の声を受け止めて、なにがしかの製品やソリューションを出しています。それはどういうものか、ここで皆さんの製品やコンセプトをご紹介いただきたいと思います。
杉 日本オラクル 弊社の製品のBPEL Process Managerは、プロセスの自動化という部分とヒューマン・ワークフローの機能も取り入れていて、一つのBPMのエンジンで自動化とワークフローの両方を兼ねるような形になっています。これを弊社のBAMという製品でリアルタイムにモニタリングし、改善のサイクルにつなげていくのが基本的なアプローチです。問題は、最初のビジネス・プロセスをどうやって作るのかですが、一から作るのは大変なので幾つかのリファレンスモデルやマクロ機能を提供しています。
 問題は、こうした製品を使ってBPMを実現するには、全社的に取り組まないと理想的な効果を出しにくいことです。海外の企業ではIT部門が強いとか、トップダウンで作業が進められるケースが多いのでいいのですが、日本ではなかなかそうはいきません。
市橋 マイクロソフト マイクロソフトが今、提案しているのは、人が持っている潜在的な能力を、ソフトウェアの力で最大限に高めてプロセスの品質を上げましょうということです。そのためには情報の蓄積と共有、そして伝達の三つがキーポイントになると常に考えています。典型的な例として、SharePoint Serverという製品は現在非常に大きな注目を集めているのですが、このソリューションによってより快適なコラボレーションワークを実現することが可能になります。また、情報伝達手段としてのBizTalk や、フロントエンドツールとしてのExcelなどを組み合わせることで、だれにでも使いやすい、導入しやすいBPM、BAMソリューションを提供しています。(マイクロソフト製の)既存資産を最大限活用できる、というのはお客様にとって非常に重要なことですからね。大掛かりな専用ツールを利用して、長期間のプロジェクトを組んで、というやり方も確かに有効ではあるのでしょうが、会社規模を問わず、まずはプロセスをちゃんと見えるようにし、さらにはそれを少しずつ「適正化」してゆく、といったような現実的なBPM&BAMの活用をマイクロソフトは提案してゆきたいと考えているわけです。
高橋 サン・マイクロシステムズ サンとしては、内部統制、J−SOXに絡む人とプロセスのソリューションを提供したいと考えています。米国でSOX対応がスタートした時、CAPSがなかったので会計処理だけも膨大な文書量になりました。まだ書類は必要ですが、現在はCAPSを使ってプロセスをマネジメントしています。この経験を提供していきたいですね。
 CAPSにはEAI機能や、eInsightというビジネス・プロセスのモデリングツール、eBAMというBAMを実現する機能、ESB機能なども備わっています。これを使うと、すべてのプロセスのログが残りますので内部統制の証拠になりますし、最適化を進めるための材料にもなると考えています。
田岡 コーディネータ/富士ソフト 日本版SOX法に対応するために、CAPS使うのはまだ先だという認識ですか。
高橋 サン・マイクロシステムズ 今、ほとんどの企業は文書化の作業段階で、紙ベースですね。仮に今からBPMを導入しても、2008年4月には間に合いませんから、まず必要な対応作業を終えて、その次にツールを導入する形になると思います。
天野 ソニックソフトウェア ソニックの主力製品はESBでして、BPMに関してはLombardiという会社と提携しています。BAMについてはApamaという製品がありまして、こちらをご紹介したいと思います。すでにワールドワイドで40社ほどの導入実績があるので、実際にどんな使い方をしているかをお話しさせていただきます。
一つ目はアルゴリズム・トレーディングという、証券会社やいろいろなファンドの会社が使う自動執行の仕組みです。例えば、ある20秒の間にHPの株が9%以上上がり、同じスパンの中でIBMの株が全然変化しなかったというときに、IBMの株を購入するチャンスであると判断して株を買うといったことに、このエンジンを使っています。あまりBAMらしさはないのですが、やはり英国の証券取引所の監査部やカジノ会社が不正検出にApamaを使っています。それからBAMらしいところで、コールセンターの事例があります。2時間以内に返答するというパラメーターをセットすると、そうしない場合にアラームが出て、自分からアクティブに行動できるというような仕組みに使われています。このような使い方が、現状われわれがBAMとしてご提供しているエンジンの実態です。
田岡 コーディネータ/富士ソフト ありがとうございました。ではパネラーの一人として、私から富士ソフトのお話をいたします。当社はシステム・インテグレータですので、既存の製品をいかに組み合わせてソリューションを提供するかという観点から考えています。やはりなかなかBPMやBAMに入れないというところがあって、そこをどう克服するかが課題ですね。そのための切り口として、内部統制が有効であると考えています。各企業が内部統制への対応の中で作成した業務フロー図をそのまま使ってBPMにつなげる。そのとき、製品の値段もそれほど高いものではないという仕掛け作りをする。内部統制はそれで終わってしまうと単なるコストですが、そうではなくて実は投資だと訴えたいわけです。日本情報処理協会の調査では、業務プロセスの見直し・標準化を意識している企業の割合は77.8%です。単に内部統制対応だけで終わらせたくないという企業は、非常に多いのです。
富士ソフトの話はこんな感じです。最後に、BPMのもう一つの起爆剤といわれるSOAの観点から議論をお願いします。
天野 ソニックソフトウェア SOAは大変です。アメリカのある調査で、「2007年の一番分からなかった語」大賞にSOAが選ばれたぐらいですから(笑)。3年ほど前に比べると、最近はSOAという言葉が普通に言われるようになったものの、だからといって需要が顕在化しているかというと違いますね。むしろ、例えばデータの連携を図りたいとか、今あるスパゲッティ化したものを何とかきれいに整理したいという話が多いのが実際のところです。
高橋 サン・マイクロシステムズ 歴史を振り返るとオブジェクト指向(OO)があり、その前にはデータ中心アプローチ(DOA)がありました。つまりDOA、OO、SOAと来ているのですが、DOAもOAも成功しているのです。でもDOAやOAは残っていません。データウェアハウスが残り、オブジェクト指向を使ったオラクル・アプリケーションやJavaが残っているのです。そこから考えるとSOAも、SOAの考え方、例えば再利用するとか、簡単開発をするといったところが残ると思います。当然、開発ツールは残るだろうし、あとはシステム全体を連結するESBが残るのではないかと思っています。BPMもESBと非常に近しい関係にありますので、使われるようになると思います。
われわれは手段を重視して、目的を適当に作るというようなところがあるかと思います。そうであってはならないわけで、SOAをベースにした目的が必ずあるのです。ビジネスのサイクルに合う開発だとか、M&Aに対してどれだけ早くシステムを整備できるかといったことですね。その手段としてSOAがあるし、その中の重要な位置付けとしてBPMが存在していると思います。
田岡 コーディネータ/富士ソフト ということはSOAを標榜して一生懸命やっても、それは目的よりも手段を優先する話になってしまうと。
高橋 サン・マイクロシステムズ その通りです。SOA推進派のIBMや日本BEAの方がいない中で言うのは申し訳ないのですが、私はそのように考えています。
田岡 コーディネータ/富士ソフト 来場者で反論する方はぜひ何か反論していただきたいのですが、どうでしょうか。
来場者 SOAは、確かにビジネスに対してどうインパクトを与えるかということがまだ定義されていない、明確でないというところで、一部停滞があるのではないかと思っています。ただ、企業のビジネスをどう速く回していくかというためのツールとして、今後普及するのではないか、特に欧米などではそのような形でもう普及していると、私は理解しています。
日本の場合、ビジネス・プロセスの全体の考え方、組み立ての仕方が、やはりプロセスをデザインするというよりも、まだ人や組織に依存しているところが多いのですが、SOX法対応というトリガーによって、意識が大きく変わると思っておりまして、そういった意味で、SOAやBPMに関しては今後に期待する部分が大きいと考えています。
田岡 コーディネータ/富士ソフト ありがとうございました。SOAやBPMは技術としては非常に優れているので、それは最大限使う。ただし、ビジネスとしての課題をきちんと整理しないと意味がなくなってしまうということですが、やはりビジネス・プロセスをどうとらえるかに関して、ユーザーや経営者の意識がまだ十分でないというところがありますね。
そろそろ時間ですので、少し整理させていただきますと、日本版SOX法はやはりいい機会である。しかもプロセスを可視化して、統制も自動化するというような観点からいうと、かなり効果が期待できる。けれども今すぐそこまでいけるかというと、まだ皆さん文書化の段階なので、もう少し時間がかかるかもしれないということでした。
 もう一つ、ROIの話が出ました。日本版SOX法を抜きにして、BPMやBAMを進めようと思ったときに、ROIをどう訴えるかができていないということでした。これに対しては、ベンダー各社、あるいはBPIAの中で何らかの仕組みができれば、例えば、ある標準としてこういう測り方をするといいですよというようなことができれば、面白いのかもしれないと思いました。
 なかなか結論が出る話ではないのですが、少しでも皆さんのお役に立てたらということで、ベンダーの方々に参加していただいて、ご討議いただきました。本日はこれで終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。