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■ 講演
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「成熟化するネット社会とビジネス戦略の変化
〜IT産業と顧客企業のコラボレーションが新しい企業価値を創造する〜」
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| 関 隆明 氏 (NECソフト株式会社 代表取締役社長) |
| (資料非公開) |
1.ビジネス環境の変化と効果的なIT投資の推進
(1)ビジネス環境の変化
ネット社会の成熟化といってもまだこれからという部分も多々ありますが、ADSLなどでも世界一安くて速いというところまで追い上げてきています。目的を持つと日本は非常に早いという面があり、その意味ではだいぶツールやインフラがそろってきました。そうすると、365日24時間、全世界がビジネスの対象となり、情報も中間を全部飛ばして直接通信したり配信したりするようになってきています。
私は、リアルタイムということがこれからの企業経営のポイントになると常々思っています。それができる環境になってきているし、また、その必要性が高まっています。顧客のターゲット層はどんどん変化し、企業がエンドユーザーの個人にまで直接アクセスできるようになる反面、セキュリティの問題が大変クローズアップしてきています。このような環境変化の中で、ビジネス創出や革新のチャンスが本当に増えているという認識に立っています。
(2)IT投資がビジネス戦略の要
IT投資がビジネスの戦略の要であることは、もう言うまでもありません。しかし、企業のビジョンから戦略へと展開する段階になると、実現可能性とか、パフォーマンスの問題も考えて、自分の企業力に見合ったIT投資という視点が重視されます。そのため、日本ではコスト意識の強い投資が多くなるのですが、これからはAs-isよりTo-Be重視の姿勢で投資していかないと大変なことになると感じています。
(3)IT投資と活用度の国際比較
国際会議等へ行っても、日本はどうも後れているという話ばかりが出ますが、主要国の情報化投資額を見ると、33.6%を米国が占め、日本は17.1%で、3〜5位のドイツ、英国、フランスの合計に匹敵する世界第2の投資国になります。ただ、ITの活用度の比較では、日本は20位に陥落してしまい、最近の電子政府の成熟度では16位という報告もあります。
(4)日米における情報化投資の効果比較
情報化投資の内容をアメリカと比較すると、コスト削減・業務効率化効果をねらったものではあまり差はありませんが、売上拡大・高付加価値効果を目指した投資では日米に画然とした差があります。これは、やはり経営者の情報化に対する経営スタンスが少し違っているのではないかと思います。
(5)投資効果の継続的把握
情報化投資実施企業で、投資対効果を検証しながらしっかりやっている比率はさすがにアメリカのほうが高く、日本企業は、効果効果という割には、検証する方法や指標を持っていないケースが多いようです。
(6)日本の技術優位性を活用したビジネスモデルへ
日本もやればできるし、力もあるのですが、技術のほうから見ると、ソフトウエア、インターネット、コンテンツという、いわゆるITに絡む心臓部分のほとんどはアメリカが優位です。一方、日本は、情報家電、モバイル端末といったものに優位性があります。ただ、だめだというばかりではなく、日本が強い部分を生かす形で世界に伍していく方法はないだろうかと、私どももいろいろなモバイル機器、例えば携帯電話のエンベデッドソフトなどを随分開発しているのですが、こうしたものをもっと積極的に使って、他国とは違った環境整備をすることも十分考えられると思います。
では、強みをどう生かすかですが、経済産業省などのかたからも、「関さん、コアコンピタンスを何にしたらいいのでしょうか」というお話が出ることが多く重要なテーマになっています。私は、いつも情報家電のことを引き合いに出しながら、「ハードプラスソフトで勝負したらいいのではないか」と言わせていただいています。
同じERPやCRMでロジックは似たりよったりでも、窓口のお嬢さんが使うのか、製造工場の作業者が使うのかによってインタフェースの条件が変わってくると思います。そこで、多様化して世界にはないものを先行して積極的にやらないかといって、今、エンベデッドソフトを世界に先駆けて早くやるように、ハードウエア会社とのタイアップなどもやらせてもらっています。
それを使うと絶対に有利になるものを日本が生み出さなければいけないのだろうと思います。
2.ITへの投資効果が問われる時代
(1)米国でのエンタープライズ・アーキテクチャの適用
エンタープライズ・アーキテクチャ(EA)をしっかりやらないと、なかなかいい仕組みができないとよくいわれます。アメリカは、政府の調達をするためのFederal Enterprise Architecture Frameworkを作り、E-Gov Enterprise Architecture Guidanceを公開し、世界をリードしているのはご存じのとおりです。
日本でも、後ればせながら政府調達関係府省連絡会議の設置から始まって、CIOの連絡会議が設置され、ITアソシエイト協議会連絡会議による中間報告を経て、電子政府の構築計画が出されています。
私自身は、電子政府構築計画は素晴らしいことだと思っています。今後は、政府調達のガイドラインから民間企業へIT投資のガイドラインになるように展開されていくと思いますし、我々ベンダー側、情報サービスを営む企業から見ると、いよいよ本当の競争の時代へと向かっていき、厳しい反面、フェアな競争ができるだろうと思っています。
(2)電子政府構築計画での業務・システムの最適化
電子政府の構築計画の基本方針の中で、ワンストップサービスに代表されるように、国民の利便性、サービスの向上が小渕内閣のときから今の小泉内閣になった時点でだいぶ見直しをしたようです。
ASEAN諸国は、Eガバメントを国の発展のベースにしなくてはいけないということで、国民に役立つものということを強調し、「新しいシルクロードを作る」という合い言葉の下にやっています。しかし、日本の電子政府の視点は、省内の業務を効率化するところにウエイトがあり、本当に国民の利便性のところまではなかなかいっていないという指摘がありました。
昨日まで中国を訪問していたのですが、ある会社で聞いたところによると、ある都市で、ターミナルからいろいろな問い合わせに答えてくれるキオスクのシステムを、幾つかのベンダーにお願いしているというのです。まだ全域ではないでしょうが、そういうものをどんどん実用化しようと、ものすごい勢いでやりだしているのだろうと思います。
日本は国民の立場に立った電子政府が後れているために、先ほどの利用度や成熟度となるとプライオリティが下がるのだろうと思います。そこを意識的に変えていき、業務システムの最適化をし、環境整備ではセキュリティの問題が非常にクローズアップしていますので、そのようなことが関係部門でかなり熱心に議論されるようになること自身が、この面でのIT化構築にスピードを与えることになるだろうと思って喜んでいます。
(3)エンタープライズ・アーキテクチャの考え方
エンタープライズ・アーキテクチャは、As-IsからTo-Beをターゲットとしなければならないということで、アメリカではピラミッド型の概念図が描かれています。ビジネス・アーキテクチャ(政策・業務の内容)をしっかりとらえて、次にアプリケーションではなく、データ・アーキテクチャがくるところが、非常に私自身は気に入っています。政策を立て、IT以前のところをしっかりとらえて、それを遂行するうえで一体どんなデータがどのような関連づけをされたら機能しうるかを考え、それを目的に合わせた処理等をするためのアプリケーションがその次に来ています。そして、それを支えているテクノロジーという形で全体の設計図を描いてからすべてを行っています。
(4)経営戦略とエンタープライズ・アーキテクチャ
日本の場合、経営戦略とエンタープライズ・アーキテクチャの議論がお客さんとの間で出ると、「全体からなどなかなかできるものではないから、できるところからやりましょう」ということでやっていくことが多いと思います。すると、システムはぶつ切れの高速道路のようなもので、そこに乗ってもすぐに終わりになってしまうから、わざわざそこには行かないという現象が現場では起きていて、トップが「なぜうちのシステムはこんなに役に立たないのだ」という批評をしている姿がよく見られます。IT投資の適正化や投資効果を意識したIT化を進めると、日本のトップはすぐ「コストを安く」と言いがちですが、それでは絶対に効果の出るシステムはできません。実際の場では、トップは「今は不況だから投資額が限られている。安くうまくやれ」と言いつつ、望むものはたくさんあって、「あとは情報システム部長、しっかりやれ」ということになります。そして、突き放された部長さんは大変なことになっています。
どうせアイランドしかできておらず、何とか全体を結びつけなければいけないというステージにあるのならば、むしろ今こそEAを描いてロングレンジでの見通しを立ててやらなければいけないのではないでしょうか。日本の場合、部分ごとのアプリケーションアイランドができ、その間のコードや規約がそこで便宜的に決められて突っ走ってしまっているシステムが多いと思います。そのうえ今からまたアイランドをどんどんできるところからやろうと積み上げて、何年か後に全体の整合を取ろうとすると、ますます後が大変です。
これからは、ユーザーとベンダーのコラボレーションがますます重要になります。我々ベンダーが何か提案し、お客様がその線でいこうというのではなく、お客様の将来のITシステムの在り方をお互いが本当にがっちり組んだ形でやっていかないと、将来また禍根を残すことになります。
(5−1)企業におけるEAの考え方の適用
EAの考え方を政府から企業へ適用することは、まずアメリカでものすごい勢いでどんどん進んでいくと思います。しかも、それは大企業の話だとは言っていられないことです。将来の姿を描き、常に全体の最適化を図っていかなければいけません。アメリカの例では、それぞれでアイランドを作っていると、似たようなデータベースをたくさん作っていてもったいないことをしているので、それを全体から攻めていって共用・再利用を促進すると非常に効率的になったということが、実際に数値まで挙げて出されています。
(5−2)EAの考え方の導入に対する効果
では、EAの考え方を導入するとどんなことがうまくいくでしょうか。例えばEAで全体を描いてみたいということになれば、業務やシステムアーキテクチャのビジュアル化に取り組めばお客様とそういったものをベースに具体的に議論できます。また、いろいろな標準化の問題、あるいは将来変更が出たときの位置づけ、どちらに向かっていくか、その変更が要を得ているのかどうかといったことがはっきりします。そして、To-Beのモデルを目指して進んでいくことになります。
評価問題でも、「あれは難しい問題だ」とは言っていられないので、幼稚であろうと偏っていようと、その時点で効果の一つの尺度になるものを考え出してやっていかなくてはいけません。2〜3年前にこんなことを言うと、「それは理想論だ」「まだ先の話だ」と言われるケースが多かったのですが、もうそうは言っていられません。ITガバナンス全体をどのように調整をしてうまくやっていくか、そのガバナンスがうまくできた企業が効果的なシステムを作り上げていくのだろうという気がします。
3.企業間コラボレーションによるビジネス展開(ビジネスWEBによるリアルタイム促進)
(1)多数企業のコラボレーションによる事業遂行と実現環境
最近とみに企業間の問題がクローズアップしています。まず、実現環境の整備が年々どんどん進んできています。システム連携の促進に関するみんなの意識も非常に高まってきて、EAモデルを作りそれを活用しようとか、EAIを導入してシステム統合を推進しているところもたくさん出てきていますが、自分の会社なりに全体の整合の取れたシステムを開発し、いかに短期に実現するかというところが勝負のような気がします。
WEBサービスなども、一つの使い方の技法ではなく、WEBの使い方を企業運営にどう生かしていくかという問題です。インフラ自身もどんどん進化しています。昔は一企業がいろいろな企業との関連を取ろうとして、資材調達で一つの会社が「うちの端末から入れてください」というと、材料会社のほうは10も20も端末を置かなければいけないなどという時代があったと思います。しかし、BPO/ASPプロバイダを介することで解決することが可能になりました。
そういうことから、自社内のアプリケーションアイランドをいかにうまく結びつけていくかがまず重要なテーマになり、物を一つ造るのでも関連の会社は多数あるわけですから、その企業間をどうつないでいくかということに当然なっていきます。
(2)企業間情報通信ネットワーク構築の現状
企業内のネットワークは日本もアメリカに負けず劣らずきちんとやっていますが、企業間の通信網を構築するという点では差があります。それ以上に、企業間で情報システムの連携が取れている度合いを見ると、圧倒的な差があります。
ビジネスフロー、ビジネスプロセス、あるいはワークプロセス自身も、連携した仕事をしているのであれば、社内でそれがうまくつながるだけでなく、関連したパートナーのワークプロセスの中にうまく接続できていかなければ、そこに人間が介入してワンテンポ遅れることになります。欧米等でどんどんシステム連携のほうへ向かっているのが事実だとすれば、自分たちのねらうべき姿を描きながら、少しでも早くキャッチアップできる方向へ行かなければいけません。
・企業内、顧客、企業間をダイレクトに結んだ事業構造を構築する
パートナーと有機的な関係が保てる企業ほどダイナミックでスピーディな仕事ができることになるでしょう。たまたまEDPという道具を使ったために、その間にまとめて処理してから出すというバッチ処理的な発想が出た時代がありました。本来はリアルタイムで情報交換をし、スピーディな仕事をしたいという要請と、そういったものとをどううまく結びつけていくかも含めて、どの程度必要なリアルタイム性を実現できる仕掛けが作れるかが国際競争では重要になります。
日本も工場を中国やタイ、最近ではベトナムなどアジア諸国にもどんどん出しているようですが、距離があればあるほど全体の有機的な流れを結びつけていくことが企業の差になって出てきて、そのスピードの違いが仕掛かりやデッドストックの量に響きます。日本国内で生産管理をうまくやることを考えるよりも、海外との間で為替の差をいかにうまくコントロールするかを考えたほうが利益が圧倒的に出てくるというご経験もあろうかと思いますが、もっとマクロ的に見たときには、利益を出す場所が違うところにあります。その観点に立ち、エンタープライズ・アーキテクチャ的な考え方をマクロから落としていって、ミクロでは少々不便があっても企業経営にはあまり大きな影響はないという取捨選択、プライオリティづけをする時代になったのではないかという気がします。
(3)コラボレーション&コマースへの流れ
少々観点が細かくなりますが、コラボレーション&コマース、いわゆるEDI、EC/EDI、モバイルEC、Eマーケットプレイスなどという言葉がいろいろ出ています。少なくともブロードバンド&モバイルの時代になり、道具としてはそういったものを実現できる段階に来ています。これを生かした形でさらに一歩進め、企業間のコラボレーションを考えたうえでのコマースといった連携へと進んでいくのだろうと思っています。
物を作って供給する点では規模のうえで日本は中国などにかないませんから、技術立国で一歩先んじた形でリードしていく国をめざすとすれば、ますます知を共有したコラボレーションがいかにスムーズにできて、いち早く新しい物を生み出せるかどうかが大事になります。我々そういう舞台を作る側としては、そういったことを本当に安く、臨機応変にできるような準備をしておかなければいけないだろうと思っています。
(4)サプライチェーンとエンジニアリングチェーンでのコラボレーション
次に、商品企画、開発設計、生産技術を一緒にやっているパートナーといかに有機的なコラボレーションの関係を築けるかということになります。例えば、物や図面を簡単に送れる環境や仕掛けを持った間柄と、図面を持ち運んでいって議論しなければならない間柄では、お客様からの要求に応じられるスピードが全く違います。そこが日本の企業ではいちばん競争点として先鋭化してくるのではないかという感じがします。この分野でのコラボレーションができやすい仕掛け作りがあって、それをいかに材料供給や仕掛かり品供給、そしてカスタマーに持っていくところへどう結びつけていくかが重要なシステム作りの観点になるのではないかと思います。
サプライチェーンの問題では、製造メーカー、小売業者とのコラボレーションで、需要予測にのっとった在庫政策、そのうえでの生産の仕込みをいかに早めに事前にできるかで企業力に差が出てきます。それができる欧米企業やアジアの新興勢力が出てきて、我々がその両方から挟み打ちをくらって立場がなくなってしまっては困ります。
(5)コラボレーションによるサプライチェーンの最適化
需要予測から在庫補充を行うには、必要なデータや情報をしっかり共有できる仕掛けを作らなければいけません。第三者的なアウトソーシングをやるプロバイダ、例えばBPOでビジネスのプロセスをつなげやすいプロバイダ、あるいは処理が共通であればASPのプロバイダなどをうまく活用しながら、自分の企業内といろいろなパートナーとの連携をスピーディに構築できることが必要になってくるのではないかと思います。
(6)システム間連携を容易にするシステム構築
ビジネス構築の基盤になるものをいかに体系化して用意しておくかが大事になります。ビジネスで共通部分となるもの、先ほど言ったコラボレーションを助けるようなものはかなり共通的にできる面がありますし、そのうえに業種、業務の特性から考えなければいけないフレームワークがあり、個々のお客様にカスタマイズして提供します。このようなコンセプトは世の中にたくさん出てきていますが、本当に道具やソフト面でこれをスピーディにインストールできる仕掛けが、お客様からも強く要求されてくるし、現にされているだろうと思います。
(7)企業間コラボレーションでの留意事項
一部繰り返しになりますが、まず、新しい知(ナレッジ)を形成するような関係づけです。それから、やはりリアルタイムがキーになるだろうと思いますし、それを生かしたビジネスモデルをできるだけ発案することがますます重要になってきます。範囲の広がりとしては、企業間はもちろん産学の壁を乗り越えた連携なども必要になります。今は一部のプロジェクトで産学共同が実践されていますが、ある部分で知なり指導を得たいといえばそれが得られるような関係づけを競って用意するような時代になるでしょう。とにかく、ビジネスモデルがスピーディに変わっていってしまう時代に、短期間でそれにどう追随できるかが大変重要なテーマになるだろうと思います。
4.ビジネス革新とシステムの課題
(1)ITの進化とビジネスの差別化
国内でもそうですが、国際間で自分のビジネスの差別化をしようとすると、いろいろな観点からの検討が必要です。ここでは、ブロードバンドモバイル、ユビキタス、セキュリティなどのテクニカルな項目を挙げていますが、こういったものがただ言葉だけでなく、本当に機能する形で準備できているかどうかが問題です。もちろん日本の技術優位はあるわけですから、これをいかにうまく使って先ほど言ったものを作っていくかということが、我々が本当に真剣に取り組まなければいけないテーマです。
(2)最大の課題はセキュリティー 〜高信頼性社会がすべての原点〜
具体的にいろいろな問題が出ていますが、私はセキュリティ問題が最大のテーマだと感じています。国のほうでも情報セキュリティ統合戦略で高信頼社会の構築を挙げているのは非常にいいことだと思いますし、リスク管理も含めてこれに関して日本が甘い国だといわれていることは皆さんもよくご存じのとおりです。そんなことを容認している段階ではないと思います。これは、リアルタイムベースのネットワークのコラボレーションには必須です。
(3−1)セキュリティ・ソリューション
セキュリティ・ソリューションについては、認証の問題、サイバーアタック対策、情報漏えい対策などいろいろなことがいわれていますが、私どももそのジャンルごとにいろいろな道具開発をしています。
(3−2)企業、施設等におけるセキュリティ管理
セキュリティのいろいろな仕掛けは、暗号問題等も含めて整備するのは当然ですが、マン・マシンのセキュリティの問題が大切だと考えています。バイオマトリックスは、指紋といわず目といわず、とにかく全種類挑戦してくれと社員には言っています。
何もバイオマトリックスだけがすべてではないと思いますが、最後は「おまえの口座から100万円下ろしていいか」と言ったときに、ICカードなどでいけるかどうか、やはりその人の命や財産にまつわるものはその人自身から識別できるもので確証を求めることも考えるべきでしょう。
(4)利用しやすいWEB環境の導入(WEBビジネス促進)
ネットワークの使い方はいろいろ工夫をしていますが、卑近なテーマとしてはやはりWEB環境の整備が出てきます。例えばコンタクトセンターと顧客の関係は、音声だけでやっているものから、それに同期した画面がきちんと目の前に出て、いろいろな画面をプッシュ型で提供できれば正確でやり取りが円滑に進む改善になるでしょうし、データのボリュームが非常に大きい場合はオペレータが代行して入れることもあります。本人確認の問題は先ほど申し上げたとおりです。このようなことができる時代になり、またその仕掛けのソフトもできています。それらをどううまく使っていくかということです。
それからもう一つ申し上げたい点は、ネットワークへの参加者が多種多様になってくることから、利用目的別端末をいち早く開発して基盤を整理することが我々に課せられている重要な任務ではないかと思っています。私どもはソフト会社ですが、NECに限らずハードの強いところと手を結んで、その場に合ったマン・マシンインタフェースを持った端末、ナチュラルインタフェースをしっかりやらなければいけないと思っています。
(5)BPOなどアウトソーシングの活用
BPO業者も非常に増えてきました。それを先ほどのような観点で、プロセス管理型業務戦略支援というアプローチが重要ですし、コンサルから運用管理までお客様とともに、ライフサイクルサービスといわれるお客様のバリューが上がるような形でエンドレスのループを描くサービスのしかたが強く望まれるでしょう。
(6)「知」を活用した顧客とのコラボレーション
ベンダーとのコラボレーションについては、ナレッジマネージメントシステムを後ろに持ちながら、うまくナビゲーションしていくような仕掛けが必要です。
戦略など道具以前の問題がありますが、私どもは経営論や経営戦略を論ずる力は十分ではありませんので、コンサルタント会社などと協力して展開しようとしています。また、それを支援するツール、例えば可視化ツールなり、ナビゲーションしやすいようなシステムづくりでお役に立てたらと思っています。
(7)知恵と工夫でビジネスや業務が変わる
今、私が言ったことは先進的な大企業がやることだといわれるかもしれませんが、業務のワークフロー化等で顧客サービスのタイムリー化を図ったというごく素朴な例を二つ紹介します。
一つめの例は、保守サービスからSIの一部をされるお客様ですが、各拠点への指示の電子化等の改革を行った結果、数百万円の投資で年間8.8万時間の工数削減と3億円のコスト削減を実現しています。
二つめの例は、業界として中小企業の多い団体です。ここは、工業会全体が同じような業務をしているので、私どもでソフト開発をし、運用も全部やってくれと頼まれたもので、企業間もニュートラルな立場で連携の支援が可能です。
つまり、大企業だから、中小企業だからではない、企業として生き残っていくため、あるいは優位に立つために、今申し上げたことを自分の問題としてトップのかたが意識されることが大変大事ではないかということを申し上げたいのです。
5.ビジネス・イノベーションへのアプローチ(まとめ)
最後に重要なのは、それをだれがやるのかという人材の問題です。これは古くて新しい重要問題ですが、今日は論点から外させていただきました。以上、私が自分の仕事をやりながら今感じていることを中心に、たたき台として提供させていただきました。
■ 研究発表1
1.2003年度の活動
2003年度は、当初はオフィスワーク生産性という観点で、例えば生産性のメジャーにはコストがどう下がっていったか、売上がどう伸びていったか、スペースがどのように変わったか、情報コストとオフィスコストはどのようなバランスになるかなどを、データで最終的に方向性を明示していったらどうかという方向でした。
しかし、幾つかの事例を見ながらやっていくうちに、数字でメジャーするのは画一的すぎるという話が出て、生産性とは何ぞやという議論に入ってきて、働く意欲やモチベーションをどうとらえるかとなると大変な作業になり、ある意味では暗礁に乗り上げたところがあります。そこで、この分野の研究をされていた関西学院大学の古川先生をお呼びし、先生の研究成果を聞いて、最終的には結論は出ませんでしたが、平行して4社(アクシスソフト、コクヨ、IBMBCS、リンク&モチベーション)の事例をまとめていきました。
2.先進4社見学事例比較
見学事例については、移転・改装の課題とねらい、オフィスコンセプトと経営戦略の関係、やったことで実現できたものと実現できなかったもの、企業の経営戦略への影響、ステイクホルダーへの影響という観点で同じ質問をしました。その四つの事例をまとめた成果として、そこで分かってきたことがあります。
3.ホワイトカラーの生産性
もう一つ、先ほどお話しした関西学院大学の古川先生の『「創造的オフィス管理」新時代のオフィスとホワイトカラー』という本を手に入れたことから話が始まり、先生においでいただいたことがあります。
(1)ホワイトカラーの生産性への影響要因
古川先生のポイントは、例えば時間的節約度(効率性)への貢献では、OA機器(IT機器)の充実度、オフィスの最適配置度、リフレッシュスペースの充実度、オフィスでの改善点実現度、疲労を感じさせないオフィス度など、オフィス環境の相関性がかなり高くなっています。
しかし、アイデア創出度(有効性)では、オフィス環境はあまり関係がなくなり、仕事への自己能力貢献度、学習機会の充実度、自由な雰囲気での意見交換度などが高くなってきます。会社への帰属意識(有効性)への貢献でも、会社の理念に対する共感度、自己能力の貢献度、企業のイメージなどが上位に来て、オフィスの問題はほとんど後ろに来ています。働く意欲(有効性)、これはかなりモチベーションにつながりますが、ここにおいても自己能力の貢献度、学習機会の充実度がホワイトカラーの生産性には非常に影響が大きく、オフィス環境はそれほど上に来ていません。
(2)オフィス環境・能力開発と企業業績・発展との関係
これをまとめると、オフィスワーカーにも2種類あり、定型業務をしているオフィスワーカーと、創造的業務をしている知的ワーカーといわれる部分では効率性についてかなり違いがあります。定型業務では、オフィス環境、ITの環境はかなり効率性アップに影響しますが、創造的業務に携わる知的ワーカーにとっては、オフィス環境の改善や機器の充実は二の次で、アイデア創出やモラールアップに対するプログラムや施策が業績に貢献し、長期の維持発展につながるというのが古川先生の結論でした。ですから、オフィスをどれだけよくしてもあまり関係ないということが一つあります。
(3)オフィス環境改善の効果
ところが、同じ先生の研究の中に、オフィス環境改善の効果を、大規模改善、中規模改善、全くやらなかった場合(期待効果)について聞いたところ、会社への満足度の向上や会社のイメージ向上には、中規模改善ではほとんど効きませんが、きちんと大規模改善をやったところにはそれなりの効果があるという結果が出ています。
同じ調査で、具体的に何を変えたらどこがよくなったかという相関性も聞いています。
この二つの調査分析をまとめると、オフィス環境改善はホワイトカラーの生産性向上の必要条件ではあるけれども十分条件ではないという結論に至ります。定型業務の効率アップには効果がありますが、創造的業務の生産性向上には、「能力開発の仕組み」「学習機会」「経営ビジョン」など、会社の方向性、考え方がしっかりしていることのほうが重要です。また、オフィスの環境改善は、社員の帰属意識や会社のイメージなどに効果があり、創造的業務従事者のモラールアップにもつながります。
創造的業務の生産性にオフィス環境改善がより有効になるためには、まず経営者のオフィス環境改善の姿勢(ビジョン)が必要です。それから、社員参画型のオフィス環境改善活動も有効です。そういう方向性を出したうえで、局所的レベルから全社レベルに広げていきます。部分最適から全体最適にするには、その前に全体の方向性が明示されていなければあまり意味がありません。
したがって、ファシリティマネージャは、社員の創造性、知的能力がフルに発揮できるソフト面のサポートにより注力すべきです。特にワークスタイルが変わるような、例えばフリーアドレスといわれる固定席を持たないやり方を実践したところは、その後のサポートがうまくいっていないと1年で8割がだめになります。
(4)オフィス環境改善と生産性への相乗効果
〜古川レポートを参考にした当部会のアプローチ〜
この二つの研究から、オフィス環境改善は、会社に対する満足感(帰属意識)、会社に一層いたくなる(快適性)、会社のイメージの向上(ブランディング)にかなり相関性があると考えられます。したがって、オフィス環境の改善をすると、これからのオフィスの環境の焦点となる、ワークプレイスデザイン、エルゴノミクス、ファイリング、情報技術を通じて、社員のモチベーションを変えていくことにもつながる側面もあります。
(5)今後のアプローチに関するひとつのアイデア
この調査は10年前のデータを基にしており、今のIT環境は想像もつかなかない時代だったので、今の環境において同じ調査をするとまた違った要素が出てくるのではないかと思います。FMソリューションの会社の考え方では、ホワイトカラーの生産性は、ワークプレイスのエンジニアリングという物理的な環境を変えるだけでなく、ヒューマンリソースエンジニアリング、能力開発の仕組みや会社の方向性というソフト的な環境も同時にやっていかないとうまくいきません。この二つが生産性にどうつながるかということを考えていかなければならないのではないかと思います。
4.オフィスワーク生産性研究会 2003年度活動から見えてきたこと
先ほどの4社の例で出てくる共通点があります。
まず、オフィスがビジネス活動(受注機会の創出)の場になっています。オフィスを変えることによって、どの企業も受注の機会が増えてきました。お客様を呼びやすくなり、その場所で説明やプレゼンテーションを行うことによって、お客様のその会社に対する好感度、ブランディングイメージが上がってきて受注機会につながっています。当然、企業ブランド向上には寄与しています。また、少なからず「社員のモチベーション」につながっています。ただ、これをどう維持していくかがキーだと思います。
もう一つ、4社に共通することは、もっとITを使いこなしてさらに上を目指そうという姿勢があることです。それは、この4社はすべて経営トップがオフィス改革への明確な理念と指針、フィロソフィとビジョンとディレクションをきちんと持っているからです。私はこれがいちばん必要なことだと思います。それがあって部分最適が成り立つのであって、それが全体最適になっていくのです。
さらに、簡単な言葉でいうと「かっこいいオフィス」は社員が胸を張れるのです。ほかの例で、金沢の小さな営業所をがらりと変えて、休みの日にお父さんが子供と奥さんを「これはおれの働いている場所だよ」といって連れてきたら、家族にとっても「お父さんは素晴らしいところで働いているのだ」という感じでモチベーションが上がりました。
古川先生の調査データを我々でディスカッションした中では、モチベーションにもっと焦点を当てるべきだという議論がありました。ただ、調査データは有益ですが、少し古いので、これをオフィスだけでなくワークプレイスの変化を反映してもう少し研究する必要があると感じています。
5.2004年度の活動
今年度の活動は「オフィスワーク生産性研究会」という名称から、オフィスにとらわれすぎたのですが、ワークスタイルが変わることによって働く場所も変わり、必ずしもオフィスだけが働く場所とは限りませんので、「ワークプレイス研究会」という名前に変えようと考えています。
これは、「働き方の変化」を視点に入れた未来指向のワークプレイスを研究します。一つは、働き方も会社が強いる働き方ではなく、個人がどういう働き方をしたいか、自分のために働く視点では、ワーク・ライフ・バランスです。働くことと自分の生活、趣味、生き方のバランスからワークプレイスの在り方を中心に置いていきたいと考えています。
実はアメリカでは10年ほど前から、このワーク・ライフ・バランスをきちんとやると会社の業績につながるという動きが出ています。NHKの「クローズアップ現代」の「あなたの働き方が変わる」というシリーズで、アメリカでは今、ワークスタイルの変化の典型的な例を二つ挙げていました。一つは、徹底的なアウトソーシングでコストを下げて利益を上げるパターンです。
もう一つは、逆に社員の雇用を中心とする会社です。ここは、例えば子供をお持ちのかたは子供さんと一緒に働ける環境を作ったり、フィットネスセンターを造って働いたあとに運動ができたりします。働く環境をよくして正社員を増やして長く働いてくれることが、その会社にとって能力のアップにつながり、顧客の満足にもつながります。その代わり、給料はそれほど高くありません。これはワーク・ライフ・バランスの一つの形であり、そこがこれからのポイントだと思います。
日本人は、江戸時代は殿のため、明治時代の富国強兵の時代はお国のため、太平洋戦争では天皇陛下のため、戦後には会社のために働いてきて、自分のために働いたことは一度もありませんでした。そろそろ我々は自分のために働くという観点から、ワーク・ライフ・バランスを考えてもいいと思います。そうなってくると、いかにゆったりと働くかというスローライフ実現のためのワークプレイスがどうあるべきかが問われてきます。それには当然、情報技術を使ったワークスタイル、ワークプレイスが必要になってきます。
そういう観点から将来像をどうするかは、まだよく分からないので、事例研究を中心とし、このような視点でオフィス、ワークプレイスを構築した事例、「変化する働き方」をサポートするサービス機能など、海外も含めて事例と理論を研究していきます。
もう一つのポイントはやはり生産性です。ホワイトカラーの生産性は、FMソリューションで研究しておられるので、その成果を反映できる形をつくりたいと思います。成果物は次世代のワークスタイル、ワークプレイスの調査報告書として発信していきたいト考えています。さらに、新たな生産性の指標を作ったらどうかと考えています。
「定年後私は何をする人ぞ」というサラリーマン川柳がありますが、日本のサラリーマンのほとんどがその形です。それを、やはり定年前に「私は何をする人ぞ」をきちんと考えてほしいということです。
最後に、実際のオフィスの例をご紹介します(コクヨ「Eciffo」より)。Muzakというアメリカの音楽ソフトを配信している会社は、非常にユニークな環境で仕事をしています。サンマイクロの場合は、ICカードのようなものを入れるとどこでも仕事ができる環境を社内で実験しています。もう一つは、デンマークのコペンハーゲンでは、ユナイテッドスペースという貸しオフィスの例があります。ワーク・ライフ・バランスで働き方を変えていくということでは、北欧がいちばん進んでいる気がします。また、ユナイテッド・エアラインのレッド・カーペット・クラブは、空港へ行けば仕事をする場所があります。
要するに、今までは仕事のあるところに人を集めるのがオフィスでしたが、これからは人がいるところに仕事を持っていく発想が、ワーク・ライフ・バランス、スローライフにぴったりします。今はすべてがそうはいきませんが、次世代といわれる知的ワーカーが多くなっていくと、人のいるところに仕事を持っていく発想がだんだん強くなっていくのではないかと思います。
■ 研究発表2
「eビジネス時代のビジネスモデル評価法開発研究会」
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荒武 謙一郎 氏 (株式会社管理工学研究所 研究員) |
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坪本 裕之 氏 (東京都立大学 大学院 理学研究科 地理科学専攻助手) |
| 関係資料(pdf/242KB)→ |
1.ビジネスモデルの定義
まず、ビジネスモデルの定義をしたいと思います。もちろん企業や組織は経営目標を達成させるために戦略を立案するわけですが、その戦略を実現するうえで、構造と遂行体系が効果的かつ効率的に作用する仕組みがビジネスモデルであると定義しました。仕組みであるからには、その仕組みが有効に作用しているかどうか検証する必要があります。
そこで、私どもはビジネスモデルの評価法の構築を試みました。
2.ビジネスモデル評価法を構築する目的
当初の目的は2点あります。ビジネスモデルはとても多様なもので、同じものが二つとないという性格を持ちます。その無二のビジネスモデルを評価する枠組みについて、汎用性を持たせたいと考えています。
1点目に、多様という点では、産業間、業種間での比較を可能にすることです。もちろん産業間、業種間でビジネスモデルは比較できないほどとても多様化したものですし、例えば同じ自動車産業の中でも企業間での生産システムも、それを取り囲む経営システムももちろん違ってきます。そうした多様なビジネスモデルを横断的に評価するうえで、まず「フレーム」を作成しようということが一つめのねらいです。
2点目に、中小企業でも容易に導入できる点を重視しました。これまでのコンサルタントの市場の中では、どちらかといえば中小企業が外されてきた傾向にありますが、中小企業でも容易に導入できることを目標にしました。そのときに注視すべき点は、評価項目と評価項目の間の関連性を容易に簡潔に把握できる枠組みが必要なのではないかという点です。そのフレームに基づいて簡単に把握し、評価できる「テンプレート」の作成を重要視して評価法の構築を考えました。
3.ビジネスモデル評価法を構築する際の課題
その課題として、昨今の企業の経営課題を2点大きく考えました。それは、経営の独自性を高めることと、もう一つは持続的発展性を向上させることです。ビジネスモデルが多様なのは、ビジネスモデルというものは偶然性が積み重なった結果であるというアプローチのしかたがあります。ただし、その偶然性は何度も起きるものではなく、それを組織的に連続して起こさせる力が必要です。これを「組織的創発力」と名づけて、運、偶然性を味方につける組織的な力の育成が今後重要になると考えました。それらを評価するためには、以下の3点が重要になると思います。
1点目は、組織的な事前合理性と事後合理性の獲得です。もちろん戦略を立てるからには経営の目標が必要で、それに向かう事前の合理性がまずないとビジネスモデルは存在しません。それにプラスして、創発性を力に取り込める事後評価、事後合理性が今後必要になります。そのためには事前評価とともに、これまで自分たちがしてきたことの事後評価が一つ重要なポイントになります。
2点目に、その事前評価としては「予測モデル」、事後評価としては「評価モデル」という二つのモデル体系が考えられますが、そもそもこの「予測モデル」と「評価モデル」は違うものであるという認識があります。ただし、事後合理性と事前合理性は一連の企業行動の結果としてあるもので、それを二つの異なるモデル体系で結びつける試みもこれから取り組まなければならない課題と考えています。
3点目に、こうした一連の企業行動は特に定性的説明が行われる傾向が強いのですが、経営の判断に用いるためにはやはり定量的評価も必要で、その定量的評価を行う枠組みを取り込む必要があります。この3点を評価法の構築には重視しました。
4.ビジネスモデルの構成要素
そして、実際にビジネスモデルの評価法を構築していきます。そこで重要な点は、戦略・構造・遂行体系の3点です。そして、それぞれ戦略・構造・遂行体系の三つのモデルをさらに細分化し、11の評価項目を設定しました。
まず戦略の点では、①市場:自社がターゲットとする市場は何か。②顧客:その市場における顧客はだれか。③チャネル:販売経路に関するもの。④商品・サービス:どのような価値を商品・サービスを通じて提供するか。⑤競合:市場における競合状態はどうなっているか。
構造の点では、⑥組織:戦略を効果的に実現する組織構造になっているか。⑦人材と企業文化:社員のスキルや機運は戦略と合致しているか。⑧取引先:自社以外の例えばアウトソーサーやビジネスパートナーの協力は必要か。
遂行体系の点では、⑨プロセス:最適化されたプロセスとなっているか。⑩システム:プロセスを支えるITインフラは構築されているか。⑪ファシリティ:戦略・構造に伴ってファシリティは適正化されているか。
こういった構成要素を具体的な評価項目として設定しました。
5.ビジネスモデルにおける評価
11の評価項目について、どのように評価するかが次の問題となります。私どもが考えた評価の点は大きく2点です。一つめは評価の軸である、現状のビジネスと目的となる将来ビジネスの間のギャップをまず測定します。それが、改善内容の評価になります。2点めとしては、現状ビジネスと競合他社の競合ビジネスとの間のギャップです。これは優位性の評価という点になります。もう一つ重要な点が、現状ビジネス中でもビジネスモデルと実行されているサイクルの間の差異、これは実行のための内容の確認という作業がもう一つ必要です。具体的にはこの3点の作業が必要になります。
6.ビジネスモデル評価フレーム
先ほどの11の構成要素と三つの評価軸という点で、このような評価フレームを作成しました。縦がモデルで、戦略・構造・遂行体系、そしてその隣に11の評価項目があります。横にモデル、構成要素があり、現状のビジネス、評価対象のビジネス(将来、競合)、そして、これ指標化するための成功要因(CSF)、さらには主要評価指標(KPI)を設定しました。これがフレームの形で、これそのものがテンプレートとなります。
白のますの部分に、事例に応じて書き加えていくことになります。これを書き加えていく段階で、まず縦軸として戦略、構造、遂行体系の整合を確認します。つまり、成果が上がらない課題を発見、抽出することができる利点があります。そして、横を書き加えていくことによって、将来モデルの改善内容を確認できると同時に、競合モデルとの優位性の確認ができます。そして、CSFとKPIを具体的に設定することを通じて、現状と将来、現状と競合との違いを定量的に評価することが可能になります。
7.事例によるビジネスモデル評価フレームの検証
実際の事例をご紹介します。
対象顧客は、中堅のドラッグストアです。ドラッグストアとして今は定番なのですが、調剤薬局を入れてドラッグの売上もシナジー効果で向上を図ろうと考えておられます。調査した内容は、まずドラッグストアの本部に、併設にどのような期待を持っているかをお聞きすることと、実際に併設されている店舗と併設していない店舗に伺い、このフレームに従って現状をお聞きし、製品別の売上データ、来店の顧客データ等の定量データもいただきました。
まだ精査が完全には済んでいないことと店舗面積の違い、業界全体の売上など攪乱要素があり、それらを少し差し引いてみても併設効果のシナジー効果があまり出ていないのではないかという仮説を持って我々はインタビューに伺いました。その詳細は守秘義務等ありますので、ここでは控えさせていただきます。
8.調査結果サマリ
ここでの目的は、要するにこのフレームがこういう問題に対して適応できるかということを検証することです。ということで、このフレームを持って本部(経営陣)と店舗でお話をお聞きしました。その中で、例えば本部がいずれメーカーから一括仕入れして、在庫も減らしたいと考えているときに、店舗のほうも指導員のかた(元店長)の指導を得て、「あと1回お客さんに出したらこれは仕入れなければいけない」などと薬の欄に書いておくなど、仕入れのタイミングを工夫されています。また、商品・サービスでは、調剤に来られたときに、ついでに老人用の紙おむつも買っていくという要望がけっこう多かったりして、店舗で商品の置き場を工夫されていることもあります。
ここでいちばん申し上げたいことが、本部がこうしようというときに、店も大体戦略は合っているのですが、特に構造から遂行体系にいくに従って齟齬が生じています。例えばプロセスの中で、カウンセリングしたいということを本部は望んでいるのですが、一般に薬剤師不足で、調剤薬局に管理薬剤師が詰めなければいけないのですが、そうするとドラッグのほうに回る時間がありません。実は本部のほうの管理体系で、薬局に詰めていなければいけないことがあってなかなか時間が取れないことが、シナジー効果が出ない理由ではないかと考えています。
9.事例による検証結果
短期間、1回当たり約2時間のインタビューを3回行い、その差異のようなものを確認することができました。実際にお聞きした薬剤師のかたは、若い女性で大学を出て2〜3年しかたっていない方で、市場、顧客のあたりは指導員の方が話されましたが、具体的な構造や遂行体系に行くに従って、店員さんがしっかり答えられるということで、この聞き方、このフレームの整理のしかたが有効ではないかと思っています。
中小企業でも容易にビジネスモデルの評価ができると申し上げましたが、実際この企業は資本金が約4億、従業員も正社員で500名、パートを入れると2000名ほどのけっこう大きな企業なのです。しかし、そのぐらいの企業でも取れるデータはけっこう限りがあり、中小企業に関してはまた後で述べます。
10.作成ビジネスモデル評価法のメリット
物事を進めていく上でPlan・Do・Seeというサイクルがありますが、まずそのビジネスモデルをどう整理するかというPlanのときに、要素の抜け・漏れがうまく発見できるのが一つのメリットです。Doのところでは、実際に目標管理がきちんとできているか、何を目標にしていくかが整理できます。
いちばん中小企業にとって有力だと思うのは、Seeの部分です。実際に2000年9月の段階で松川さんが結論を出されているのですが、結局取りやすい指標は内部指標で事後指標であるBS、PL、キャッシュ・フローです。この方法が有効なのは、そういう財務データを使った分析が有力なのではないかと思います。
改めて、ビジネスモデルのフレームについては、3C、7S、ポーターのファイブ・フォーシーズ、あるいは最近はやりのバランススコアカードなどいろいろあると思いますが、これは先ほどのエンタープライズ・アーキテクチャと少し似ていて、エンタープライズ・アーキテクチャの場合、戦略に対するところが業務で、データ、アプリケーション、テクノロジーとなっています。この分け方は、大きく見て三つという割合分かりやすいカテゴリーに分けて、細かく言うと11個という細かい区分けになっています。その辺がかなり整理するのにいいものではないかと思います。
昨年の11月7日に、ここの総会が行われたときに我々今年の課題を二つ申し上げましたが、一つにここで言った11の構成要素の関係を検証しようという話をしました。もう一つは、評価手法の妥当性をもっとよく考えようということを今年の課題としました。1点目は割と簡単に結論が出たのですが、これらの指標についてバランススコアカードで整理してみると、例えば人材育成から業務がよくなって、お客様に対してサービスがうまくいって売上に結びつくというようなことが割と整理できることが改めて確認できました。
もう一つの評価指標の妥当性では、今、個別に検討を続けているところですが、これは本当に個別にやるしかなくて、例えば一般に小売業だったら、ごくごく一般的にいえば、1人1年当たり2000万上がっていれば普通で、3000万いけばいい店、あるいは粗利のうちの3分の1は人件費につぎ込んでもいいとか、あるいは業種統計を見て一般のこの業界のものと比べてではどのぐらい行こうという目標の決め方など、いろいろあるかと思います。
幾つかこれらのフレームを使って、昨年はデルとそれ以外ということも発表させていただきましたし、この研究会の中で、以前アクシスソフトの野沢さんというかたが派遣業者向けのスタッフのマネージメントシステムを解析されたのですが、このフレーム自体の有効性という意味ではかなり検証はできていると思います。今回はドラッグストアの例でしたが、業種には限りがありませんので、ここでいったん中締めとさせていただきたいと思います。
■ 研究発表3
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「EAI研究会」
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濱田 隆一郎 氏
(アイ・ビー・エム ビジネスコンサルティング サービス株式会社 パートナー/EAI研究会 ナビゲーター)
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| 関係資料(pdf/592KB) → |
1.研究会の目的・テーマ
まず研究会のテーマとしては、今後日本企業が全体最適をやっていかなければいけないだろうと考え、EAIというツールが比較的安価に早くできる特徴を持っているという認識のもとに、その有効性をどのような形で知らしめていくかという中で、費用と効果をどう測定したらいいかというフレームワークを構築しようというテーマで行ってきました。EAIは言葉では聞くのですが、どのように使えるのかというところを説明していきたいと思います。
2.全体最適化
全体最適と呼ばれている中で、経済産業省が出している「情報経済アウトルック」という白書には、4段階のステージがあります。ステージ1は「ITの不良資産化企業群」、ステージ2は「部門内最適化企業群」、ステージ3は「組織全体最適化企業群」、ステージ4は「共同体最適化企業群」です。
日本の上場企業の3500社に対してアンケートをし(回答約600社)、結果として、当然共同体のほうはまだ2%程度で、非常に少ないですが、共同体をやっているところが日本でもあります。多くのところ、66%が部門内最適化企業群で、まだ全体最適ができていないという現状です。
もう一つ、そのステージにいる会社が将来に向けて自社の景気感を、「上向き」「上向き将来不透明」「横ばい」「悪化」という四つのカテゴリーに分けて答えています。それを見ると、当然、ステージ1の会社は非常に景気感は悪く、それに対してステージ4の会社では景気感がよいと見ています。ステージ3に関しても、半分ぐらいは今はよく、そのうちの半分以上はまだ先が見えると答えています。全体最適を行っていくことにより、企業の中でも自社の環境に対しての対応能力もついてくるのではないかと思っています。
3.経営とITシステムの融合
経営とITシステムの融合は、もともと1970年時代、メインフレームの時代からいろいろな経営の課題に対して、経営情報のシステムを作ったり、コスト削減でダウンサイジングをしたり、BPRでERPを導入してきたり、Eビジネスをやったり、その時々にテーマを設けてやってきました。2000年になり、最近、全体最適という話になると、ビジネスの統合を目指した形でシステムとしてはインテグレーションという時代で、そこに対してまだ対応できていないということで、これからはそこに向けてやっていくのが方向性ではないかと思っています。
4.従来のマネージメントモデル
これまで各部門が計画に基づいて、その計画を実行するというターゲットを持って仕事をされてきて、自分の業績評価は自分の計画をいかに計画どおりに実行したかであり、ある物が売れなくなったときに在庫がたまっていたとしても、生産部門としては計画どおりの物を作ってきたという評価をされてしまうところが問題でした。
5.全体最適マネージメントモデル
今後の全体最適マネージメントモデルでは、基本的にはデータやプロセスをつなげるだけでなく、業務の連携が速くなる、リアルタイムになることは必要ですし、データが一つに統合されていくことも当然必要です。ただ、問題はそのあとに何か起こったときです。例えば何か売れない死蔵在庫が出てきたときにそれをどうセンスするのか、もしくは販売から見ると、現場のお客様がどういうものを買って、どういうものを買わないかというところをセンスし、その結果をそれぞれの関連部門に適切に適時に投げなければいけないし、それを受け取れる部門にならなければいけません。そこで、基本的には真ん中にデータをきちんと拾い上げて投げるような仕組みがあるマネージメントモデルが必要になってきています
6.マネージメントモデル実現アーキテクチャ
現在のシステムをそのマネージメントモデルに持っていくためには幾つかの手法があります。一つがERP型で、ERPを入れてそこを統合していこうというものです。ERPは、早くても2年、費用的には2けた億円かかります。逆にいうと、2けた億円の投資ができないところはなかなか入れにくいと思います。
もう一つがSI型、カスタムで全部造ってしまうものです。現在は少ないとは思いますが、まだカスタムで作りたいというところがあります。期間と費用は、ERP型とあまり変わりません。
さらにもう一つ、ミドルウエアとしてのEAIを使って既存のシステムを生かしながら、先ほどのビジネスマネージメントモデルに移行していくアーキテクチャがあります。この場合、期間的にはEAIシステムの導入を始めて、どこか一つのプロセスを改善して結果が出るまでは半年ぐらいかかり、次のところに行けばもう少し短くなりますが、基本的にEAIの場合には終わりがない、何かの改善をするとほかの改善が見えてくるという常に改善モデルになります。先日のセミナーでも5社のユーザー事例をご紹介しましたが、皆さん次から次へ改善をされていて短い期間で限られた投資の中で何らかの成果を挙げていけるということでは、期間的にも費用的にも比較的安くできるのがEAI型の特徴です。
7.実現手段比較
実現手段として比較してみると、いちばん大きな形の違いとしては、データとリアルタイム連携・統合に関して、EAIは疎結合密連携という疎結合型です。ですから、何かを入れ替えたり、何かを新しい物に取り替えたり、もしくは今ある物をつなげたりということに関しては柔軟性が非常に高いということです。
同じことが三つのやり方でできるのですが、基本的にはやはり迅速性、いかに早く成果を取り出すかということになります。経済性では、最終的に5年やればやはり2けた億円の投資になるかもしれません。ただし、それが2けた億円の上なのか下なのかというようなところの経済性です。柔軟性という意味では、今あるシステムをいかに生かしていくかということで、変えなければいけない部分はあると思いますが、今変えなくてもいいものは変えずにそのまま使っていける柔軟性が高いということはいえると思います。
8.現状ITシステム
このようなマネージメントモデルを作り、今言ったEAIで実現するにしても、それぞれのアプリケーションをいろいろな経営手法でつなげようということは各企業でされていて、サプライチェーンマネージメント、CRM、会計、マネージメント情報などをばらばらにやっていると、ITインフラストラクチャーも二重、三重の投資になってきます。これでは幾らEAIなどを用いてもコストを安くはできません。
9.共通ITインフラストラクチャー
そこで、共通インフラストラクチャーを入れます。このようにある意味でそれぞれのファンクションをレイヤー化し、その中できちんとやることをやっていき、アプリケーションが変わったとしてもうまくつなげるような方向性をやっていくところで、共通インフラストラクチャーをEAIの適用には使おうという話をしています。
10.ITマネージメント
今のようなアーキテクチャをいかに活用していくかというと、ここはEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)に近くなるのですが、ITマネージメントという形で標準化という作業を行い、その標準化したものを使うガバナンスを効かせていきます。しかし、部門ごとに最適化されたところは自負がありますから、標準化したものをなかなか使ってくれないのですが、そこをきちんと使っていただくことによって、先ほど言ったEAIのメリットを享受でき、それを持続できます。
11.効果項目
このようなことをシステムとして入れていこうとすると、大抵の場合、ミドルウエアの効果は直接的にかけたコストと直接的に跳ね返ってくるコスト、例えば保守が幾ら軽減される、かけていたインフラが幾ら減るという形のものばかりになるのですが、マネージメントシステム、モデルを変えることが基本にありますので、それ以外の効果もここで同じように取り上げていいのではないかということで、フレームワークの一端として考えています。定量的で間接的な効果、非定量的で直接的、間接的な効果まできっちり考えて、ここをいかに洗い出していくかをフレームワークとして作っていきます。
12.投資効果フレームワーク
これは、「費用とメリットの効果フレームワーク」というもう少し軟らかい言い方にしようかと思っていますが、左側に効果、右側に投資という形で、直接的なところはほとんどIT関連、間接的には業務関連と切り分けて表を作って、比較的分かりやすく説明していきます。この辺は各社でもいろいろやられていると思うのですが、それをこのような表形式でまとめ直してみました。
13.フレームワーク概要
まだ完成していませんが、例えば効果では、金額換算できる効果が出るところが◎で、それもフェーズごとにどこをやるかを考えながら、そのフェーズごとの効果が幾らかを表していきます。こうすると、一体どこにいつ何をやって、幾ら効果が出るかがある程度見やすくなるのではないかと思います。コストに関しても同じようにやっていきます。
企業では、先ほどの標準化やITガバナンスなどにかかるコストも、この表の中ですべて洗い出していき、言われたとおりに入れたのはいいけれども、思った以上にコストがかかるという見えないコストまで明らかにしていく、また見えないメリットも明らかにしていくアプローチをとっています。詳しい資料はBPIAのホームページに載っています。フレームワークは、年内を目標に仕上げられるように作業を進めています。
14.今後の活動方針
現在までの活動と資料の説明をしましたが、今後のテーマを研究会で議論しています。EAI研究会はあまりにも直接的な名前ですので、研究会の名称の変更をしたいと考えています。ただし、それも今後やるべきアクティビティに基づいて変えたいということで、今まだ案を練っている最中です。
EAIに関しては、日本の外資の大手ベンダー5社に入っていただいてやっていたのですが、EAI自身の説明はある程度できてきているのではないかと考えています。当然まだ知らないかたに対しての普及はやりたいと思います。ただ、それよりももう一つ先に新しいプロセス統合の技術に関しての研究会をやったらいいのではないかということで、今WEBサービスという技術を用いたSOA(サービス・オリエンテッド・アーキテクチャ)というものが世の中に出ていますが、それをどのようにしてビジネスに活用できるかというものをテーマにしようと今模索を始めています。もしご興味のある会員の皆様はぜひ参加していただきたいと考えています。
■ 研究発表4
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「勝ち組企業のBPI事例研究会」
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鷲見 研作 氏
(マイクロソフト株式会社 ビジネスプロダクティビティソリューション本部
エンタープライズビジネス部 エグゼクティブアドバイザー) |
関係資料(pdf/32KB) → |
1.はじめに
この研究会は、ワイエスマネジメントの岩佐様、アクシスソフトの大塚様、NECソフトの岡田様、アルゴ21の沢田様と私の5名のナビゲーターで運営しています。
本日は、末席に名を連ねている私のほうから中間報告という形で報告させていただくわけですが、本来であれば各ナビゲーターの皆様に今日私が報告する内容について了解をもらわなければいけなかったところ、全くそういう手続きを踏まずにここへ立っていますので、今日のお話はすべて私個人のまとめであるということで、誤り等々いろいろあるかと思いますが、あらかじめおわびしておきたいと思います。
2.実施済みの研究会
この研究会は、大成建設から始まり東急マーチャンダイジングアンドマネジメントまで5回研究会を実施し、事例という形の報告を各企業のかたがたからいただき、勉強させていただきました。
それぞれの企業について改めて詳しくお話はしませんが、簡単にご紹介しておきます。大成建設については改めて説明するまでもなく、大手ゼネコンの1社です。沖電気カスタマアドテックについては、沖電気工業のサービス部門を請け負っている企業と伺っています。日本容器包装リサイクル協会は営利企業ではなく、容器包装リサイクル法に従ってできた業界団体等の出向のかたがたで構成されます財団法人です。日本オラクルも改めてご説明するまでもなく、世界有数のソフトウエア会社です。東急マーチャンダイジングアンドマネジメントは、東急電鉄のショッピングセンターのテナントの企画・運営・管理等を業務委託されている会社と伺っています。
この報告では、これらの研究会を順を追って私のほうから紹介するのではなく、それぞれポイントを絞り、換骨奪胎してまとめ直した形でご報告させていただきます。
詳しくはBPIAの会員のホームページに、それぞれの研究会の議事報告、資料等がアップされています。
3.明確な目的
5社それぞれいろいろな業種、さまざまな規模の組織が集まってご報告をいただいているわけですが、最初に明確にいえることは、はっきりとした目的、目標を皆さんがお持ちであったことです。
大成建設については、建設業界はご存じのように構造不況といえるかと思いますが、その中でいかに業務の効率化を図って生き残るかという、ある意味で強い危機意識が感じられました。
沖電気カスタマアドテックについては、サポート業務ですから、障害発生率の低下や修理時間の短縮という明確な数値化できる目標をお持ちでした。
日本容器包装リサイクル協会については、まだ具体的なシステムの実装にまでは至っていないと伺っていますが、目的としてはITコストの半減や、長期安定的なシステムを築きたいなど、特にリサイクル法が変わることが予定されていますので、そうした変化にも柔軟に対応できるということを一つ大きな目的として掲げておられました。
オラクルは、日本オラクルに限らずオラクル・コーポレーションと申し上げていいかもしれませんが、経営のスピードアップや連結決算に伴う四半期開示を迅速に行うことが大きく取り上げられていました。決算から2週間以内で開示までこぎつけることを実現されているということです。
東急マーチャンダイジングアンドマネジメント(TMM)では、ショッピングセンターですから消費者ニーズ、ウォンツの多様化や変化のスピードについていくために、そうしたものに対応できるシステムを作る、導入するという目的をお持ちでした。
4.従業員に根ざした業務分析
そうした中でBPIということで申し上げますと、まず業務分析をどうするかが大きな問題になると思いますが、ここでは非常に印象に残ったところを二つ取り上げさせていただきました。「従業員に根ざした」というのは、「ユーザー視点に立った」と言ってもいいと思います。一人一人の思いを非常に大切にしながら業務分析をしていった事例として、大成建設と日本容器包装リサイクル協会の二つを挙げさせていただいています。
大成建設では、Powerプロジェクトを遂行しました。これは、バックオフィス部門の全員に自己の業務を書き出してもらい、それを分析したうえでどういうプロセスが最適であるかという形で進められており、結果として全従業員に情報端末を持ってもらって、本社、支社等全部含めて広域LANを整えて、インターネットを利用して、自宅でも海外でもネットワークをつないで仕事ができる形にしています。これは後で申し上げるリアルタイム処理につながるのですが、そのとっかかりとして一人一人の業務を綿密に分析したところが非常に印象に残っている点です。
日本容器包装リサイクル協会では、「わい(Why)がや」という言葉が印象に残っています。わいわいがやがやディスカッションをすることを33回も繰り返して、それぞれが何を問題としてどうしたいかということを、そういうものを通じて分析していったということです。そのときに「どのように」という視点から、「なぜ(Why)」という視点に重点を置いてディスカッションを進めて分析をしたという話が印象に残っています。
5.リーダーシップの重要性
同時に、リーダーシップの重要性も非常に重要な要素であることを再確認しました。大成建設の例で申し上げますと、「トップの強い意思と膨大エネルギーが必要」と、ご報告いただいた木内様ご本人がおっしゃっていました。実質的なIT戦略プロジェクトのリーダーである木内様ご自身が、かなり大きな権限を委譲されてリーダーシップを発揮したとおっしゃっていたことがとても印象的でした。
日本容器包装リサイクル協会では、33回もの「わいがや」ディスカッション、2.5時間から半日かかるディスカッションに、加藤様がリーダーでしたが、ご本人が全部に出席されて、言いたい放題に言うディスカッションを繰り返したところで本来まとまらないと思うのですが、それをある一定の方向にまとめていくのは、やはりかなり強いリーダーシップがあったのだろうと推察しています。
オラクルでは、GSI、グローバルSSCと呼ぶそうですが、難題を克服するに当たって本社からの強い意思、トップダウンが大きな意味を持ったと伺っています。いずれにしても、困難な時代に何かをやろうと思ったときには、やはり強いリーダーシップが不可欠だということを学んだ事例でした。
6.コスト削減
具体的なところへ入っていきますと、結果として何を求めるかということですが、やはり一つはコスト削減が大きな課題だろうと思います。
大成建設では、リアルタイム処理によるコスト削減を求めています。特に建設業界の実際の数字を挙げておられましたが、1997年ぐらいには80兆円ほどあった建設投資が、今年度は54兆円ぐらいまで減ってしまっているだろうという中で、つまり需要を喚起することが難しい中で、利益を上げていくにはコストが非常に需要だろうということで、コスト意識を非常に高くお持ちでした。
沖電気カスタマアドテックは、先ほどの関社長の話の中で同じ数字が出ていましたが、年間8.8万時間の工数削減と、3億円を超えるコスト削減があったと伺っています。この3億円は郵送費がほとんどと聞いています。
日本容器包装リサイクル協会でも、コスト半減という大きな目標をお持ちで進めておられますし、オラクルもグローバルSSCによってコストの大幅削減を実現されているという報告をいただいています。
7.情報共有
もう一つ、ITが得意とする情報共有という分野で、沖電気カスタマアドテックでは、年間2万5000件発行しているサポートに必要な文書を、デジタルデータ化して一元化して共有し、検索も瞬時に行えるという形でサポート業務の効率の向上を図っているという報告をいただいています。
日本容器包装リサイクル協会では、「わいがや」ディスカッションを通じて、部門間も含めて情報共有をし、互いの交流を図って業務の効率化に役立てようとしていると伺っています。
TMMでは、ポータルを利用してさまざまな情報を共有することで総合力のアップを図っていると伺っています。具体的にはショッピングセンターのテナントの情報、日々の売上から過去の交渉の履歴等を含めて全部共有することで、次にショッピングセンターのどの場所にどんなテナントが最適か、それぞれのベストプラクティスを見ながら次につなげていくような共有を行っていると伺っています。
8.スピード経営(or リアルタイム経営)
これから重要な点で申し上げますと、スピード経営やリアルタイム経営になろうかと思いますが、この点については三つ挙げさせていただきました。
大成建設のPowerプロジェクト(Point of Works for Enterprise Revolution)、日本語では「発生時点処理による企業革命」と言っておられました。POSシステムをこの業界に持ち込んで、リアルタイム処理を実現しつつ、コスト削減や経営戦略の徹底というところに生かしていくような形で伺っています。この実現のためにどこでもネットにつなげるインフラを整えるということで、一人1台の端末、インターネットを利用して広域LANを整備する形につながっているという話でした。
オラクルでは、GSI(Global Single Instance)を導入し、データモデルの統合とビジネスプロセスの統一を図ったということです。この目的としては四つ伺いました。経営意思決定の迅速化、情報収集のスピードアップ、組織の効率化、ITおよびサービス部門のサービスレベルの向上、この4点の実現のためにインテグレーションを図ったと伺っています。結果として、連結作業が13日かかっていたものが4日で済むようになり、開示まで1か月かかっていたものが2週間以内で済むようになったと伺っています。
TMMでは、テナントデータの正確な把握です。現在では日々のテナントの売上も端末を使って一人一人が見ることができ、そのほかにも履歴等いろいろなものがポータル画面上で見られることによって、全体としてのマーチャンダイジング力を向上させていくということで、これもある意味ではスピード経営ではないかと感じたところです。
9.経営戦略に根ざしたIT利用
全体として感じたこととしては、重要なのは経営戦略に根ざしてITを利用するということです。それぞれ全体最適を考えたうえで、コスト削減を実現する、カスタマー・サティスファクションを向上する、時代の変化に即応できる、スピード経営を実現する、社員力を何としても上げるといった戦略的目標があって、そこから初めてそれに基づいてITを活用している場合にうまくいくのだろうという印象を持ちました。
少しまとめてみますと、ポイントとしては「可視化」という言葉が私は大変気になりました。ITを利用して業務を可視化したうえで問題をえぐり出し、それを業務革新につなげる一方の道があり、他方で、標準化・柔軟性もとても大事なのだろうと感じています。これは問題をえぐり出したところで標準化へつなげていく道筋も同時にあろうかと思いますが、それによってITを戦略的に利用できる可能性が高まるだろうと感じました。それで業務革新へつなげていき、業務革新を進めていく中で問題が幾つかさらにはっきりとしてきて、また次のステップへ進んでいくという道筋が考えられるだろうと受け止めています。
キーワードはこの「可視化」という言葉と「標準化」や「柔軟性」で、これからITの問題を考える場合にはそれらが重要なポイントなのだろうと思っています。もう一つ、全体最適を常に視野に含めたうえでこうした問題をとらえていくことが重要な要素であるに違いないと受け止めた次第です。
最後に、それぞれの事例でお話しいただいた企業の皆様のやってきた背後には、ここにおられる会員の皆様のソフトウエアやツールなど、いろいろな物が利用されています。今日はそういう名前を一つも出さずに報告させていただきましたので、ここでおわびを申し上げておきます。あまりそういうソフトウエア、ツール等で強調点に差がありますとあとで怒られますので、あえて意図的に避けさせていただきました。
今後は、12月にはパイオニアの事例報告があり、1月にはヤマト運輸の事例報告が予定されています。ますますこうした全体最適をどう実現するかという方向に重点を置きつつ、事例をいただく企業の皆様がたにはお話しいただければと考えているところです。