2006年度BPIA総会 / 講演会

 日時: 2006年11月15日(水)
於:霞ヶ関ビル 1F プラザホール
講演風景
<Contents>
■講演 「ホワイトカラーの生産性に関するひとつの考察」
倉重 英樹 氏

倉重 英樹 氏
ビジネスプロセス革新協議会(BPIA) 会長
株式会社RHJIインダストリアル・パートナーズ・アジア 代表取締役社長
ソフトバンクテレコム株式会社 取締役
関係資料(PDF 661KB) →

生産性には、「時間当たりのアウトプット」のように部分最適で上がるものと、「一人当たりの利益」や「資本当たりの利益」のように全体最適をしないと上がってこないものとがあり、ホワイトカラーの生産性における問題は、部分最適を追いかけすぎていることだと思います。部分最適よりも全体最適のほうがはるかに効果が大きいという観点からいけば、生産性を上げるためには、全体最適を実現していく必要があるといえます。その意味では、サービス業では「一人当たりの利益」、製造業では「資本当たりの利益」が最終的な生産性の指標と考えてよいのではないかと思います。
 営業をしていると、お客様の要求よりも実際に当社が持っている商品群が小さい場合がよくあります。私が改革に取り組んだ日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)は、そこで商談をあきらめてしまったり、お客様を説得して要求を小さくしてもらう形が多く、説得に成功したところだけが商売がもらえるという感じでした。私はそうではなく、社内のほうを動かしてお客様の要求まで対応能力を広げていくモデルにしていきたい、そうすれば、数年後にはどんなお客様の要求に対しても当社の能力のほうが大きいという成長モデルに乗ることができるのではないかと考えました。
 そのためには、会社の中でも価値創造方式を変更していかなければなりません。一言で言うと、かなりの製造業ですでに行われているベルトコンベア方式からセル方式への変更を、ホワイトカラーの世界にも導入しようと考えたのです。具体的には、フロントシステムの整備、プロジェクトチーム制度の導入、ワークスタイルの革新の三つに着手しました。
 まず、先ほど申し上げたように、営業が営業の世界で閉じてあきらめるのではなく、お客様の要求を持って帰って社内の組織を動かすという形にするには、営業自体がお客様と社内をつなぐという大きな役割を果たさなければいけません。そうすると、すべてのお客様にまんべんなくサービスを提供するのは難しくなりますから、まずはお客様をターゲットすることになります。そして、このお客様にをよく理解した上で、向こう1年間私たちが何をするか、という観点で行動計画を作っていきました。また、今、どのお客様と、どのような商談が、どのような段階にあるかを社内の他の人たちが全部見られるようにして、さらにはお客様に提案する提案書のクオリティマネジメントができるようにと、フロントシステムの整備をしていきました。
 次に、「仕事(お客様を満足させること)」はプロジェクトでやると決め、プロジェクト制度を導入しました。プロジェクトリーダー(PL)のほかに、上位組織の人をプロジェクトオーナー(PO)とし、POがプロジェクトの創成、「トレードオフ」の決定、最終評価をする。ステアリングコミッティ(SC)には、会社のいろいろな部門の代表が集まってプロジェクトオーナーの意思決定をサポートしていく。このPL、PO、SCという三つの大きな機能を使うことによって、プロジェクトを動かしていくという考え方にしました。
 プロジェクトの支援環境としては、どこにどんな能力やスキルを持った人がいるかが見えなければいけない、個人別のワークロードの状況が分からなければいけない、併せて、各プロジェクトにおいてどんな情報が揃っているか、あるいは揃っていないかが全社員や上司から見られるようになっていなければいけないということで、それぞれのデータベースを作り、アサインメントマネジャーという、全体のデータベースの管理をして適した人を発見することを支援する人も置きました。
 ワークスタイルについては、一人ずつがまずプロフェッショナルになり、そのプロがプロジェクトチームを通じてコラボレーションしていくという考え方で、「Professional&Collaboration」という考え方を掲げました。プロフェッショナルとは、私の定義では「仕事」を遂行する人であり、高価値や成果を作り出すことに全力を挙げ、能力開発にも真剣で、仕事と人生を楽しんでいる人たちのことですが、このワークスタイルを支援していこうとすると、人事制度も変えなければいけないし、研修制度も変えなければいけないし、ワークプレイスも変えなければいけません。
 人事制度のポイントは、人材資産管理をするということと、客観性をいかに向上させるかです。そのために日本テレコムでは、1人を評価するのに4人の人を絡めるようにしました。研修制度は、教育を学習という言葉に換え、学びたいと思ったときに学べるオンデマンドの研修状態を作りました。現在、約4000のコースを用意しています。ワークプレイスは、情報のデジタル化、オフィスのモバイル化をし、フリーアドレスでお客様のところにいても自宅にいても仕事ができるような環境を作り上げていきました。また、人間の五感がいちばん刺激されるのは街だということで、オフィスの基本的な設計思想のベースに「街」を持ってきました。そして、それらを支える事業の運営体制は、同じような仕事をしている人をネットワークコミュニティで結ぶという考え方で作りました。ねらいは「仕事が楽しい」です。楽しいということが原点になったときに、お客様を満足させることが楽しい、ほめていただける、何をしたらもっと喜んでもらえるかを考え始めるという「創造性のスパイラル」が起こってくるのだと思います。
 昨年の4月からこういった手を打ってきて、結果はどうだったか。「能力のレベル×人数」の総和を能力パワーと呼んで社員資産を数値化しているのですが、これがフロント系2000名で1万353ポイントになりました。常時稼働しているプロジェクト数は650〜700、そのうちお客様用プロジェクトが65%、社内用が35%で、大体毎月80〜90のプロジェクトが創成され、80〜90のプロジェクトが完成しています。ワークプレイスは、ファイルメーターが一人当たり0.3メートルで88%減、一人当たりの坪数は28%減、社員の73%がこのオフィスはとても働きやすいというポジティブな反応をしてくれています。総じて言うと、社員の生き生き度が向上し、ソリューションの割合が増加して、売り上げがプラスに転換できたということです。  今後の課題は、能力開発によってお客様により厚いサービスを提供すること、グループシナジーを追求すること、そして最終的にはお客様とのパートナーリンクができると、本当の意味での企業間の信頼関係、いわゆるコラボレーションができ上がっていくのではないかと思っています。
 そういう意味では、営業だけがお客様に対応する時代はとうの昔に終わっていて、営業が会社全体をお客様に対して動かしていくフロントの役割を担う時代が来たといえるのではないでしょうか。それを可能にするのは、営業も含めて社内のあらゆる人間がプロジェクトに参加することですから、プロジェクトというものを改めてホワイトカラーの変革のところに位置づけてみると面白いのではないかと考えています。


■講演「これからのワークモチベーション」
小笹 芳央氏

小笹 芳央氏 
BPIA常務理事
株式会社リンクアンドモチベーション 代表取締役社長
関係資料(PDF 945KB) →

 最近、働く人々のモチベーションのエンジンが変わってきています。かつては、企業の中でのポストアップがほぼ共通の目標でした。ところが、終身雇用や年功序列が旧来型の仕組みとなり、人材の流動化を促進するような社会的インフラが整った今は、自分が会社の外に出たときにどれだけの値段がつくか、どれだけ自分自身にプロフェッショナリティがつくかというところに関心が向かっています。また、戦後復興期から高度成長期には、大半の人々の働くモチベーションは物質的豊かさでしたが、それが随分変化して、精神的豊かさを求める人々が多くなってきています。にもかかわらず、相変わらずお金とポストで社員のやる気を引き出そうとするのは、逆にモチベーションを下げる結果になりかねません。
 成果主義については、賛否両論ありました。成果主義自体は間違った考え方ではないのですが、よくよく考えれば、これはお金とポストの配分ルールの変更です。つまり、ワークモチベーションの変化、あるいは多様化という現実に対応するものではなかったということが、根本的な問題点だと思います。
 では、どのような観点がモチベーションマネジメントに必要なのでしょうか。一言で言えばモチベーションは多様になったというのが結論ですが、それに対応して社員のやる気を高めていくためには、「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」という三つの輪の重複部分の面積を広げてあげることが必要です。
 まず、「やりたいこと」について言うと、私はモチベーション特性を「達成支配欲求」「論理探求欲求」「審美創造欲求」「貢献調定欲求」という四つのタイプに分けているのですが、どのようなときにモチベーションが上がるか、下がるかは、それぞれのタイプで全く違います。例えば、達成支配欲求型は、自力本願で強くありたい、成功を収めたい、周囲に影響を与えたいという欲求を持っており、明確な目標設定があって勝ち負けをはっきりさせるとか、自身の権限や責任の範囲が拡大していくときにモチベーションが上がります。逆に、その権利や権限が剥奪されたり、目標やライバルを失ったりすると、モチベーションが下がる傾向があります。しかし、みんながみんな勝ち負けにこだわるタイプではないということを理解しなければなりません。
 どのような言葉かけがやる気の源になるか、どのような仕事の意義づけをすればやる気が出るかは人によってさまざまで、そういう意味では、これからは従業員のモチベーションをマーケティングすることが大事になります。そこをマーケティングすることなしにモチベーション対策といっても、効果的な施策はうてません。昔と違って長く勤めたほうが有利というわけではなく、転職情報があふれていることを考えれば、これからは顧客を満足させるということと同じぐらいのエネルギーを使って社員を満たすこともやっていかないと、厳しい時代になったということだろうと思います。  二つめに、先ほどは一見社員に優しいマネジメントのことをお話ししましたが、一方で、社員に「やるべきこと」をしっかり認識させる、ある意味ハードなモチベーションマネジメントも大事です。どういうことかというと、変えられるものは何か、変えられないものは何かを峻別して、変えられるものにエネルギーを集中させるのです。そういう考え方をしたほうが、よほど生産性が高くなりますし、成果に近くなります。成果が出れば、自分に自信がつき、よいサイクルができていくと思うのです。  では、変えられるものは何かというと、「自分」「思考」「行動」「未来」であり、「他人」「感情」「生理」「過去」は変えられない、あるいは変えにくいものです。例えば、感情が高ぶっているときに2〜3キロ歩くと、不思議と落ち着いてきます。何かトラブルがあったときには、心の中で泣きながらも、同じトラブルが起こらないようにチェック体制を強化しよう、今回はそのいい機会だったのだというポジティブなとらえ方をしてみます。思考や行動を変えることによって、負の感情を抑えるということです。
 また、他人の握りこぶしを開くのが難しいことからも分かるように、内発的に変えようという気持ちが相手に芽生えない限り、他人を力ずくでコントロールすることはできません。これは、他人は変えられないということを言いたいのではなく、相手を変えるためには、まず自分が変わらなければいけない。つまり、その人に対する指導方法を変える、動機づけの方法を変える、アプローチの方法を変えるなど、自分が何か行動を起こさない限り変わらないということなのです。  考えてみれば、一流のスポーツ選手は、マスコミに「今回はライバルが手ごわいですね」と言われて何と答えているでしょうか。ほとんどの場合、ライバルのことは答えずに、「自分がベストを尽くすだけです」と答えています。ライバルは変えられないからです。初日の結果が悪ければ「明日は頑張ります」と言うのも、終わったことは変えられないからです。気持ちを切り替えて、思考を高める。ふだんどおりの食事と睡眠を取って、次の日は最高の状態に持っていく。彼らは、そういうモチベーション管理というものをしっかり習得しているのだろうと思います。
 三つめの「やれること」を広げてあげるということについては、人材育成という観点で、OJT、OFF−JTを含めて各社なさっていると思いますが、人の伸び方というのは決して右肩上がりの直線ではありません。例えば逆上がりでも、できない状態がずっと続いて、ある日突然一回できる。それが自他共に認める成長の瞬間です。それを一度味わえた人は、今は停滞期間だけれども、これで逃げずにまじめにやっていれば必ずまた伸びるのだということを信じられるから、また伸びるのです。
 ところが、最近は停滞期間であきらめてしまう若い人が多いのです。逆上がりができなければ、自分には向いていないからといって一輪車を乗りに行く。それもできないと、水泳に変えてみる。そうやって40歳、50歳になるという人が多いのですが、どんなことでも必要な蓄積期間があって、初めてそれを乗り越えることができるのです。ただ、今の若い人はその期間が長いともちませんので、モチベーションマネジメントする側は、小さくてもいいから成功体験をさせて、逆上がりもだめ、一輪車もだめという人を作らないようにしなければなりません。
 以上、モチベーションの源泉となる三つの輪を例に、速効で取り入れていただけるかもしれない観点について、幾つか材料提供をさせていただきました。


■講演「日本版SOX法による内部統制とその実践方法」
安田 正敏 氏

安田 正敏 氏
株式会社MM総研 取締役副所長
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 今年の6月、「金融商品取引法」(いわゆる日本版SOX法)が、参議院を通過して成立しました。「我が社では財務報告に関して有効な内部統制が働いている」ということをはっきりと表明し、違反した場合は罰金刑もしくは禁固刑が科せられるといった刑罰を伴った、アメリカのSOX法とほぼ同様の法律が日本にできたわけで、日本の株式公開企業の経営者は2009年3月末の決算報告からそれを実践しなければなりません。
 この日本版SOX法に関連して、昨年12月8日に企業会計審議会の内部統制部会から「財務報告に係る内部統制の評価と監査の基準案」が発表され、今年の11月6日にはガイドラインが発表されました。このガイドラインは、「内部統制の基本的枠組み」「財務報告に係る内部統制の評価及び報告」「財務報告に係る内部統制の監査」という三つの大きな枠組みからなっており、昨年の基準案から大きな変化は見られません。
 「内部統制の基本的枠組み」は、具体的に財務報告に係る内部統制についてどうしていくかを説明するもので、アメリカのCOSOの枠組みをベースにしながら、基本的には個々の企業独自で工夫すべきであるとしています。「財務報告に係る内部統制の評価及び報告」では、内部統制の不備がもたらす重要な欠陥をどのように定義するかということや、評価範囲についてのガイドラインを示しており、それに沿って作った内部統制が有効に機能しているかどうかを評価しなければいけないわけですが、重要なのは、内部統制の評価の最終的責任は経営者にあり、評価の計画・実施・評価結果の責任は経営者が負うということです。これは非常に明確な点で、はっきりと理解していただく必要があります。
 今回のガイドラインは、基準案を具体的に示すという意味では期待していたほど詳しくはありませんでした。その意図するところは、やはり自分で考えてくださいということではないかと思いますが、特にこのガイドラインの中では、ITの統制と、ITをどうやって内部統制の構築に活用していくかという点についてはほとんど具体的に触れられていませんし、内部統制構築のベースとなる企業のリスクの洗い出しと評価の具体的手順もほとんど示されていませんので、それは別のところで研究する必要があろうかと思います。
 私は昨年来、内部統制の構築については、ITの内部統制を前提としたうえで、ITによる支援がなければ非常に難しいというお話をしてきましたが、ITさえあれば内部統制が構築できるというわけではありません。内部統制は財務報告に係るところだけではなく、企業の業務クオリティの向上、リスクを減らしてより効率的な経営を目指すというところが大きな目的ですので、そこのところをもう少し整理しておきたいと思います。
 いちばん大きな枠組みの目標は、業務改革による経営の効率化です。これをやることによって結果的に新会社法にも日本版SOX法にも対応でき、加えて最初の目的としての収益性の向上、事業価値の増大を目指すことができるわけですが、内部統制部会の視点は、単に財務報告の信頼性に係る内部統制の構築に限定されています。したがって、具体的に何をやるかといったときに、ここだけに限定して考えるのか、もう少し大きな枠で経営効率の改善を考えていくのかによって、その効果が大きく違ってくると思います。
 もう少し具体的な枠組みを説明すると、最終目標は企業経営の効率化ですが、やはり企業としては数値目標を挙げる必要があるかと思います。どういう数値を指標とするかは企業によって違ってくると思いますが、どの企業にも企業目標とその目標を達成するための企業戦略があるわけですから、それをもう一度見直して、それに基づいて企業経営の効率化を数値目標を立てて見直し、目標達成に当たってはエンタープライズ・リスク・マネジメントという、リスク・マネジメントに基づいた経営の効率化を図っていきましょうということです。
 基本的には、プロジェクトチームの編成、基本計画の策定、ビジネスプロセスの見直しとプロセスの目標設定、目標に対するリスクと機会の洗い出し、リスク評価とその対応、リスクを抑制する仕組み、そして内部統制を構築していくわけですが、この内部統制の構築というところが日本版SOX法が要求する「財務報告に係る内部統制の構築」というところに行き着きます。また、エンタープライズ・リスク・マネジメントでは、モニタリングが非常に重要で、いったん作った内部統制が実際に有効に機能しているかどうかを常にモニターしていかなければいけません。それを日本版SOX法対応で言うと、「財務報告に係る内部統制の評価」というところに関連してきます。
 したがって、企業の経営改善の大きな枠組みの中から自然と日本版SOX法への対応も出てくることになるわけです。しかし、日本版SOX法への対応ということで財務報告に係る部分だけの内部統制を考えていたのでは、抜けがあったり効率が悪くなったりする可能性が高くなり、せっかくこういったものに対して使ったお金が、投資ではなく経費としてしか使われなくなる可能性が高くなるというのが私の長年の主張です。ただし、企業の経営改善を本格的にやろうとするともう少し中期的なプロジェクトになってくるため、その折り合いをどうつけるかという問題があります。基本計画の策定というところが問題を解決する大きな節目になりますので、具体的に大きなプロジェクトの中で短期的な目標をどう達成していくかということをよく練っていく必要があると思います。
 先ほど申し上げたように、内部統制部会のガイドラインには、ITに関してはほとんど実質的なガイドはありません。したがって、これはいろいろなところで研究していかなければいけないことだと思うのですが、せっかくの機会ですから、ITによる内部統制支援を行う際には、今まで経営とあまり結びついてこなかったITを、経営目標あるいは経営戦略とどう有機的に関連づけていくか、全社的内部統制や業務プロセスの内部統制の構築をする際に、ITの全般統制あるいはITアプリケーション統制とどのように具体的に関連づけてやっていけばいいのかというところに留意して、しっかり押さえてゆく必要があるのではないかと思います。
 そのための重要なポイントとして、まず企業の初期診断をしておく必要があります。初期診断は、ITだけではなく、全社的内部統制あるいは業務プロセス統制の基本計画を作る際にも一つのステップとして入れておく必要があるかと思います。そうやって現状を押さえたうえで、あるべき姿とのギャップを把握し、そのギャップを埋めるために必要とされるITリソースは一体何かというところを確認していくということです。
 もう少し詳しく言うと、いちばん上に経営戦略・経営目標があって、それを達成するために全社統制、業務プロセス統制、IT内部統制があるとすると、全社統制、業務プロセス統制についてはエンタープライズ・リスク・マネジメントをベースに組み立ててゆくことになります。そこから、例えば内部統制を構築していくうえでの支援システム、機能に対する要件、情報に対する要件といったITに対する要求がいろいろ出てきます。ITサイドの内部統制の観点から言うと、COBITのフレーム・ワークでは機能領域として4プロセス、全部で34のプロセスについてみてゆく必要があります。この枠組みで自社の現状を分析して、あるべき企業の目標を立てて、そのギャップを分析してどのようなインフラ整備あるいはシステム導入の整理をすべきかを考えていく必要があります。このあるべき姿、企業の目標というのは、当然企業によって違いますが、いずれにしても、目標を立て、現状とのギャップを分析し、それを埋めるためにどうすれば良いかというロードマップを作ってゆくことが重要です。
 まとめますと、内部統制支援のためのIT活用は、内部統制の基本設計が不可欠です。企業目標・戦略に関連づけたIT内部統制の構築が重要であり、初期診断と基本設計に基づいた自社のIT資源の活用が大前提となります。そして、これがいちばん重要な点ですが、私は内部統制のための費用を単なる費用に終わらせないためにも、内部統制のための投資効果を目指す数値目標の設定が非常に重要だと考えています。