名古屋シンポジウム講演録

日 時: 2001年6月25日(月)



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■ 全体提議


「中小企業同士のネットバリアフリーを目指して」

柴田 憲伯
日本ヒューレット・パッカード株式会社
経営改善推進部部長兼社長補佐(BPIA会員)

1.中小企業が直面している課題

核喪失と中抜き
 今までは大企業が核となり、求心力をもってあらゆる産業がぐるぐる回っていたかたちでした。しかし、バブルが弾けたあたりから大企業の生産部門は国内からローレイバー国へ流れ、コストダウン、生産性の向上に向けて動いてきました。現在、日本の中小企業が抱える課題とは、この核を失いつつあるということです。
 また、今までは商品が工場からお客様に届くまでにさまざまなチャネルが存在し、それぞれが付加価値をかけてお客様にものを提供しました。しかし、インターネットが普及し、お客様のオーダーを受けて工場から直送されるという中抜きの状況が現れています。


IT革命のもたらすもの
 アメリカの企業は1990年代、国策的にハードウェアの世界からソフトの世界にシフトしました。その直後はかなりの失業者が出ましたが、その後雇用は回復しています。
 日本もこれから大きく変わっていかなければなりません。IT革命によって労働市場は一時的に混乱することは目に見えています。しかし、高齢社会を迎えて医療・福祉関係の雇用は増えてくるでしょう。さらに生活文化、情報通信、新製造技術、物流等あらゆる分野で雇用規模は上向きに予測されています。大きな変革を余儀なくされますが、経済のパイ自身は大きくなるのです。決して労働力は余っていません。ただ、それが情報リテラシーの分野であるところが今の日本の課題といえます。

2.何故この研究会が必要なのか?

時代背景―我々はどこにいるのか?
 農業化社会から、20世紀前半には工業化社会、20世紀後半には情報化社会、そしていよいよ21世紀には情報を使った創造化社会が始まります。
 農業化社会から工業化社会に移るときにも混乱はありました。また、明治維新もそうだったでしょう。当時、新しい価値観についていけず、たくさんの侍が腹を切りました。福沢諭吉はその時代を生きることを「一身二生」と言っています。1つの身で2つの考え方、生き方をしなければならないということです。今、我々も「一身二生」が前提条件であることを時代認識としてもたなければなりません。  変化には、連続的な変化と不連続な変化があるといわれます。我々は今、その不連続な変化のちょうど端境期、大変革の時期に遭遇しているのです。

時代認識―ITに合わせて新しいプロセスの構築
 このような時代の変わり目には、技術、プロセス、人の3つをコントロールしなければうまくいきません。  まず技術について言えば、自動車や電気の発明など、時代の節目には必ず大きな技術革新がありました。この技術が今は何かと言えば、まちがいなくITでしょう。私がITベンダーだから言うのではありませんが、今、まさにこのITというものが世の中を変えようとしています。
 強い技術とは人間の習慣を変えるものです。習慣が変わると、プロセスが変わります。そうなると、新しい情報技術に合わせてプロセスを作っていくリエンジニアリングの世界になります。日本ではこのリエンジニアリングとリストラクチャーがしばしば混同されますが、リエンジニアリングとは業務の再構築、つまり新技術を導入し、業務を最も生産性の高い姿に再設計することです。リストラとは、採算の悪い事業や工場を売却・閉鎖し、人員を削減することが骨子です。国を挙げて「構造改革なくして新しい世界はない」というのは、まさにリエンジニアリングなのです。
 人については、不連続な変化をだれしもが認識し、それぞれの位置において何をするかを考えなければなりません。そこで、特にIT革命にはコミュニケーションが重要になってきます。今までのものが主体だった変化には、比較的容易に危機感の共有ができましたが、情報技術の世界ではその変化が目に見えません。ですから、常に語り合いながら共通認識の下に変革を進めなければならないのです。

これからのビジネスモデル構築のために
 これまでのサプライチェーンは、既存の物流主体の流れに沿ってコンピュータを導入してきました。しかし、いったんネットワーク化されると、World Wide Webを通じたバーチャルサプライチェーンが情報主体で動きだしました。これからのビジネスは、異業種と結びつきWorld Wide Webの基盤でものを考えていかなければいけません。
 すでに1人あるいは1社独立で何でもできる時代は終わり、価値観の違うパートナーと協力しながら仕事をする時代に入ったのです。そこでは同業種よりも、志が一致する異業種とのコミュニケーションがきわめて重要になるでしょう。
 なぜ我々が中小企業に焦点を当てるかというと、日本が中小企業で成り立っている国だからです。ここが情報技術に取り残されたら、我が国は非常に危機的な状態に陥ります。ヒューレット・パッカードも70年前まではたった2人の会社でした。それが今、9〜10万人になろうとしています。しかし、大きくなって我が社もなかなか動きが遅くなってきました。この変革期に、小規模からスタートできる中小企業をむしろうらやましく思っています。  大企業では、企業内プロセスの大変革で、あらゆるところで工程の中抜きが行われています。それは引き算の世界です。しかし、中小企業は大げさな変革を必要としないので、むしろ足し算の世界なのです。引き算と足し算とではメンタリティにおいて大きく違います。また、大企業はプロセスができたとしても人の再配置に時間がかかります。特に日本の場合、終身雇用などの考え方自体を変えなければいけません。おそらく今、大企業の中では既得権との闘いが始まっているのではないでしょうか。
 その点、小回りが利き、俊敏性があり、しかも既得権もないとなったら、中小企業には何も怖いものはありません。変革期はむしろ中小企業の大きなチャンスなのです。

E−ビジネスモデル研究会の存在意義
 そこで、去年の6月から皆さんとのコミュニケーションの場としてこの研究会を始めました。ここでは「港の酒場でネットワークづくり」をコンセプトとしています。船を出そうとするとき、そこの酒場にはいろいろな人材が集まって情報を交換しました。そういうことが日本の企業には少なかったのです。同じような人が集まってもブレークスルーは望めません。このような場でのたわいのない話から思わぬヒントが得られることを期待しています。

3.E−ビジネスモデル研究会ではどんな進め方でやるのか?


E−ビジネスモデル研究会の位置づけ
 この研究会は、ユーザーと各業界の間に存在し、お互いのコミュニケーションを取りもちます。既存業務のノウハウやリアルネットワークの中から新ビジネスモデルを検討し、実現支援、マッチング、ITなどのプラス・アルファによる差別化を基本フレームとして動いています。
 その中で、我々はネット技術、情報技術による実践手法の提供などを行っていますが、ITベンダーのコミュニケーションはCRM、SCM、ERP等の3文字熟語が多すぎて言っていることがよくわかりません。E−ビジネスモデル研究会では、そうしたネットバリアをなくすためにプロトタイプ的なやり方を導入しています。

E−ビジネスモデル研究会の目的
 この研究会の目的は、いろいろな業種・企業から、さまざまなアイデアをもった人が集まり、そのことをネットワーク技術と結び付け、参加される専門家(情報産業、コンサルティングファーム、法律など)の協力を得ることによって新しいビジネスモデルを構築し実践していくことです。
 アウトプットとしては、今までと違った新しい価値の創造と、その活動を通して新しい方法論を確立し、そのことによって新たな社会基盤創出と日本社会発展に貢献することを目指しています。

会話されたビジネスモデルの例
・バーチャルハウスメーカー―ネットを通じて同業者と協力することで大企業の機能をバーチャルに作りだす(ケース1:アキュラネット参照)。
・大企業の何でもサービス代行業―大企業の総務的な業務、設備保全管理、社宅管理、各種予約等を、ネットを通じて1つのポータルを組み、それぞれの企業と連携して代行します。
・Vision先行型ビジネスモデル―ビジョンは「日本サッカーを世界一に!」、壮大なるゴールとして「健全なる青少年育成」を掲げて設立した加藤久のサッカークラブです。基本姿勢は、脱サッカー協会、脱企業スポンサーということで、全国的からこの志に賛同する個人スポンサーをiモード主体・会費制で募ります。

研究会の進め方
 前提条件は、具体的なケースをもとに議論をスタートすることとし、産業を超えた再構築とは何かを明確にしていきます。
 研究を進めていくためのステップは、やはり5W1Hです。なぜ変わらなければいけないのか、何を変えるのか、この2つが明解になっていなければ何も進みません。まず社内でビッグピクチャを議論し、ゴールを共有し、現実を認識します。そして、ビジネスプラン実施後も議論は続けていきます。
E−ビジネスモデル研究会のテーマ
 サッカー選手の評価は、ボールを持っていないときの動きを見てするといいます。先を見通し、ゲームをデザインする直感的な判断力、それは新しい不連続な向こうの世界を見通すときにも必要なことです。
 不連続な変化にはリスク回避が大事になります。そこで、将来については基本シナリオ、夢のシナリオ、最悪のシナリオの3種類を用意し、何がその分岐点になるかを検証します。このことが見えていなければリスク回避はできません。
 リスクを取るためのプロセスとしては、やはりベンチマーキングが必要です。ベンチマーキングとは、他社のビジネスプロセスやベストプラクティスを探求・参照し、自社に導入することにより最高のパフォーマンスを得ることです。これにより、成功が約束された新しいビジネスモデルの創造を目指します。
 成功の確信がない限り、新規ビジネスの創造は非常に難しいものです。成功の確信とは、VisionやMissionが明確で、自信をもって古いシステムを打ち破ることができる精神状態を意味しますが、ベンチマーキングによって成功の確信をもてるようになるでしょう。

E−ビジネスモデル研究会のVisionと共有の価値観
 内部向けには、何年かたって振り返ったときに「昔は何と愚かなやり方をしていたんだろう」と言えるような成功例を作りたいし、そういう社会にしていきたいというビジョンをもっています。そして、我々の共有の価値観はWIN-WIN-WIN(ユーザーのWIN、ITベンダーのWIN、この研究会に参加された人たちのWIN)です。


4.どのような人たちに集まっていただきたいか?

 我々が求めているのは、世の中を変えられるのだと信じている人、将来に強く危機を感じている人、自分の実業(Traditional)に自信のある人、自分に急進的なアイデアはあっても現在の体制での展開に限界を感じている人、ボーダレス(業界を超えて)に動ける人、皆の知恵と力を合わせれば何だってできると信じている人です。言い換えれば、起業家精神に満ちあふれた人です。そういう方がいらっしゃればいつでもお手伝いしたいと考えています。
 アメリカではITバブルが弾けたといわれ、進化の条件として本物以外はどんどん淘汰されるというプロセスに入りました。しかし、情報技術がなくなるとは思えませんし、情報技術が世の中を変える主役であることは確かです。このような環境下では、リーダーには自分で切り開く自立体質が不可欠です。政府がどうのと他責でものを考えているのでは、ITといえども絶対に成功しません。これまでの成功例を見ると、その傾向がはっきり出ています。
 研究会運営のキーワードとして、「変化」を「変加」と言い換えてみましょう。自分の実業にeを加えたら、あるいは伝統的企業の人たちが集まってそこにeを加えたらという提案させていただき、この研究会の考え方、ビジネスモデルを広げていきたいと考えています。
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■ ケース1


「コラボレーションによるEビジネスの可能性」
宮沢 俊哉
株式会社アキュラホーム
代表取締役社長

1.アキュラホーム紹介

 当社は注文住宅で約35億、ビルダー工務店支援事業で約7億、計約42億の売上規模です。注文住宅だけで年間200棟、全国注文住宅ランキングでは60〜70位という絞り込んだ展開を行っています。
 アキュラシステムとは、これまでの工務店ビジネスが請負型でアバウトだったものに、住宅づくりのプロセスを抜本的に見直すことで合理化技術を入れたものです。今、このシステムを導入している会社は1600、アキュラネットという会員制ネットワークには400社の登録があります。この中でいかにコラボレーションし、日本の住宅をよりやすくしていくかというチャレンジをしています。
 フランチャイズチェーン(FC)は、単なる一方通行で本部の言うとおりやれば成功するというものですが、アキュラネットは双方向で、ネット会員どうしでの情報交換も行っています。

2.支援事業のビジネスコンセプト

 1つは、ビジネスドメインをコア・コンピタンスに絞り込むことです。自社の強みは何かを見極め、そこに特化していくと、当社にとっては注文住宅なのです。
 また、オンライン上でなくても当社は企業対一般消費者(B to C)の事業を行っていますが、それを企業間取引(B to B)のところで提供していく実践型の支援をしています。当社は同じ立場で情報発信ができ、それが大変受け入れられてきているようです。
 現在、アキュラネットは社数ではすでに大手FC並みの規模になりましたが、FCにありがちなエリア保護政策はとらず、オープンにしていこうと試みている段階です。
 さらに、大手が狙いにくい小さな市場をねらったニッチ戦略を展開しています。FCのルールとして、大きなところはこれはやらなければいけないという強制ができます。しかし、細部については自由に選択ができます。そこをねらって、アウトソーサーとしてのきめ細かなサービスを提供していきます。
 その意味で、当社はアキュラネットの本部ではなく事務局なのです。あくまでもアキュラネットの会員は自分の都合のいいように当社を活用していただくことでコラボレーションができてくるのではないかと思っています。そこで、IT技術利用によるBPI(Business Process Integration)が重要になります。また、当社は毎年売上の1%を研究開発費に回すことを基本方針にしており、そうしなければ時代についていけないと考えています。

3.事例紹介:E−ビジネスを視野に入れた試み

 しかし、いろいろな実践を通じて、やはりeだけで完結することはよくないと感じています。
 最近、「ブリック・アンド・モルタル」という言葉をよく目にします。これは建築のことからITの世界の人たちが使うようになった言葉で、インターネットで店舗を出すにはレンガやモルタルは必要ないので、現実の店舗などの構築物を必要とする既存産業のことを総称して「ブリック・アンド・モルタル」とよんでいます。
 これに対してアマゾン・ドットコムのようなものをオンラインビジネスといっています。これは一時大変好成績でしたが、だんだん勝ち組と負け組に二分化してきています。それを傍目で見ながら、初めからITだけで完結させるのではなく、言ってみれば「クリック・アンド・モルタル」というか、今までの仕事のやり方とITをいかに融合させるかが重要なのではないかと思いました。
 その中から工務店と我々、さらにそのほかの人たちも巻き込んでチャレンジしているのがE-プランサービスです。これは住宅建築の業務の中で最も手間暇がかかる積算や設計をお客様に提案していくものです。IT技術を使ってそれを格安に行うことができないかとということで、すでにスタートして約1年になります。
 ここでは通常設計事務所やFC本部が工務店向けに作った場合に4〜5万かかるものを、5000円で出すというチャレンジをしています。またマルチメディア提案システムということで、それプラス5000円で動画による提案もしています。
 もちろんこれはインターネットを通じたデータのやり取りになりますが、工務店の中にはまだインターネットをつなげていないところもありますから、郵送で送ることもあります。その場合は少し高くなりますが、インターネットだと当社は100件でも1件でも全く手間は同じです。
 間取り図、姿図、立面図だけでは立体的なイメージはわきませんが、E-プランサービスでデータをやり取りし、カラープリンタで打ち出すと立体的なパースも出せます。これを人力ですると、建築事務所の一級建築士でもできない人がかなりいますし、特別な職種の人に描いてもらうと5〜7万かかります。それがプラス5000円ででき、従来の図面と合わせてもわずか3日のうちに全国に送ることができます。
 これがスタートしてから1年たち、大変人気は高いのですが、工務店側のインフラがまだできていないところもあって現在はじわじわと来ているというのが現状です。

4.コラボレーションによるE−ビジネスの可能性

 工務店の強みは、多大な営業経費をかけていないことです。大手のようにモデルハウス建設をすると莫大な販売経費がかかります。それをせずに、いかにお客様に提案をしていけるかというところで、バーチャルモデルハウスというものを考えました。これは新技術を使った写真のようなものですが、工務店はそのバーチャルモデルハウスを持ってお客様のところに行き、「これがアキュラネットの新世代ハウスです」と言って見ていただきます。
 そのほかに広告、チラシ、パンフレット、リーフレット、ポスターなども作ります。今までのFCのやり方では、本部がチラシを作り、名前だけ替えておしまいというケースが多いのですが、我々はそれぞれの企業のオリジナリティを出していくことを考えています。
 最近ではITによる共有宣伝として「らくらくホームページ」と銘打って、Web上に工務店がホームページを作れるようにしています。ここには実践者のきめ細かいサービスとして住宅に必要な画像がたくさん用意されており、それを自由に選んでホームページを作ることができます。
 さらにいえば、工程管理などもASP(Application Service Provider)で行っています。iモードで主要な工程、上棟の日にちなどもすぐに検索できます。さらにはグループウェアと工程を組み合わせて、例えば営業マンの契約後の管理などで集金確認のアラームが経理から飛んでくるような仕組みもできています。
 また、住宅資材のリバースオークションを考えています。これはアキュラネットで数をまとめて資材を調達することにより単価を安くしようということです。技術計算も、最近は住宅新法で大変高度な設計が必要となり、旧態依然の工務店ではついていけません。それを計算し、インターネットを通じて出していくことも試みています。
 中小企業の中でうまくコラボレーションすると、大手ではできないビジネスが新しく生まれてくるかもしれません。そして、当社がその人たちと組めるという、我々中小企業にとってチャンスの時代が到来したのではないかと思っています

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■ ケース2; 流通業のインターネット戦略


「ゴルフコンペ景品WEBサイト」
田島 淑雄
株式会社日新
代表取締役社長
(愛知中小企業家同友会・名古屋支部)

1.日新の事業内容

 当社の事業内容は、記念品・贈答品、景品関係の総合ギフトの卸しという全くの問屋業です。年1回380ページほどのギフトカタログを発行するのがメインの仕事ですが、サブとして8年ほど前からゴルフコンペカタログを作っています。1997年1月から、ゴルフコンペ景品をインターネットで販売しはじめ、3年前にはギフトカタログをCD−ROM1枚に収めました。
 去年の6月まで、基幹業務とコンペの景品、CD−ROMはばらばらだったのですが、それをインターネットで統合するとすべてが連動するのではないかと思いました。それがビジネスモデルとしてどう評価されるかを試すために東海ビジネスドットコムに応募したところ、見事に年間12社だけのビジネスプレゼンのステージに上がることができました。

2.日新IT化への道

 昭和63年、受発注業務でコンピュータを導入しました。当時はオフコンが全盛でしたが、当社はいち早くパソコンLANというかたちでつなぎました。平成3年、自動発注システムを導入しました。平成7年、個人的にパソコン通信のニフティに入会し、パソコン通信をするためにザウルスを購入しました。
 私がパソコンと出会ったのは、平成8年にインターネットを接続したときです。翌年1月、ホームページを開設してネット上でのコンペ景品の販売が始まり、平成10年、業界初のCD−ROMを発表しました。
 平成13年5月、東海ビジネスドットコムでビジネスプレゼンを行い、支援を受けられる展開になっています。平成14年1月からニュースタイルビジネス構想が稼働し、すべての業務をインターネットで行うようになります。 。

3.我が社の考えるITとは?

 我が社は問屋ですから、ITはB to Bで何ができるかということになります。企業内情報のデジタル化としては、社長と社員、あるいは社員間で日報の共有が行われています。情報の共有化では、仕入先からの見積書、お客様に対する提案書・見積書を電子ファイル化することを行っております。
 B to Cは、企業から消費者に直接売るいわゆるネット販売の部分です。我が社にはギフトという本業があり、商品の在庫をかなり持っていました。その延長線上で何ができるかと考えるのが、ネット販売の一番の秘訣ではないかと思います。そうすれば初期投資もランニングコストも少なくてすみます。

4.2002年度より実行計画

 まず、B to B市場での新製品、特価品、季節の新製品情報などをスピーディに配信していきます。仕入先が大量に商品を買い込んでそれを処分したいとき、我々にできるのはせいぜいカラーコピーを持って回るくらいのことです。それではどうしても情報のスピードに限界があるので、それをクリアする方法として得意先専用サイトを構築します。
 B to C市場での販売強化を図ります。コンペ景品はニッチな市場ですが、あえて隙間市場でのオンリーワン企業を目指そうということです。また、商売上で情報の共有化を進め、過去の見積書、購入履歴、商品提案履歴などをコンピュータ上にファイルできるシステムを作っていきます。

5.B to Bの展望と戦略

 1つの商品情報を登録すれば、どの問屋でも自由に引き出して使える業界データベースをこれから作ろうとしています。それで、仕入先も商品情報はもちろんのこと、注文いただいた商品の処理状況、納期等の正確な情報がわかります。
 販売店専用のWebも、販売単価が2種類あるのでそれごとに作ります。その中で先程のCD−ROMの機能とデータベースを活用しながら、商品提案シートや見積書等を作ることができます。
 一般企業用Webで新規代理店の募集を行います。ギフト窓口では、こちらが紹介する商品を見ることができますが、あくまでも定価でしか見られません(我々からは卸価格で見ることができる)。

6.我が社のネットビジネス(B to C)

 コンペ景品のサイトを立ち上げるきっかけは、Net Intendで有限会社イージーの岸本栄司さんとの出会いでした。当時の岸本さんのホームページは、関西弁丸出しで企業のホームページらしからぬサイトだったのですが、売る気や意気込みを大変感じさせるものでした。しかもメールへのレスポンスが速く、2時間後にはメールの返信がもらえるというサイト運営をされていました。
 中小企業の経営者には、目標を決めてもいつまでという期限をなかなか区切れない方もおられます。しかし、期限を切りアドバルーンをあげることで私はホームページの開設にこぎつけることができました。
 サイトの構成(売る方法)として、コンペカタログの無料配布、奇数月のプレゼントなどをしていますが、検索エンジンに「ゴルフコンペ」と入れると我が社はトップページの4番目くらいに出てきます。そういったことでホームページへのアクセスを促しています。
 売上の推移は、97年度が250万、98年が650万、99年が1000万、2000年が1500万、2001年で2000〜2500万というところです。

7.ネットビジネスを通じた会社へのメリット

 ネット販売を始めてから、コンペカタログ扱い代理店が増えましたし、業界初のCD−ROMを出すことができました。
 やはり小売りビジネスには感動があります。「日新さんのおかげで楽しいコンペができたよ」という声と同時に、自社のコンペ景品に自信がもてるようになりました。
 アンケートでギフト動向もわかります。最近の動向としては、コンペ景品の調達ルートとして100円ショップが我々の脅威となりそうな気配です。
 社内全体に物流の大切さがわかってきました。ネット上での商品の注文に対しては物流のミスはゼロできています。それは注文時、発送時など何重にもチェックをしているからです。
 ネット上の商売でも、相手の名前を覚えれば必ず喜んでいただけます。そういう意味で、サービスの本質が見えてきました。本当に更新しなくてはいけないのは、社内の意識改革であり業務改革なのです。

8.B to C市場での展望と戦略

 一般企業に対しては、商品データベースを活用してWeb上で完全に注文が完結できるシステムを構築していきます。それには、ファックス注文が7割をしめるため顧客管理がデータベース化されていないので、そのデータベース化をしていこうと考えています。
 営業面では、ゴルフ場との直接取引やWeb上でのサイト提携を積極的に推進し、商品データベースを活用してB to C市場の新規開拓を目指します。

9.なぜ東海ビジネスドットコムにチャレンジしたか?

 東海ビジネスドットコムは、本業の経営状態も厳しく審査され、その中ではい上がってくる会社を支援していくシステムになっています。これにより漠然としていた事業計画が明確化し、しかもビジネスプレゼンまで行くと経営指導が無料で受けられ、ときによっては人材支援まで受けられます。また、上場を目指した場合、投資家からの直接融資もあります。
 来年1月からのニュースタイルビジネス構想が軌道に乗れば上場を目指せるので、東海ビジネスドットコムへの挑戦はかなりいい方向に向かいつつあります。
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■ ケース3; ネット電子入稿システム


「小部数テキスト出版サイト」
木全 哲也
株式会社三恵社
専務取締役
(愛知中小企業家同友会・名古屋支部)

1.ITビジネスに乗り出した背景

 当社がITを使ったビジネスにかかわりだして感じていることは、1つは、ITはアナログ活動の延長線上に存在することです。2つ目に、明確な目的意識をもってITに取り組む必要性です。厳しい環境下、我々中小企業は限られた予算・人材の中で、こういう結果を出したいという明確な目的意識をもって投資をしてきたのです。3つ目は、ホームページを制作するときにはターゲットを絞り込むことです。
 当社は外食産業専門の印刷広告会社として30年以上やってきました。これ部数が少ないうえにデザインがうるさくて面倒なので、従来の印刷会社はあまり手を着けたがらないニッチな市場です。そういう分野に関して当社はそれなりの評価をいただいてきました。
 しかし、環境の変化により、外食産業そのものが非常に厳しい状況になってきました。それと同時に、IT化によってメニューなどは自分で作れるようになり、仕事そのものが激減するという状況に追い込まれました。これを何とかしなければということで、とにかく飲食・外食以外の柱となるものを模索してきました。

2.小部数テキスト出版システムとは

 そういった中で、6年前に、「小部数テキスト出版システム」をスタートしました。この話は同友会で学ぶ中で、大学の先生から最近の講義では板書をしないという話を聞いたことに始まります。多くの先生がワープロを使って資料を作り、学生の人数分をコピーし、それを講義の前に配っていると聞き、その手間を省き、学生に安価なテキストを提供できないかと考えました。
 すでにコンテンツは先生がお持ちです。その資料をあらかじめ1年分いただき、デザインは当社の得意とするところですから、きれいな表紙を付けて1つのテキストとして完成させます。それを年度の初めに学生に買っていただき、先生は何の負担もなく1年間の講義ができるというシステムです。
 そのシステムを通じて先生からは一切お金はいただきません。当社が先生から指定されたテキストを作り、大学内の書店や生協と取引し、生協や書店が学生に販売します。売れ残った場合も当社がリスクを負います。少子化で学生の数も減り、講義のテキストは小部数にならざるをえません。それを先生に何年か同じ内容のテキストを使うというお約束をいただいて、学生に安価で、当社も利益の出る部数を確保し、私どもで預かるというかたちになります。
 当初は、営業の者が行ける範囲の愛知、岐阜、三重の大学を回り、先生とお話をさせていただくというPR活動を行っていました。 c
3.第二の創業―オンデマンド印刷機の導入

 当社は、一昨年ホームページを立ち上げたのですが、そのときに単なる会社案内にはしたくないということと、本業の外食産業専門の印刷という部分をPRするだけのホームページでいいのかと考えました。そして、当時は外食産業のオーナーよりも大学の先生の方がホームページを見る可能性が高いのではないかと思い、あえて立ち上がったばかりの事業を中心とした出版のサイトにしました。すると、意外に反応がよく、約300万円ほどのネットを通じた仕事が発生したので、これはやれるのではないか、最初のねらいはまちがっていないのではないかと確信したのです。
 テキスト印刷は当社が長年やってきたオフセット印刷で対応していましたが、50や100という部数では高くついて、学生にできるだけ安く資料を提供できないかという本来の趣旨に反してしまうことなります。かといって何年分もの在庫を抱えるリスクも避けたいので、何かいい方法はないかと模索していました。  以前からオンデマンド印刷機を導入すればこのシステムは完結するし、ホームページ上でもっと手広くアピールもできると考えていましたが、非常に高価な機械であるだけにずっと決断ができませんでした。しかし、このままの印刷会社を続けても会社がじり貧であることは明白なので、当社としては「第二の創業」を目指すつもりで導入を決断したのです。
 この機械が入ったことにより、どんな部数でもデータさえいただければものの数十分で自動的に印刷・製本できるようになり、小部数印刷にさらにスピーディに対応できるようになりました。

4.オンデマンド印刷機の導入とインターネットが可能にしたこと

 1つは、販売エリアを拡大できるようになりました。それまで営業の者が行って先生にご説明できる範囲でしかできなかったものが、ネットを通じて全国にお話をさせていただけるようになりました。
 当社の次のねらいは、オンライン入稿、電子入稿です。これさえ確保できれば、インターネットだけで原稿を送っていただき、当社がそれを印刷・製本し、製品として送るというシステムが完全に確立できます。そのため、ホームページに電子入稿システムと見積システムを入れ、今年から実際にそのシステムをスタートしています。  それから半年になりますが、北は秋田、西は鳥取からも問い合わせがあり、想像以上の反応をいただいています。また、想定していなかったお問い合わせも多く、こんなこともビジネスにつながるのではないかというお話が次から次へと入ってきます。これらを研究していくことが当社のノウハウになり、今後の新しいビジネスになるのではないかと考えています。
 相談に対してレスポンスをすばやく丁寧にすることで、顧客との信頼関係が生まれます。当社としては、ホームページはあくまでも営業活動の1つの手段であると考えているのです。

5.今後の事業展開

 当社のホームページには、実績として作らせていただいた本を載せています。実は各大学の図書館や個人の方からこれらの本を売ってほしいという問い合わせが結構あるのです。これは先生との話し合いになりますが、できればこれから当社のネット上でその本を販売したいと考えています。  論文や講義のテキストは欲しい方が限られています。当社にはコンテンツもオンデマンド印刷機もありますので、1冊だけ作ることも可能です。したがって、そういった需要に応えることもできるのではないかと考えています。これももちろん先生方の了解を得たうえでの話になります。  当社への問い合わせで最も多いのは、一般の書店で売れないかということです。これに関しては、当社が正式な出版会社というかたちをとって取次店を通じて一般書店に流すことも考えましたが、学術本が一般の消費者に大量に販売できるとは思えませんので、この形態は難しいだろうという結論に達しました。現在、中堅出版社との提携によるその方面のルートを模索中です。  当社の小部数印刷に最適な部数は20部から200部で、しかもページ数が多いものです。一度オンラインで入稿していただければ、電話やメールで何冊の追加でも翌日にはお届けできます。これは大学の先生のテキストだけでなく、一般企業の業務の中にも存在する印刷ではないかと思うので、何とかこれを一般企業の方にご利用いただけないかと考えています。  もう1つ、本来の外食産業専門の印刷も他社にはない当社の特性ですから、この部分も何らかのかたちでアピールしていく方法を視野に入れながら、今後の展開を考えていきたいと思っています。
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■ パルディスカッション・総括
   『どこから手を着ける、事業イノベーション』



モデレータ: 近藤 高司  愛知工業大学 経営情報科学部 経営情報学科 教授
パネラー:
(順不同)
宮沢 俊哉  株式会社アキュラホーム (BPIA会員)
田島 淑雄  (愛知中小企業同友会・会員)
木全 哲也  (愛知中小企業同友会・会員)
柴田 憲伯  日本ヒューレット・パッカード株式会社(BPIA会員)


1.講演に付け加えて―ぜひ言っておきたいこと






(近藤)  先程の講演に付け加えて、これだけは絶対に言っておきたいということがあればお願いします。

(柴田)  今から15年ぐらい前、大企業の中で大きなリエンジニアリングの波がありました。そこで一番難しかったことは、人なのです。これからの時代、先のことがわかる人はほとんどいないのではないでしょうか。
 チェンジは、わかる人は別に教育しなくてもピンとわかりますが、わからない人にはわかりません。その本質は、私も含めて人はそもそも変わりたくないというネイチャーをもっていることにあります。それを無理やり変えてしまうことの是非に思い悩んだ時期もありました。しかし、情報技術は絶対にやらざるをえない、そのことと自分との葛藤なのです。
 これまでの日本は部分最適化であったといわれます。すべての会社が同じプロセスを持っていたときには、既存のプロセスの部分を磨いていけばおのずと全体最適になりました。ところが、ITによって全く違う新しいプロセスを構築しなければいけない時代に突入し、いままでTQC,TQMを中心に日本が効果をあげてきた製造業のこのやり方(物流を中心)では効果が上がらずジレンマに陥っています。今、日本がぶつかっている問題は、そのような過去の文化や成功体験が大変なバリアになっているように感じられます。
 変化とは一人一人が自分で変わることであり、だれかがやってくれるあるいは助けてくれるというパターンでは絶対に変われません。その辺のところが日本は非常に大変な変革時期を迎えているのなだと思います。

(宮沢)  お客様に向けて各工務店の持ち味を出したいのは、小ロットでできるということです。コラボレーションとしてそういう部分で手がつなげますし、さらには全国どこの人とでも手がつなげる時代になりました。我々中小企業が本当にチャレンジしていけば、まちがいなくつながっていける時代が来たと感じています。

(田島)  中小企業のIT化で私が一番気をつけていることは、社員、得意先、仕入先が三位一体となり、インターネットの利用をいかに教育していくかということです。新製品の情報をメールで配信しても、それをクリックして見ることすらできない状態が中小企業の現状です。ですから、昨年11月から仕入先や得意先に対して、アンケートを取りながら当社のインターネット構想を一軒ずつ話しているところです。

(木全)  中小企業が少ない予算の中でどの方向に進んでいこうかというときに、ちまたに情報があまりに氾濫しすぎていて、いったいどれが自社にふさわしいのか理解できないのが実情です。  当社がこの出版システムを立ち上げたときにも、それをどういうかたちで進めていくかという絵がはっきりと描けませんでした。その流れの中で、たまたまネットコンサルタントと契約し、今もいろいろな相談をしています。また、機械の導入でゼロックスとのかかわりができ、そちらからも会社を挙げて支援していただいています。中小企業には、そのような信頼できる情報を与えてくれる人材が必要ではないかと感じています。


2.中小企業がコンピュータを使いこなす方法

(近藤)  中小企業には社内にITがわかる人がいないことが問題です。パネラーの皆さんは、柴田さんを除いて特にコンピュータの専門家ではないようですが、どのようにしてコンピュータを使いこなしているのでしょうか。

(宮沢)  私どもはインターネットでホームページを作るところから入ったのですが、初めは何から手を着けていいのかよくわからなかったので、結局ホームページ製作会社に任せました。
 しかし、そのうちに単なる宣伝だけのインターネットに物足りなくなり、自社でサーバを持ちたくなるのです。しかし、そうなるとシステム管理者が必要になってきます。さらに、社内もLANから今はWANを構築するとなると、そのサーバも管理していかなければいけません。それにはかなりのお金がかかってしまいます。ですから、サーバの管理をしてくれてWeb上からも使えるASPとの組み合わせでやっていかなければきりがないと思います。

(近藤)  社員にITの専門家は何名おられますか。

(宮沢)  100名の社員数で、2名の完全なプロフェッショナルと未熟な人が2名います。

(田島)  私は1996年にウィンドウズ95が出たころに、青年同友会でパソコンを一から勉強していきました。
 当社のホームページも最初は製作会社に頼んで作りました。そのときに、私がワードしか使えないので、ワードで更新できるように教えてもらうというかたちでリニューアル代を払ったのです。そこからいろいろな本を読んだり、詳しい方にお聞きしながら徐々にスキルを高めていきました。
 ですから、実際には当社にはコンピュータに詳しい者は私しかいません。当時はダブルクリックすらできない社員がほとんどだったので、私が時間のあるときに社員一人一人についてゲームで遊ぶところから始めました。今では全社員がメールアドレスを持ち、仕入先からの新製品情報などをメールで配信できるように社内配信から徐々に慣れさせていっています。このままでは1月に間に合わないと思い、一生懸命スキルアップを図っている最中です。

(木全)  当社は社内での専門家はゼロです。私も基本的に苦手で、ほとんどわかりません。必要なことだけは理解していますが、基本的にはアウトソーシングで外部の方に相談してやっています。
 とにかく費用がかからないことが前提条件ですから、したいことを外部の人にぶつけて、一番費用がかからずにそれができる方法を提案してもらい、それだけを勉強し、技術的にこれならできるということをしているのが実情です。
 当社でも自社サーバの話がありましたが、それには費用がかかるので、今は全部レンタルサーバでやっていますし、それで十分できます。

(近藤)  レンタルサーバとは?

(木全)  自社にサーバを置くのではなく、契約した外部にサーバを置き、電子入稿もすべていったん外部のサーバに入ったものを当社が取ってくるというしくみです。
 そのレンタルサーバに専門的な知識がある方がいて、その方にいろいろな相談をしたのが最初です。また、先程言った機械の導入で接点があったゼロックスに相談することもあります。当社は名南経営のイーコールでドメインを取得しましたので、そちらの方にいろいろ相談をする中で話が飛躍していきました。ほかのレンタルサーバがどのような体制をとっているのか知りませんが、我々はそのレンタルサーバの流れの中でたまたまそういう人材とめぐり会えたということです。


3.人をどう育てるか―IT教育の問題

(近藤)  人の問題は一番大事ではないかと思うのですが、ITの人材育成の問題はいかがでしょうか。

(柴田)  ITの専門家といっても、ビジネスがわかる専門家はほとんどの会社にいないでしょう。ビジネスのわかった人とは、今日でいえば宮沢さんであり木全であり田島さんです。
 情報技術は技術革新が早く、常に技術の陳腐化が起こっている世界で、方法論もしっかりとは確立されていません。しかし、常識で考えてみると、ビジネスも技術もわかるということ自体が無理なのだと思います。ですから、分業化した中で、ビジネスの話はこの3人の方のように、何をしたいかを情報技術者に言っていただきたいのです。
 ところが、ビジネスをわかっておられる方にはITがよくわからないものですから、ITで何かうまくできるというウソ〈錯覚〉もたくさんあると思います。私はIT関連に勤める者として、コンピュータ文化を健全に育てたいと心から思っています。ITは人間のためにある道具ですから、何を変え、何を変えなくていいのかという一番大事なことをまずきちんと議論することから入っていくべきでしょう。
 会社の中でITのエンジニアを育てるのには限界があります。それよりも中小企業はとにかく自分の実業を深めてください。そのうえで、これからは道を究めたエンジニアと一緒にコラボレーションする時代です。その線引きができていないために無用な不安を起こしているようにも思えます。


4.コラボレーションを成功させるには

(近藤)  新たにコラボレーションする場合に人数が多すぎるとうまくいかないのではないか、その調整をどうしたらいいかという質問がきていますが。

(柴田)  価値観の合う人(DNA)たちが会話をすると、1つのアウトプットが出てきます。基本的に思惑がないということはないはずで、WIN-WINとはそういうことなのです。我々の研究会にも、来たらもうかるのではないかという人が結構いました。ただ、そういう人は自然と去っていきます。残っている人たちと議論していくと、何か心地よい世界が生まれてくるのです。それは100人に10人もいないかもしれません。
 その人は自分のビジネスに対して絶対に危機感を持っている人です。現状に危機感をもっていない会社は絶対にチェンジは成功しません。今日お話いただいた実例にもありましたように印刷業界はこれから危ないという危機感を経営者がもつこと、これがITの原点です。自分たちの危機感から変わろうとして、サバイブできることをやっていくことが非常に重要で、それには語り合える場が必要です。
 人数には関係なく、目的意識を持っている人がたまたま会って偶然に1つのアウトプットが出てくる、日本にはそんな場が非常に少ないのです。これが私がBPIAを始めた理由のひとつです。

(宮沢)  私はあまり難しく考えずに行動しています。今、ビジネスをやっているところで、ここがもう少し業務効率を上げられればという問題意識を持ったときに、まず自分がITのことを知っていなければしようがありません。その中で、その会社の強みがあった場合、それをITとつなげられないかというところから入っていきます。それが1社で無理だとなれば、もう1社加わって3社になることもあるし、または1対1でやるケースもあります。
 また、当社で作り上げようとした工程管理のシステムがあるのですが、1社で作ると何億円もかかるところが、その技術をすでに半分持っているところと組むとそれが1億になり、もう1社加われば3000万になってしまいます。そのように自分たちで何もかもするのではなく、問題意識をもって強みを持つところを探すという視点で私はやっています。

(田島)  先程の質問は、いろいろな人が集まって考えると、すべてのことをプラスしていかなくてはいけなくなるということだと思います。
 我々の業界でも業界データベースを構築していますが、すべての問屋の言うことを聞いていると1つの商品に対して必要以上の項目を入れなければならなくなります。それをすると、おそらく莫大な費用がかかるでしょう。ものごとはもっとシンプルに考えなければいけません。そのためにはシンプルに考えられる人が必要で、それがリーダーであり社長の役割だと思います。
 先程3億が1億でできたという話がありましたが、すべての業務をインターネットでやってしまう構想をIBMや富士通に依頼すると1億かかります。当社の規模でそれは無理ですから、業界ですでにできあがったものをうまくアレンジして、2000〜3000万で抑えたいと思っています。やはりそういった業界での協調路線もある程度は必要なのではないでしょうか。

(木全)  私はインターネットビジネスがビッグビジネスになるとは思えないので、あまりたくさんの人が集まってもまとまらないし、だれかが狭いところで、ここはおもしろいそうだということを実現する方がいいのではないかという感じがします。


5.ITを利用するための秘訣

(近藤)  去年はアメリカでネットバブルがはじけてナスダックが急落しました。しかし、着実にITを利用していく時代になったので、その使い方についてご意見があったらお聞かせください。

(柴田)  IT業界では、ドットコムのバブルがはじけるのは時間の問題だといわれていました。しかし、ものが進化するときには少なからず本物が生き残っているはずです。  今日お話しになった皆さんは大変ニッチな世界の方で、その世界に行けば日本一というプライドを持っておられる人が集まっています。このように、今自分が持っているコア・コンピタンスを生かし、そこのところでネットを組んでいけば必ず成功するというのが私のドットコムにおける期待です。

(宮沢)  ITには落とし穴があるように思います。確かに便利ですから、これで業務効率が上がるはずだと思うのですが、実際にはそれをうまく使いこなせない人が結構いるのです。
 ただ、私はそれに果敢にチャレンジして、まずはとにかくメールだけでもしよう、パソコンでホームページだけでも見られるようにしようということで、一方通行でもいいからと配信していきました。そうしているうちに、だんだんアイデアも浮かんでくるし、使える人たちも増えてきました。

(田島)  やはり自社の商売の延長線上で考えるのが一番リスクが少ないのではないでしょうか。アマゾン・ドットコムなどは確かに発想はすばらしいのですが、在庫を持ち、物流もすべてやり、ネットだけで商売をしているからいまだに赤字なのです。当社の場合、たまたま在庫があり、代理店のためにコンペカタログを作っていたので、本当にノーリスクでできました。
 要するに、本業の部分で効率化のために何ができるかということです。コンペの景品のように、お客さんの手間のかかっている部分を請け負ってシステム化すればビジネスになるのではないかと思います。

(木全)  印刷業界では、今後B to Bが確実に進化していくだろうと思います。現実問題としてインターネットは非常に便利ですし、これから徐々に広がっていくでしょう。当社も社員のほとんど全員にアドレスを渡したのですが、わからない中でも世の中の変化に対応し、自分で努力して理解しようとする姿勢は感じます。
 インターネットは1つの生活革命的なニュアンスで動いていくでしょう。そちらに見合うビジネスという発想をしていけば、十分ビジネスはできると思います。


6.流通の中抜き現象について

(近藤)  流通の中抜きは中小企業にとってかなり大きな問題があると思いますが、これについてご意見をお伺いします。

(柴田)  中抜きができるかできないかという次元ではなく、せざるをえないところにきていると考えています。
 我々の企業の中でも、リエンジニアリングをするときに工程の中抜きをする場合、なぜ変わらなければいけないのか、何を変えるのかについて人とのコミュニケーションをとり相当議論をしなければいけません。おそらく中抜きをしなければ、我々の国を次の世代に渡せないのではないかと思います。日本が生き残るには、あるいは今の生活レベルを維持するためには、少ない人数で効果をあげる必要があります。その理由は、やはり人口構成が社会構造が変わるにつれて少子化に向かっていることです。これを自然現象として受けとめ、そのことに気づいたら、自分から先にその世界に飛び出していくという姿勢が我々には求められている気がしてなりません。不連続な変化で一番難しいところだと思いますが、そうならざるをえないだろうと思います。また中抜きの決心をするのは、会社側〈経営者〉の決心ではなく、これからのNETを中心とする世界では、お客様が情報を容易にアクセスできることから、ここから買うと安いとかいう実に簡単な理由で、お客様が中抜きの工程〈安い〉をもった会社の方を選んでしまうのです。ですから言葉を変えれば、お客様がそのことを決めるということなのだとおもいます。

(宮沢)  住宅建築の場合、工務店ビルダーがものを買うときの中抜きを考えます。例えばユニットバスで考えると、我々が住設機器会社から仕入れるまでにいくつもの問屋が介しています。その先の製造元も、アッセンブルでとりまとめているだけというケースもあります。
 先日、バスタブ、壁、床、ドアなどを作る会社とコラボレーションを組み、1つのユニットバスを作り出したのですが、ずっと大手メーカーの下請けをしていた彼らは、それをするのに大変勇気がいったそうです。それでも、今の状態ではいけないというので決断したと聞き、私は非常に共鳴しました。そういう人たちのチャレンジが水面下で少しずつ始まっています。
 ただ、ペーパーマージンだけの無意味な中間は抜いても、与信管理や物流の問題もありますから、一気に全部抜くのは難しいでしょう。私どもはそういう役割の人とネットワークを組むことから始めたいと思っています。

(田島)  中抜きに関しては業界によって違うと思います。例えば文具業界などは、以前は日本全国に文具の小売店が約3万8000軒あったのですが、2〜3か月前に調べると約1万9000軒に半減しています。これは完全にアスクルやカウネットによる中抜き現象の結果でしょう。
 ギフト業界の場合はいまだに共存共栄で、小売店はそれなりの商圏を持っており、メーカーが直接小売りをしても物流の問題で不可能な面があります。ただ、企業に対しての直販が少しずつ増えていく時代になり、小売店自体が少し厳しい状況にあるとは思います。

(木全)  我々の業界にはいろいろな印刷があり、機械によって全く違う印刷物が上がってきたりします。ただ、横のネットワークがしっかりしているので、どんな仕事でも受けてそれを仲間うちでこなすというシステムが確立しています。
 しかし、ネット受注ということで入札システムのサイトに参加してみると、まさに中抜きでした。自社が持っている機械で印刷のできて、しかもどこよりも安くなければ仕事は取れません。
 ただ、デザインやプランニングなどの面では、ネット上でのメールのやりとりだけではニュアンスが伝わらないのではないかと思います。ですから、フェース・トゥ・フェースのビジネスも確実に残るだろうという気がします。


7.これからのIT導入のポイント

(近藤)  最後に、ITを導入してもうかるポイントを一言ずつと、将来こういうことをしたいということがあればお伺いしたいのですが。

(柴田)  今日の3社のお話を聞くと、皆さん非常にフォーカスされており、お客様が何たるかを知っています。この一社一社がお客様から見てベストな会社であり、このような人たちが世の中をドライブしていくのです。ですから、もう総花的に広くインターネットの論議をするのはやめた方がいいでしょう。自分のコア・コンピテンスを磨くことが、ITを導入するよりも先だということを確信しました。

(宮沢)  皆さんから支持され、ビジネスになるには、これなら便利なはずだという勝手な供給者論理を押しつけるのではなく、ユーザーに得だと思ってもらわなければいけません。それには、わかりやすいことがキーワードです。難しいのはよくありません。わかりやすいものから入って、徐々に次の段階に進んでいくのです。
 先程言われたようにITは道具ですから、それをいかに使うかということです。昔、鉄砲が伝わってきたときに、織田信長は上手に使いこなしました。今はそういう状況だと思います。言い換えれば、これは我々ビジネスをやっている人間にはチャンスの時期が来ているのですから、これからも頑張りたいと思います。

(田島)  ITはデジタルですが、対応はアナログであるべきです。人間くささがサイトに出ていなければ信用できません。  その意味で、宮沢さんも言われたようにわかりやすくなければいけません。つまり、自分の商売を一言で表現できるかどうかということです。例えば当社には「コンペ景品をゴルフ場まで宅配する会社」というキャッチフレーズができていますが、このわかりやすさがポイントだと思います。
 もう1つ、これは私の師匠である有限会社イージーの岸本さんから教えられたことですが、メールと電話は同じ感覚でなければいけないということです。彼の場合、メールを出すと日中であれば2〜3時間以内で返信がきます。私もそれにならっていますが、それがやがて信頼につながるのです。

(木全)  同じように、私も体験の中からメールでのやりとりが大事だと実感しています。何度もメールを交換する中で、不思議と信頼関係が生まれてきます。ここの発想は、結局アナログなのだろうと思っています。
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