2001年度BPIABPIA総会・講演会・研究発表会・懇親会


 日時: 2001年11月9日(金)


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■ 講演


「やればできる! 営業業務生産性向上〜オリンパスプロマーケティング社のモデルケース事例〜」

石橋 正行 氏
(オリンパスプロマーケティング株式会社 総合企画室課長代理)

1.オリンパスプロマーケティング(株)のご紹介

 弊社はオリンパス光学工業の国内販売子会社で、設立は1950年です。本年4月1日、オリンパス販売からオリンパスプロマーケティングに社名変更しました。連結の売上高は1420億、社員数は1380人で、関係会社はサービス会社、リース会社、修理会社など、合計5社があります。
 デジタルカメラなどの映像情報事業、内視鏡を中心とした医療ライフサイエンス事業、半導体や液晶パネルの検査装置などを含む工業関連事業の3つの領域で事業展開しています。主な商品の弊社推定国内シェアは医療用内視鏡で約80%、医療ライフサイエンス用途での光学顕微鏡で約60%、液晶パネルのある一工程における検査用途の機器においては約90%に上ります。売上規模としては映像情報事業が4割、医療ライフサイエンスが5割、工業関連が1割程度となっています。
 弊社は単にオリンパス光学のメーカー販社にとどまるのではなく、マーケティングの展開によってソリューションと新しい価値を創造・提案する企業を目指しており、利益ある成長の実現に向け、営業の効率化以外にも拠点の見直し、物流の最適化、与信管理など、いろいろな構造改革のプロジェクトを進めています。


2.モデルケースの展開

 このプロジェクトは昨年の10月にスタートしました。プライスウォータハウスクーパース社のコンサルタントを受けて概要調査をし、11月にABC(Activity Based Costing)のヒアリング、その後ABCのデータベース作成、分析を経て、1月に改善施策の提案、そして2月から半年間かけて改善施策を実行してきました。8月にもう一度ABCのヒアリングをし、効果試算をしたうえで、10月から全国展開を始めたところです。
 今回のプロジェクトは内視鏡本部を対象としています。営業最大要員を持つ内視鏡本部でまず実施すれば、最も効果が出るだろうということです。大阪の販売部長が営業業務効率化のプロジェクトを手掛けていた関係で、大阪販売部の20名をモデルケースとしました(ただし、やはり少し遠いということがありますので、モデルケースとしては近場の方がいいのかもしれません)。
 まず、内視鏡販売本部で扱っている商品について簡単にご説明します。内視鏡は細長い管を口や肛門、鼻から挿入して観察するだけではなく、病変組織を取ってきたり、あるいはポリープの治療にも使われます。お使いになるのはもちろん医師です。手術用顕微鏡も扱っており、例えば脳神経外科など、細かい神経や血管をつなぎ合わせる手術で使用されます。また、小型の超音波診断装置も販売しています。このような装置を売っている営業部隊に対して、営業業務をどう効率化していくかという取組みです。
 ABCとは、積み重ねたアクティビティそれぞれに対して単価をかけ、ひとつひとつの業務のコストはいくらかを集計する手法です。モデルケースの対象は20人でしたが、1人あたりにしてアクティビティ情報を収集する詳細インタビューに4時間、定量インタビューに4時間がかかり、現場で全員に対してこの8時間を取ることには非常に抵抗がありましたので、セールス6人(内グループリーダー2人)、セールスサポートの女性2人の計8人に調査をし、それを20人に拡大推計しました。
 会議のコストとは、例えばこの講演会を会議だと仮定しますと、会場費がいくらで、講師料がこのくらいでというイメージが普通です。しかし、ABCの考え方では、時給1万円の方が100名参加していれば、100万円のコストがかかっているということになります。ですから、この講演には100万円の価値がないと、コストに見合わないということになるわけです。
 モデルケースでは518個の細かいアクティビティを出して分析したのですが、全国展開のときにはこれほど細かいことはできませんので、効果があり、施策に関係のありそうな35〜40項目に絞っています。現在、百十数人のメンバーに対してアンケートを取っており、大阪だけではなく、全国の業務でもコストを分析・集計しているところです。
 ABCの分析について説明しますと、518項目、20人分のデータがエクセルのピボットテーブルになっており、それをいろいろな切り口で分析することができます。単に電話の取り次ぎでいくら、あるいは会議でいくらかかっているという見方だけではなく、これはマーケティングの仕事なのか、セールスの仕事なのか、また、社内で行う仕事なのか、外でもできる仕事なのかといったように、いろいろな切り口で見ることができます。
 例えば、販売機能特性の高低と専門性の有無という切り口で見てみますと、いろいろな仕事の中で営業コア業務が約70%を占め、定型・単純業務は約2割です。もちろん全員が営業ではなく、管理職やセールスサポートスタッフ(内勤の事務職の女性)などもいますから、ある程度はあるにしても、定型・単純業務の部分はパート化・機械化できるだろうと分析できます。サポートで専門的な技術が必要な業務については、アウトソーシングや集約化という対応が考えられます。そして営業コア業務、準コア業務といった部分については、例えば販売店との話し合いで役割分担を進めることによって、私どもの業務コストを下げていこうという分析をしています。これは一例で、ABCのデータベースがあればもっと細かい分析ができますので、その分析結果を施策につなげました。


3.改善施策と効果

 分析結果から導き出された6つの改善施策は、ある意味あたりまえで、だれでも思いつきそうな項目です。今回このプロジェクトがうまくいったのは、バックにABC分析があったからだと思います。科学的に分析をしても、やはりだれもが考えるような施策になり、全国展開をした場合にはこれだけの工数が減り、これだけの人数が浮いてくるという説得性があるわけです。社内の人間だけではなく、外部のコンサルタントが入って科学的な分析をしたというところも、効いたのではないかと思っています。
 結果として、内視鏡本部のセールスを約20%削減できるという数字が出てきたわけですが、この人たちを辞めさせるということではありません。今回の取組みで浮いた人数を新規ビジネスに転換していこうということなのです。ですから、大阪でモデルケースを展開したときにも、「オリンパスの内視鏡本部では、将来的に新規ビジネスにこれだけの要員が必要だから、まず大阪でやって成功させなければいけない」という話をしました。自分たちが実験台になるということではなく、将来像を示して、「これを達成するためには大阪で実績をあげなければならないのだ」ということを理解させ、やる気を持たせています。
 効果として、全体の業務工数(時間)削減率は18.2%となりました。それぞれの施策で削減率は違っており、削減率の低かった項目もありますが、施策とは関係のない業務時間まで12.5%減っています。これは、現場の人たちがそれぞれコスト意識を持ったということではないでしょうか。施策を打っていない部分についても、これは本当に必要なのか、こんなに時間をかけてもいいのかといった見方をすることによって、このような効果も出てきたということです。次に、それぞれの改善施策についてご説明します。


(1)問い合わせ対応集約化・取次業務削減

 弊社では2000年6月、東京に内視鏡と顕微鏡に関する小規模なコールセンターであるオリンパスカスタマーインフォメーションセンター=CIC(Customer Information Center)を設立しました。しかし、その年の11月に最初のヒアリングをしたところ内視鏡では、問合せが大変少ない状態でした。その原因としては、まずは信頼性の問題で、いろいろと現場で苦労して対応しているのに、こんな難しい話はCICでは答えられないだろうという気持ちが現場に強くありました。もう1つはPR不足です。CIC側としてもどんな電話がかかってくるのか不安ですから、あまりPRをしていませんでした。そこで、まずCICの活用ということを考えました。
 最初に、大阪の販売部長が「とにかくCICに電話してください」と販売店にPRしました。問い合わせは大体が価格の話で、あるいは機器の組み合わせ、保険点数といった定型的な内容が多いのです。そういうことは、どんどん集約化することによってナレッジがたまっていきますので、即答ができるようになっていきます。そこで、多少CICへの電話が増えました。

 もう1つはボイスワープの導入です。CICは東京にあり、フリーダイヤルにはしていませんでしたので、電話代がネックになっていたのかもしれません。大阪にアクセスポイントを作ったところ、電話件数が増えました。電話代が安いのならかけようかということでしょうか。このボイスワープの設定も効いております。  また、携帯電話を全セールスに配布して、そのナンバーを販売店に公開しました。セールスも個人的には携帯電話を持っていましたが、会社としては支給していませんでしたので、販売店にそのナンバーを教えるか教えないかは個人的判断でなされていました。そこで、今回は会社で支給をし、セールスに用事があるときには直接この携帯にかけてくださいという指導をしました。そうすれば、会社の代表番号にかかってきた電話を取り次ぐ時間が激減するということです。セールスの方は、いつかかってくるかわからない、夜中や休日に電話がかかってきても困るということで、抵抗があったようですが、お教えしているのはビジネスパートナーである販売店さんですから、そういうことはありませんでした。実際には、むしろすぐつかまるという利便性があり、ずいぶん使われているようです。
 さらに販売店とのWebを利用したナレッジデータベースの共有を今後すすめていきます。

(2)社内意思決定プロセスの効率化

 これは、簡単に言うと会議をどうするかということで、実は、弊社は会議が多すぎるといわれていました。11月のヒアリングでは販売店の方からも話を伺ったのですが、その中で、会議が多いのではないか、会議をしているところに電話をつないでもらえないという話が出て、これは何とかしなければと手を打っております。
 社内会議の中身を見ますと、会議とその資料作成で全コストの11.6%を占めています。20人のメンバーのうち12%近くが会議とそのための資料を作っているということで、それだけで千数百万というコストになるわけです。また、その会議の39.1%がグループミーティングという内輪の打ち合わせで、これを何とかしなければいけないと考え、最も多いグループミーティングでパイロット調査を行いました。
 会議での発言内容を記録し、発言時間を計測した結果、議題に沿った本来の議論ではなくて、連絡や報告が非常に多いということがわかりました。セールスが延々と報告をしたり、その場で配られた資料を読んでいるために沈黙の時間がある。または、報告をしている間に、「いや、それは・・・」という教育的指導が入ってしまう。その間、ほかのメンバーは黙って聞いている。そういった非常に非効率な会議であることがわかり、これを改善するための対応をしました。現場では自分たちの会議がどういうものかという意識をあまり持っていませんでしたので、このログ取りは効果があったと思います。
 もう一つの仕掛けとして、1か月に4回あるグループミーティングで、どのような報告や議論があったのかを全員に書いてもらいました。何の話をしたのか。その内容はこの会議でやる必要があったのか。ほかで代えることはできなかったのか。これをもっと短くするにはどうしたらいいのか。それを集約化し、グループリーダーや部長に匿名で渡したのです。その結果、グループリーダーがこの会議の内容はすべて必要だったと思っていても、参加者としてはメールでもよかった、あるいはこの報告はこの場で聞かなくてもよかったということが結構ありました。参加者の記入したものを見てグループリーダーの気持ちも変わったようで、改善後は報告のたぐいはなくすようになりました。
 その結果どのような効果が出たのかといいますと、施策前の11月の会議では報告や日程説明などが40.3%、資料を読んだり考えたりして沈黙している時間が5.9%あったのですが、施策後には報告・連絡は17.6%に減り、議論が75%を占めています。会議が本来の目的である議論の場に変わっていったということで、その分、議長の進め方がキーになってきます。リーダーも自分がいろいろ言ってしまうとまずいのではないかと考えたのでしょう。ナンバー2に議事進行を任せて、自分はわきに座り、沈黙になりそうなときには話を振って対応するようになり、会議の雰囲気もずいぶん変わりました。
 グループミーティングの回数が月4回から3回ほどに減り、回数が減った分は非公式な個別打ち合わせに変わっています。ですから、リーダーに相談したり、あるいはメンバーどうしが何人か集まって話をするということで、回数自体は増えてきています。全員が集まって開く会議のコストが一番高いわけで、一人一人が積極的にかかわって意見交換したり、議論したりするのであればメリットがあるのですが、弊社においては参加するだけの会議が多かったのではないかと反省しています。

(3)バーチャルオフィス化による時間の有効活用

 弊社では、例えば商品の価格のマスターや仕様書、構成表、他社との比較、あるいは医用の症例等の文献、クレームの連絡など、さまざまなデータベースをロータスノーツで持っています。しかし、そのデータベースはイントラで、とにかく会社に戻ってこないと読めませんので、外に出ているセールスは夕方、社に戻って確認をしていました。そこで、モバイル環境を整えて、外からデータベースが見られるようにしました。先程、セールス全員に携帯電話を配布したと申しましたが、Super Doccimoというタイプで、PHSと携帯の両方が使えるようになっています。メールだけを見るためにいちいちパソコンを立ち上げるのは面倒だという声もあったので、メールはiモードで携帯に転送ができるような設定がしてあります。PHSは主にデータ通信用で、外からメールも読め、データベースも見ることができるようになったということで、社に戻らなくても、あるいは家に帰ってからでもメールが見られるということで、非常に効率的になりました。
 ポイントとしては、教育が大変でした。モバイル環境にするといって機械を配っても、使い方がわからないということで、全セールスに対して講習会なども開いたのですが、実際に使ってみるとうまくいかなかったことが多く、そのためにメンテナンスメンバーが何度も大阪に足を運びました。先程、モデルケースとしては近場がいいと言ったのは、この辺のこともあります。
 このモバイル環境が徹底されるにはずいぶん時間がかかっています。全国展開ということで全国のセールスに同じようなモバイル環境を整備するわけですが、そのためには今のメンテナンス展開要員では足りません。3〜4か月の期間限定でアウトソーシングしまして、ヘルプデスクを用意するようにしています。

(4)その他の改善施策

 電話では不在、かけ直しといったことがあるので、メールでやりとりをするようになったのですが、これも販売店さんの方が後れていて、なかなかできませんでした。ですから今回は効果があまり出ていませんが、メールをどんどん使っていこうというかたちで進めています。  また、先程お話ししたようにiモードに電子メールを転送できるようにしたのですが、携帯電話では表示できる文字数がある程度限られています。本題に入るまでが長すぎて途中で文章が切れてしまうということもありますので、緊急、あるいは返事が欲しいということが題名を見てわかるように、メールルールを徹底しています。ほかにも社内どうしのメールでは挨拶を省き、要件をまず書いて、必要な分はあとからつけるなど、非常に単純な話ですが、それすらできていませんでしたので、全国展開の前に社内で徹底しています。

4.懸案事項および要検討事項


 セールスの業務時間は弊社では比較的長くなっています。例えば20%工数が削減したから人を20%減らすということでは、結局自分たちの残業は減りません。それでは、仕事のやり方を変えたとしても、自分たちとしては何のメリットもないではないかということになりかねません。ですから、20%削減したら、その半分は自分たちの業務時間を短くする方に進めましょうという説明で展開しようと思っています。実労働時間の短縮につなげるようにしないと、現場の理解は得られないということです。
 また、ABC分析手法でとらえることができるのは時間とコストだけで、品質の差をとらえることはできません。時間が短縮できたとしても、ユーザーへの業務品質は大丈夫なのかという心配が現場からあがっています。売上が下がるなどの影響が出てくる前に、何らかの方法で品質の低下がないか、チェックをしていきたいと思っています。
 直行直帰の弊害としては、若年層からグループリーダーに相談できないということがあります。中堅社員は自分の時間が増える、家でメールが見られるのなら明日の仕事の段取りもできると非常に喜んでいます。しかし、自分で業務を組み立てていくところまで慣れていない入社3年目ぐらいまでの若年層は、実は不安がっているのです。今までは必ず社に戻りましたから、先輩にも相談ができたのですが、社に帰ってきてもだれもいないという状況になってしまいました。若年層のフォローはリーダーの同行セールスを増やすなどして対応をするようにし、また精神的なケアもしなければいけないと思っています。
 私どもはルートセールスですので、販売店の協力が必須です。メールのこともそうですし、CICの活用についても販売店の方にどんどん変わっていっていただかないと、実際の工数は激減しません。これについてはWin-Winの関係で、こうすれば例えば「データベースが見られます」「メールにすれば不在でも連絡が取れます」というメリットをご説明して展開していかなければいけません。私どもも、大阪の代理店にはかなり早いタイミングで取り組みについてのご説明をさしあげています。
 実際に人を削減するには、拠点統合の検討が必要です。現在、全国のグループの中には5人、3人といった小さいところもあります。そういうところでは、工数が20%減ったからといって、人を20%減らすわけにはいきません。結局はまたもとのような仕事をしているということになりかねませんので、少し統合して、グループの単位を大きくしたうえで、新規事業へのシフトをしたいと思っています。
 最後に、業務の質の変化の評価をどうするかという問題があります。この活動を通じて、かなりコスト意識が出てきましたから、そういう気持ちは大切にしなければいけないのですが、今の体系ではこれがなかなか自分の給与に反映されてきません。ですから、セールスの評価基準をどのようにするかという問題が出てきます。非常に短時間で回せるようになってきたけれども、一方で、今までと同じように時間をかけたやり方の方が売上が高いといった場合、そちらの方が評価されるということではいけないのではないかと思います。

5.まとめ


 今回、18.2%の効果が出たポイントは3つあると思います。まず、業務コストの可視化ができたということです。これはABCの最たるものですが、今、自分の業務にどれくらいのコストがかかっているのかということを、それぞれのセールスが認識しています。会議にしても、最初のころは遅刻する人がいて始まりが遅れるということがありましたが、ただ待っているだけでも例えば4〜5万円のコストがかかっているのです。それを認識させることによって、自分が営業で4〜5万円の利益をあげようとすれば、このくらいの売上にしなければいけないと考えるわけです。こういうところで、コスト意識を高めることができました。
 次に、現場の職制のリーダーシップです。大阪が実験台になるのではなく、大阪が成功しないと全国展開ができない、ひいては新規事業に人を投入することができないのだと説明し、とにかくやらなければいけないという気持ちにさせました。あるいは会議の実態を知らしめることによって「これはまずい」という気持ちにさせるなど、セールスだけではなく、リーダーや部長の意識も変わったことが推進のポイントになったと思います。


6.質疑応答


(Q) 私はシステムインテグレーターなのですが、コスト削減のご提案をした場合、ROIはどれくらいになるのかという話が出てきます。携帯電話を配布した、あるいはWebに情報を公開したといったところでは、逆にコストがかかっているわけですので、そういうインベストメントとリターンの関係はどうなったのでしょうか。

(石橋) もともとインフラ(ノートPC、データベース)の部分はある程度作られていましたので、新たな投資はあまり行っていません。ですから、Super Doccimoを配布したことによる通信費の増大部分をコスト増としてカウントしました。従来も当然セールスは個人で携帯電話やPHSを使用しており、通信費は使用明細により支給しておりましたので、こちらも若干の増加です。
 ただ、20%近く削減できますと、対象人員がかなりいますので年間数億円ほどが浮くことになります。そういう説明で、経営会議でも全国展開OKという回答をいただきました。ですから、人数で何人削減できるということではなく、その人を業務コストに換算していくといくらですと。一方で、コンサルタントにいくら、ハードの投資にいくら、通信費用がこれくらいかかるけれども、それでも差し引いてここまで行きますよということが言えれば、上の方には通しやすいと思います。
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■ 研究発表 1


「オフィスワーク生産性ベンチマーキング指標開発研究会」
塩田 徹 氏
(PwCコンサルティング株式会社 公共/サービスインダストリー事業部アドバイザリーコンサルタント)

1.本研究会の目的

 本研究会ではベストプラクティス企業のオフィスワークの生産性をベンチマーキングするための指標を定義し、かつ、その指標を簡易的にベンチマーキングするためのツールを開発することを目的としています。そして、できればそのツールを一般のユーザーにネット上で提供したいと考えています。アウトプットとしては、@オフィスワーク生産性をベンチマークする指標の定義、Aデータを集めるためのベンチマーキングシートの作成、B評価のためのベンチマーキングツールの開発、C報告書の作成があります。そして、自社の指標とベストプラクティス企業のオフィス生産性にかかる指標をベンチマーキングすることにより、自社のオフィスワーク生産性の向上・改善の機会、ポイントが見いだせるのではないかと思っており、それが最終的な成果であると想定しております。
 オフィスワーク生産性とは、議論の結果、ホワイトカラーの業務効率性と定義しました。それを調査するために、定量化できる指標をピックアップしようということで、
@社員1人あたりの付加価値額、
A業務スピード、
B間接部門の支援効率、
Cオフィスインフラコスト
の4項目を挙げました。これは暫定的なもので、これからいろいろな企業のデータを集めていく中で、あるいは我々のディスカッションの中で変わるかもしれません。この4つに絞った観点は、もちろん生産性、効率性を象徴的に測定できる指標であるということはいうまでもないのですが、収集が簡単な指標であるということも重視しています。当然、ユーザーの方でも自分の指標と比較するわけですから、そのためには収集定義が簡単なものがいいのではないかと考えました。
 例えば、ある企業でホワイトカラーの生産性を改善したいのだが、どこが悪いのかわからないというときに、我々がネット上で提供するHPにアクセスして、自社のオフィス生産性をベンチマーキングする指標について入力していただき、業種、業態、売上等も加味しながら、我々が持っている企業データのそれと比較するわけです。そしてもう1つ、いわゆるベストプラクティスの企業と比較していく。それによって自社の改善・改革ポイントがわかるのではないかということです。
 その比較のしかたですが、先程述べた4つの切り口でデータ総数との相対評価をします。ユーザーが自分のベンチマーク指標の数値を入れていくと、例えばオフィスインフラは55ポイント、これはベンチマーク企業との比較によるとCになる。あるいは間接部門の偏差値は高いから、これはAだと採点ができます。そこから、自分たちは何をしたらいいのか、漠然とではあってもわかるのではないかということです。ここで言えば、まず改善点として取り組むべきはオフィスインフラですね。このように、オフィスワーク生産性を上げるためには、例えばある企業ではオフィスインフラで改善余地があるかもしれない、あるいは業務スピードに改善の余地があるかもしれないということで、ウィークポイントと優先改善策がわかるのではないかという仮説を立てています。  では、オフィスインフラコストにかかる指標とは何なのでしょうか。1人あたりのオフィス賃料コスト、あるいは1人あたりの情報インフラコストなどがその指標にあたると思います。もちろんこれ以外にもたくさんあるのですが、簡易的に比較できるということが一つの主眼になっていますので、企業が調べやすい項目としてこの2つの要素を出しています。これらのデータを集めて1つのデータベースを作り、ユーザー側のデータと比較をしていこうと考えています。
 業務スピードにかかる指標も非常に多くありますが、決算早期化の動きもあり、決算処理のプロセス・スピードが1つの項目となっています。ここでは決算業務の指示日をスタート、決算が承認された日を終了と定義しています。そのほか、1人あたりの付加価値額は計算してすぐ出てきますし、間接部門支援にかかる指標としては、経理・総務・人事それぞれのスタッフ1人あたりの全社員スタッフ支援数を出しています。これらの項目は、やはり容易に収集できるということを主眼において、研究会メンバー内で検討のうえ、決めたものです。


2.2001年度の活動結果(2000年10月〜2001年9月)

 以上を踏まえて、今年の活動結果を時系列に振り返ってみたいと思います。昨年度は、オフィスワーク生産性の評価という非常に難しい課題についてもう一度見直し、どういうアウトプットを出したらいいのかという議論に過半の時間をかけました。そして先程述べたようなコンセンサスが固まり、それに伴ってベンチマークシートの内容を訂正し、第2次ベンチマークシートを作成しました。現在、その最新版のベンチマークシート・アンケートを実施しており、会員の皆様方にもご協力をお願いしているところです。
 第2次ベンチマークシートは、先に申し上げたような指標を集めるためにエクセルでフォーマットを作り、データを入力すれば自動的に計算できるような仕組みになっています。すでにデータが集まってきていますが、企業によってかなりばらつきがあります。こういうところは今後の分析のポイントになってくるのではないかと思っています。


3.2002年度の活動予定(2001年10月〜2002年9月)

 今年度は第2次ベンチマークシート、つまり先程申し上げたような項目をできるだけ多くの企業から収集して、ユーザーが比較するためのデータベースを作っていきます。当然、データをご提供いただいた企業自らがユーザーとなって比較ができますので、そういうメリットを宣伝して多くのデータを集めたいところです。データがないことにはより正確な比較ができませんので、どれだけデータを収集できるかというところにこの研究会の成否がかかっています。ですから、今年は広報宣伝活動を強化していくつもりです。もしアウトプットがうまく出れば、その後、この研究会を活かしたビジネスモデル(事業性)の検討をしたいとも思っています。


4.お願い事項

 この研究にとってはデータの収集が命ですので、今申し上げたようなことを会員の皆様あるいは今日おみえになった皆様がメリットとして感じられるようであれば、ぜひデータの収集にご協力をお願いしたいと思っております。
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■ 研究発表 2


「e−ビジネス時代のビジネスモデル評価法開発研究会」
野沢 英司 氏
(アクシスソフトウエア株式会社コンサルティンググループ)

1.ビジネスモデル評価の目的と全体像

 あるシステムを導入するときには、従来型の工数ベースの見積もり、あるいは先に決まっているお客様の予算に基づいてソリューションを考えるといった発想が基本的だと思います。しかし、あるシステムを導入することで起こるビジネスモデルの変化を客観的に導き出せるものがあれば、それがモデル変化の価値になるのではないかと考え、その指標を開発し、それに基づいてビジネスモデルの評価をすることがこの研究会に参加した目的です。
 ビジネスモデル評価の全体像としては、各事例を3段階に分けて評価するようなイメージで動いています。
第1段階は、ある事例をビジネスモデルとして評価視点を決めて評価を行います。
第2段階として、例えばシステム導入というトリガーによって起こる変化をとらえるための指標を設定します。
第3段階としてコストになおした評価を行い、そこで費用対効果の予測を立てます。それを客観的に出ている現実と比較して評価を行っていくということです。

 まず、第1段階のビジネスモデルの分析を行うにあたっては、3つの評価視点を考えています。1つ目が戦略で、何をビジネスとするのか。2つ目が構造、ビジネスの構造がどうあるべきか。3点目が遂行、そのビジネスをどうやって遂行するか。そのような視点で各事例をこの中にあてはめながら、1つずつ検証していきます。
 まず、戦略という視点では、そのビジネスがどういう市場で戦っているのか、国内なのか、海外も含まれているのか、あるいは地域的なものなのか、さらに、お客様は個人なのか法人なのかを見ます。これはその業種業態によってさまざまです。ほかにも仕入先、商品またはサービスそのもの、そしてその市場における競合などが何をビジネスにするかという戦略の視点の中で評価する項目です。
 2点目の構造という視点の中では、組織の体制、そこで働く人材、企業文化、取り組み先という項目になります。例えばすべて内製する自前主義できたものを、あるビジネスモデルの変化によって一気にアウトソースにするというのは、企業文化そのものが変わる例です。また、営業の方が、今までの活動の中からむだな時間を省いてお客様との接点を増やすというものは、具体的な取り組みの1つの例だと思います。
 3点目の遂行については、遂行のプロセス、遂行するための道具としての情報システム、ファシリティといった観点で評価をします。ただ、事例そのものがすべてこの視点で評価できるものとは限らないので、あてはまっているもので評価することになります。
 次に第2段階として、ビジネスモデルの変更を確認できる指標を設定します。その際にベースとなっているのがBSC(Balanced Score Card)といわれるもので、財務面、プロセス、学習と成長、顧客という4つの視点から、指標として適切なものを選んでいます。例えば財務でいえば、活動時間を減少させることによって、費用を減らす方向でビジネスモデルが変わる。顧客でいえば、直行直帰によって空いた時間を顧客に回すことが売上の増大につながる。そういった視点をいくつか用意しながら評価をしていくという進め方です。
 最後に、その設定した指標に従ってビジネスモデルのキャッシュフローを評価します。例えばシステム化では、初年度に何らかの投資が入って、そのあとランニングコストが出てきます。そこで、例えば費用の削減かもしれませんし、売上の増大かもしれませんが、何らかのかたちでプラスになる部分が出てきますので、それをキャッシュフローとして評価します。正確に言うと、設定した指標に従って、ビジネスモデルの変革の前後のキャッシュフローを評価するといったかたちです。
 現在、各社で担当された事例を持ち寄り、今の評価でふるいにかけて数値を出すという活動をしています。まだ全体の母数は少ないのですが、各社の具体的な生の事例を取り扱っています。

2.事例紹介

(1)プロジェクトの概要

 ある派遣会社のビジネスモデルを変革するプロジェクトについてご紹介します。ある技術者中心の派遣会社では、求人の引き合いはあっても派遣スタッフの確保ができないので、何とかスタッフの確保を円滑に進めて、効率的に回したいという希望を持っておられました。そこで登録スタッフを強化するための仕組みとして、ビジネスモデルを変革することにしました。時期的には約2年前からの話で、インターネットをほとんどの方が使える状態になっていましたので、インターネットを使った仕組みでシステムを構築しようと考えました。
 システムの導入目的は
@派遣契約数を増やす、
Aニーズに合った派遣スタッフの登録者数を増やす、
B登録スタッフが他の派遣会社に移るのを防ぐという3点です。
 全体で1年ほどかかっているのですが、構築の第1ステップとしては、まずWebシステムでスタッフの簡易登録をしました。この段階では簡単に登録できることだけを目的としています。第2ステップでは、登録したスタッフの詳細情報を取るための手段を講じました。具体的には、どんなスキルを持っており、どんな会社で何をしていたかという情報を入れていただきました。そして第3ステップでは、それをバックエンドのシステムとつなぎました。情報がたまっても、それを効率よく使えないと、かえって営業やアレンジをされる方の負担が増えてしまいますので、そういったことを解決するための仕組みを入れています。
 基本的にはデータベースとWebの仕組みを管理して、そこにメールの仕組みを入れながら進めていきました。派遣スタッフから見ると、今までわざわざ足を運んで仕事を聞き、紹介されたら面接に行くという繰り返しで、その間は自分の今の仕事をストップしていましたので、非常に効率の悪い仕組みになっていました。その一部分でもWebとメールの仕組みで代用できないか、スピードアップが図れないかということを目的としています。  従来、この派遣会社では、まず面接を受けにきた希望者が登録業務をシートに記入して登録していました。そして、実際に企業からの要請があった場合に、その中でヒットする方を探し出してピックアップし、その方に電話などで個別に連絡をとり、引き合わせ手配をするというかたちで動いていました。これを少しでも効率化するために、導入後のフローを考えています。
 システム導入後は、まずスタッフ自身が来社前にほとんどの情報を登録しますので、面接で細かいことを聞く必要はありません。企業からの派遣要請をシステムに登録しますので、ある程度のところまではシステムが自動的にピックアップ作業を行います。そのあと、例えばその個人専用のWebページあるいはメールを使って本人に通知し、勤務の可能状態を確認したあと、初めて営業の方が動くというかたちになります。その結果、前処理の部分と登録業務を省く効果が出るだろうという予測を立てて、導入の設計に入りました。

(2)第1段階−ビジネスモデルの分析

 では、今の事例を各モデルにあてはめるとどういう評価になるのでしょうか。まず、戦略の中の市場という項目に関しては、このシステムを入れてビジネスモデルが変わったとしても、市場が国内の労働市場であることは変わりません。次に顧客という観点からいくと、派遣会社から見た顧客はあくまでも採用をしてくれる企業ですから、これもシステム導入前後で変化はありません。仕入先という点では、派遣会社にとっての仕入先とは潜在的に派遣スタッフになっていただける可能性のある方ですので、インターネットでシステムを構築すると、インターネット環境のない方が振り落とされます。もともとIT化に特化した派遣会社ですから、単に登録者数を増やすのではなく、ここで必要な人を絞り込むという効果が出ています。商品・サービスに関しては、企業ニーズに合った人材が不足していた状態がシステムの導入によってある程度改善され、人材紹介が円滑にできるようになります。競合に関しては、実際に会社で正社員として働いている方も競合になるでしょうし、他の派遣会社も競合になりますが、モデルの前後で変化はありません。
 構造に関しては、組織について大きな変革があります。派遣会社の営業の方は個人でかなりの情報を持たれていて、頭の中のデータベースを有効に活用している業界だったのですが、システム導入後は人材情報がデータベース化されますから、情報がオープンなかたちになります。
 遂行体系のところで、プロセスに関しては、社員の記憶や個人の手持ちのデータベースで管理されていた情報が一元管理されるようになり、オープンな環境になったことが大きな変化です。システムそのものに関しては、紙ベースで管理されていた履歴書やスキルシートが、はじめから電子データとして管理されるようになります。ファシリティに関しては、ファイルでの台帳管理がゼロになったわけではないのですが、データベースをパソコンで見られるようになりました。

(3)第2段階−指標の設定

 次の段階は、実際にどういう評価項目を設定すればそれが証明できるのかという指標の設定になります。例えば、Web経由で登録窓口を開放したことによって期待される効果は、場所と時間の制約がなくなって登録者数が増大するということです。実際にこれを評価するためには、導入前後で1日あたりの登録者数がどう変わるのかを測定すればいいわけです。また、PC、インターネット経験者に登録を限定できるので、技術系のスタッフの獲得率が上がるだろうという期待に対しても、登録者のスキルシートを詳細に分析すれば結果が出ると思われます。
 それから、スタッフ自身が情報登録とメンテナンスを行うことによって、新しい資格を取得したなどの自分の新しい情報をそのつど派遣会社に送ることができます。つまり、派遣会社としては常にスタッフの最新情報を取得できるという効果が期待できます。これはWebへのログインを見たり、更新頻度を見れば比較的簡単に取れる情報です。また、この期間は派遣の仕事はできないといった情報をスタッフに入れてもらえば、派遣会社の社員が調査する時間が削減されるという効果もあります。
 紙ベースではなく、電子情報としてデータベース化されていると、登録情報・変更情報に対する即時マッチングが可能になり、企業からの引き合いがあったときに迅速に対応できます。これについては、レスポンスが上がることが評価項目に入ると思います。また、派遣会社からスタッフに対して最新情報を提供し、ほかの派遣会社にスタッフを取られる可能性が減るという効果も期待され、これはレスポンスの消滅率を計測することで評価できます。
 派遣会社からスタッフへのアクションのログを一元管理する、つまりスタッフに対して派遣会社のだれがどういうアクションを取ったかを詳細に管理すれば、営業の業務効率が上がることになります。これにはABC分析が必要になってきますが、紙ベースの管理に比べて業務がどれだけ短縮されたかという指標で測ることができます。また、社員が個人的に情報を抱え込むことを防ぐ効果もあり、平均のスタッフ取り扱い数が増えれば、このシステムを入れた効果が出たといえます。

(4)第3段階−ビジネスモデルの評価

 この事例は今年の2月に発表したものですので、まだキャッシュフローの評価にまでは至っていませんが、システム導入過程でわかった範囲では、まず登録者が1日20人以上になりました。これは紙ベースで管理していたときに比べ、数倍アップしてます。あとは、評価をするために契約者数やリピート数を指標として測っていくと、先程ご紹介したようなものがある程度具体的な数値を持って出てきます。
 この事例では、派遣会社にWeb系のシステムを導入することによってビジネスモデルが変化し、それによって予測される効果について実際の数値を取っています。現在、さまざまな会社からある事象をトリガーとしてビジネスモデルを変更した事例を持ち寄り、そこに指標をあてはめながら検証していくという作業を行っています。


3.今後の取り組み

 先程の事例ではまだ数値のところが曖昧なのですが、最終的には、評価指標に基づいて金額あるいは数値を出し、その仮説を使って投資回収グラフを作ります。例えば、導入費用として開発費で数千万、インフラ整備に数百万かかったとして、導入後、1日あたりのスタッフ登録者数が20人という状態が続けば、スタッフ1名が稼ぐ平均の粗利をかけていくことで、回収ポイントとその後プラスになる時点はすぐ出ます。そのようなかたちで、投資回収グラフを作って予測をしていくことができるということです。
 実際に、例えばいくら利益が出たという情報が収集でき、評価することができれば理想的ですが、それが得られない場合は、例えば一般的に公開されている財務指標や全体の売上増などのデータを用いて、予測したものが正しいかどうかを見ることができます。そして仮説に基づいたキャッシュフローの変更と実際の具体的な数値を比較すれば、おそらく差が出ます。差が出るということは、評価の指標が足りなかったのかもしれませんし、本来は評価に入れてもしかたがないものを入れていたのかもしれません。次の研究会のフェーズでは、そういったところを各事例で洗い出していこうと考えています。
 仮説から導き出されたキャッシュフローと実際の情報とを比較し、その過不足をなくしていくことによって、最終的には、この指標でビジネスモデルの変化を測れば、ある程度客観的な判断に基づいて評価できるというものを作り上げられると思います。我々のようなインテグレーターにとっては、事前に予測することによって、そのシステム導入の価値を決められるので、そこから見積もりを出せるのではないかとも期待しています。こういったことにご関心のある方はぜひ参加していただいて、事例をどんどん教えていただければ幸いです。
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