1.本研究会の目的
本研究会ではベストプラクティス企業のオフィスワークの生産性をベンチマーキングするための指標を定義し、かつ、その指標を簡易的にベンチマーキングするためのツールを開発することを目的としています。そして、できればそのツールを一般のユーザーにネット上で提供したいと考えています。アウトプットとしては、@オフィスワーク生産性をベンチマークする指標の定義、Aデータを集めるためのベンチマーキングシートの作成、B評価のためのベンチマーキングツールの開発、C報告書の作成があります。そして、自社の指標とベストプラクティス企業のオフィス生産性にかかる指標をベンチマーキングすることにより、自社のオフィスワーク生産性の向上・改善の機会、ポイントが見いだせるのではないかと思っており、それが最終的な成果であると想定しております。
オフィスワーク生産性とは、議論の結果、ホワイトカラーの業務効率性と定義しました。それを調査するために、定量化できる指標をピックアップしようということで、
@社員1人あたりの付加価値額、
A業務スピード、
B間接部門の支援効率、
Cオフィスインフラコスト
の4項目を挙げました。これは暫定的なもので、これからいろいろな企業のデータを集めていく中で、あるいは我々のディスカッションの中で変わるかもしれません。この4つに絞った観点は、もちろん生産性、効率性を象徴的に測定できる指標であるということはいうまでもないのですが、収集が簡単な指標であるということも重視しています。当然、ユーザーの方でも自分の指標と比較するわけですから、そのためには収集定義が簡単なものがいいのではないかと考えました。
例えば、ある企業でホワイトカラーの生産性を改善したいのだが、どこが悪いのかわからないというときに、我々がネット上で提供するHPにアクセスして、自社のオフィス生産性をベンチマーキングする指標について入力していただき、業種、業態、売上等も加味しながら、我々が持っている企業データのそれと比較するわけです。そしてもう1つ、いわゆるベストプラクティスの企業と比較していく。それによって自社の改善・改革ポイントがわかるのではないかということです。
その比較のしかたですが、先程述べた4つの切り口でデータ総数との相対評価をします。ユーザーが自分のベンチマーク指標の数値を入れていくと、例えばオフィスインフラは55ポイント、これはベンチマーク企業との比較によるとCになる。あるいは間接部門の偏差値は高いから、これはAだと採点ができます。そこから、自分たちは何をしたらいいのか、漠然とではあってもわかるのではないかということです。ここで言えば、まず改善点として取り組むべきはオフィスインフラですね。このように、オフィスワーク生産性を上げるためには、例えばある企業ではオフィスインフラで改善余地があるかもしれない、あるいは業務スピードに改善の余地があるかもしれないということで、ウィークポイントと優先改善策がわかるのではないかという仮説を立てています。
では、オフィスインフラコストにかかる指標とは何なのでしょうか。1人あたりのオフィス賃料コスト、あるいは1人あたりの情報インフラコストなどがその指標にあたると思います。もちろんこれ以外にもたくさんあるのですが、簡易的に比較できるということが一つの主眼になっていますので、企業が調べやすい項目としてこの2つの要素を出しています。これらのデータを集めて1つのデータベースを作り、ユーザー側のデータと比較をしていこうと考えています。
業務スピードにかかる指標も非常に多くありますが、決算早期化の動きもあり、決算処理のプロセス・スピードが1つの項目となっています。ここでは決算業務の指示日をスタート、決算が承認された日を終了と定義しています。そのほか、1人あたりの付加価値額は計算してすぐ出てきますし、間接部門支援にかかる指標としては、経理・総務・人事それぞれのスタッフ1人あたりの全社員スタッフ支援数を出しています。これらの項目は、やはり容易に収集できるということを主眼において、研究会メンバー内で検討のうえ、決めたものです。
2.2001年度の活動結果(2000年10月〜2001年9月)
以上を踏まえて、今年の活動結果を時系列に振り返ってみたいと思います。昨年度は、オフィスワーク生産性の評価という非常に難しい課題についてもう一度見直し、どういうアウトプットを出したらいいのかという議論に過半の時間をかけました。そして先程述べたようなコンセンサスが固まり、それに伴ってベンチマークシートの内容を訂正し、第2次ベンチマークシートを作成しました。現在、その最新版のベンチマークシート・アンケートを実施しており、会員の皆様方にもご協力をお願いしているところです。
第2次ベンチマークシートは、先に申し上げたような指標を集めるためにエクセルでフォーマットを作り、データを入力すれば自動的に計算できるような仕組みになっています。すでにデータが集まってきていますが、企業によってかなりばらつきがあります。こういうところは今後の分析のポイントになってくるのではないかと思っています。
3.2002年度の活動予定(2001年10月〜2002年9月)
今年度は第2次ベンチマークシート、つまり先程申し上げたような項目をできるだけ多くの企業から収集して、ユーザーが比較するためのデータベースを作っていきます。当然、データをご提供いただいた企業自らがユーザーとなって比較ができますので、そういうメリットを宣伝して多くのデータを集めたいところです。データがないことにはより正確な比較ができませんので、どれだけデータを収集できるかというところにこの研究会の成否がかかっています。ですから、今年は広報宣伝活動を強化していくつもりです。もしアウトプットがうまく出れば、その後、この研究会を活かしたビジネスモデル(事業性)の検討をしたいとも思っています。
4.お願い事項
この研究にとってはデータの収集が命ですので、今申し上げたようなことを会員の皆様あるいは今日おみえになった皆様がメリットとして感じられるようであれば、ぜひデータの収集にご協力をお願いしたいと思っております。
1.ビジネスモデル評価の目的と全体像
あるシステムを導入するときには、従来型の工数ベースの見積もり、あるいは先に決まっているお客様の予算に基づいてソリューションを考えるといった発想が基本的だと思います。しかし、あるシステムを導入することで起こるビジネスモデルの変化を客観的に導き出せるものがあれば、それがモデル変化の価値になるのではないかと考え、その指標を開発し、それに基づいてビジネスモデルの評価をすることが
この研究会に参加した目的です。
ビジネスモデル評価の全体像としては、各事例を3段階に分けて評価するようなイメージで動いています。
第1段階は、ある事例をビジネスモデルとして評価視点を決めて評価を行います。
第2段階として、例えばシステム導入というトリガーによって起こる変化をとらえるための指標を設定します。
第3段階としてコストになおした評価を行い、そこで費用対効果の予測を立てます。それを客観的に出ている現実と比較して評価を行っていくということです。
まず、第1段階のビジネスモデルの分析を行うにあたっては、3つの評価視点を考えています。1つ目が戦略で、何をビジネスとするのか。2つ目が構造、ビジネスの構造がどうあるべきか。3点目が遂行、そのビジネスをどうやって遂行するか。そのような視点で各事例をこの中にあてはめながら、1つずつ検証していきます。
まず、戦略という視点では、そのビジネスがどういう市場で戦っているのか、国内なのか、海外も含まれているのか、あるいは地域的なものなのか、さらに、お客様は個人なのか法人なのかを見ます。これはその業種業態によってさまざまです。ほかにも仕入先、商品またはサービスそのもの、そしてその市場における競合などが何をビジネスにするかという戦略の視点の中で評価する項目です。
2点目の構造という視点の中では、組織の体制、そこで働く人材、企業文化、取り組み先という項目になります。例えばすべて内製する自前主義できたものを、あるビジネスモデルの変化によって一気にアウトソースにするというのは、企業文化そのものが変わる例です。また、営業の方が、今までの活動の中からむだな時間を省いてお客様との接点を増やすというものは、具体的な取り組みの1つの例だと思います。
3点目の遂行については、遂行のプロセス、遂行するための道具としての情報システム、ファシリティといった観点で評価をします。ただ、事例そのものがすべてこの視点で評価できるものとは限らないので、あてはまっているもので評価することになります。
次に第2段階として、ビジネスモデルの変更を確認できる指標を設定します。その際にベースとなっているのがBSC(Balanced Score Card)といわれるもので、財務面、プロセス、学習と成長、顧客という4つの視点から、指標として適切なものを選んでいます。例えば財務でいえば、活動時間を減少させることによって、費用を減らす方向でビジネスモデルが変わる。顧客でいえば、直行直帰によって空いた時間を顧客に回すことが売上の増大につながる。そういった視点をいくつか用意しながら評価をしていくという進め方です。
最後に、その設定した指標に従ってビジネスモデルのキャッシュフローを評価します。例えばシステム化では、初年度に何らかの投資が入って、そのあとランニングコストが出てきます。そこで、例えば費用の削減かもしれませんし、売上の増大かもしれませんが、何らかのかたちでプラスになる部分が出てきますので、それをキャッシュフローとして評価します。正確に言うと、設定した指標に従って、ビジネスモデルの変革の前後のキャッシュフローを評価するといったかたちです。
現在、各社で担当された事例を持ち寄り、今の評価でふるいにかけて数値を出すという活動をしています。まだ全体の母数は少ないのですが、各社の具体的な生の事例を取り扱っています。
2.事例紹介
(1)プロジェクトの概要
ある派遣会社のビジネスモデルを変革するプロジェクトについてご紹介します。ある技術者中心の派遣会社では、求人の引き合いはあっても派遣スタッフの確保ができないので、何とかスタッフの確保を円滑に進めて、効率的に回したいという希望を持っておられました。そこで登録スタッフを強化するための仕組みとして、ビジネスモデルを変革することにしました。時期的には約2年前からの話で、インターネットをほとんどの方が使える状態になっていましたので、インターネットを使った仕組みでシステムを構築しようと考えました。
システムの導入目的は
@派遣契約数を増やす、
Aニーズに合った派遣スタッフの登録者数を増やす、
B登録スタッフが他の派遣会社に移るのを防ぐという3点です。
全体で1年ほどかかっているのですが、構築の第1ステップとしては、まずWebシステムでスタッフの簡易登録をしました。この段階では簡単に登録できることだけを目的としています。第2ステップでは、登録したスタッフの詳細情報を取るための手段を講じました。具体的には、どんなスキルを持っており、どんな会社で何をしていたかという情報を入れていただきました。そして第3ステップでは、それをバックエンドのシステムとつなぎました。情報がたまっても、それを効率よく使えないと、かえって営業やアレンジをされる方の負担が増えてしまいますので、そういったことを解決するための仕組みを入れています。
基本的にはデータベースとWebの仕組みを管理して、そこにメールの仕組みを入れながら進めていきました。派遣スタッフから見ると、今までわざわざ足を運んで仕事を聞き、紹介されたら面接に行くという繰り返しで、その間は自分の今の仕事をストップしていましたので、非常に効率の悪い仕組みになっていました。その一部分でもWebとメールの仕組みで代用できないか、スピードアップが図れないかということを目的としています。
従来、この派遣会社では、まず面接を受けにきた希望者が登録業務をシートに記入して登録していました。そして、実際に企業からの要請があった場合に、その中でヒットする方を探し出してピックアップし、その方に電話などで個別に連絡をとり、引き合わせ手配をするというかたちで動いていました。これを少しでも効率化するために、導入後のフローを考えています。
システム導入後は、まずスタッフ自身が来社前にほとんどの情報を登録しますので、面接で細かいことを聞く必要はありません。企業からの派遣要請をシステムに登録しますので、ある程度のところまではシステムが自動的にピックアップ作業を行います。そのあと、例えばその個人専用のWebページあるいはメールを使って本人に通知し、勤務の可能状態を確認したあと、初めて営業の方が動くというかたちになります。その結果、前処理の部分と登録業務を省く効果が出るだろうという予測を立てて、導入の設計に入りました。
(2)第1段階−ビジネスモデルの分析
では、今の事例を各モデルにあてはめるとどういう評価になるのでしょうか。まず、戦略の中の市場という項目に関しては、このシステムを入れてビジネスモデルが変わったとしても、市場が国内の労働市場であることは変わりません。次に顧客という観点からいくと、派遣会社から見た顧客はあくまでも採用をしてくれる企業ですから、これもシステム導入前後で変化はありません。仕入先という点では、派遣会社にとっての仕入先とは潜在的に派遣スタッフになっていただける可能性のある方ですので、インターネットでシステムを構築すると、インターネット環境のない方が振り落とされます。もともとIT化に特化した派遣会社ですから、単に登録者数を増やすのではなく、ここで必要な人を絞り込むという効果が出ています。商品・サービスに関しては、企業ニーズに合った人材が不足していた状態がシステムの導入によってある程度改善され、人材紹介が円滑にできるようになります。競合に関しては、実際に会社で正社員として働いている方も競合になるでしょうし、他の派遣会社も競合になりますが、モデルの前後で変化はありません。
構造に関しては、組織について大きな変革があります。派遣会社の営業の方は個人でかなりの情報を持たれていて、頭の中のデータベースを有効に活用している業界だったのですが、システム導入後は人材情報がデータベース化されますから、情報がオープンなかたちになります。
遂行体系のところで、プロセスに関しては、社員の記憶や個人の手持ちのデータベースで管理されていた情報が一元管理されるようになり、オープンな環境になったことが大きな変化です。システムそのものに関しては、紙ベースで管理されていた履歴書やスキルシートが、はじめから電子データとして管理されるようになります。ファシリティに関しては、ファイルでの台帳管理がゼロになったわけではないのですが、データベースをパソコンで見られるようになりました。
(3)第2段階−指標の設定
次の段階は、実際にどういう評価項目を設定すればそれが証明できるのかという指標の設定になります。例えば、Web経由で登録窓口を開放したことによって期待される効果は、場所と時間の制約がなくなって登録者数が増大するということです。実際にこれを評価するためには、導入前後で1日あたりの登録者数がどう変わるのかを測定すればいいわけです。また、PC、インターネット経験者に登録を限定できるので、技術系のスタッフの獲得率が上がるだろうという期待に対しても、登録者のスキルシートを詳細に分析すれば結果が出ると思われます。
それから、スタッフ自身が情報登録とメンテナンスを行うことによって、新しい資格を取得したなどの自分の新しい情報をそのつど派遣会社に送ることができます。つまり、派遣会社としては常にスタッフの最新情報を取得できるという効果が期待できます。これはWebへのログインを見たり、更新頻度を見れば比較的簡単に取れる情報です。また、この期間は派遣の仕事はできないといった情報をスタッフに入れてもらえば、派遣会社の社員が調査する時間が削減されるという効果もあります。
紙ベースではなく、電子情報としてデータベース化されていると、登録情報・変更情報に対する即時マッチングが可能になり、企業からの引き合いがあったときに迅速に対応できます。これについては、レスポンスが上がることが評価項目に入ると思います。また、派遣会社からスタッフに対して最新情報を提供し、ほかの派遣会社にスタッフを取られる可能性が減るという効果も期待され、これはレスポンスの消滅率を計測することで評価できます。
派遣会社からスタッフへのアクションのログを一元管理する、つまりスタッフに対して派遣会社のだれがどういうアクションを取ったかを詳細に管理すれば、営業の業務効率が上がることになります。これにはABC分析が必要になってきますが、紙ベースの管理に比べて業務がどれだけ短縮されたかという指標で測ることができます。また、社員が個人的に情報を抱え込むことを防ぐ効果もあり、平均のスタッフ取り扱い数が増えれば、このシステムを入れた効果が出たといえます。
(4)第3段階−ビジネスモデルの評価
この事例は今年の2月に発表したものですので、まだキャッシュフローの評価にまでは至っていませんが、システム導入過程でわかった範囲では、まず登録者が1日20人以上になりました。これは紙ベースで管理していたときに比べ、数倍アップしてます。あとは、評価をするために契約者数やリピート数を指標として測っていくと、先程ご紹介したようなものがある程度具体的な数値を持って出てきます。
この事例では、派遣会社にWeb系のシステムを導入することによってビジネスモデルが変化し、それによって予測される効果について実際の数値を取っています。現在、さまざまな会社からある事象をトリガーとしてビジネスモデルを変更した事例を持ち寄り、そこに指標をあてはめながら検証していくという作業を行っています。
3.今後の取り組み
先程の事例ではまだ数値のところが曖昧なのですが、最終的には、評価指標に基づいて金額あるいは数値を出し、その仮説を使って投資回収グラフを作ります。例えば、導入費用として開発費で数千万、インフラ整備に数百万かかったとして、導入後、1日あたりのスタッフ登録者数が20人という状態が続けば、スタッフ1名が稼ぐ平均の粗利をかけていくことで、回収ポイントとその後プラスになる時点はすぐ出ます。そのようなかたちで、投資回収グラフを作って予測をしていくことができるということです。
実際に、例えばいくら利益が出たという情報が収集でき、評価することができれば理想的ですが、それが得られない場合は、例えば一般的に公開されている財務指標や全体の売上増などのデータを用いて、予測したものが正しいかどうかを見ることができます。そして仮説に基づいたキャッシュフローの変更と実際の具体的な数値を比較すれば、おそらく差が出ます。差が出るということは、評価の指標が足りなかったのかもしれませんし、本来は評価に入れてもしかたがないものを入れていたのかもしれません。次の研究会のフェーズでは、そういったところを各事例で洗い出していこうと考えています。
仮説から導き出されたキャッシュフローと実際の情報とを比較し、その過不足をなくしていくことによって、最終的には、この指標でビジネスモデルの変化を測れば、ある程度客観的な判断に基づいて評価できるというものを作り上げられると思います。我々のようなインテグレーターにとっては、事前に予測することによって、そのシステム導入の価値を決められるので、そこから見積もりを出せるのではないかとも期待しています。こういったことにご関心のある方はぜひ参加していただいて、事例をどんどん教えていただければ幸いです。