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●ASPの興隆
米国では、昨年の秋からIDC(Internet
Data
Center)の建設ラッシュになっています。インテルは昨年秋、2002年までに2000億円以上の投資を行い、世界26カ国にIDCをつくる、日本でもNECと共同でつくるという発表をしています。AT&T、シスコ、UUネットもこの数年のうちに、世界に20カ所程度のIDCをつくるという発表をしており、米国の大手企業によるインフラへの布石が次々と打たれています。
IDCを利用してASP(Application Service
Provider)も急速に勢力を伸ばそうとしています。ASPの機能として最も期待されているのがSCM(Supply
Chain
Management)、ECの取引の仲介です。特に多くの企業が参加するSCMでは、それに参加する企業がIDCの中にデータをおけば、セキュリティとスピードの面でメリットがあります。またSAP、オラクルなどのERPの基幹業務ソフトの運用、あるいは業務アプリケーション、会計ソフト、在庫管理ソフト等もASPのサービスの対象になっています。企業の規模の変化、業務・業態の変化の激しいときに、その変化に合わせて情報システムをアップ・トゥ・デートなものにしていくという課題を解決してくれるのがASPです。
日本流の考え方からすれば、ASPは昔のVAN(Value Added
Network)がはるかに高機能になったものと考えていただければ、さしあたりの理解はよいかと思います。本質的なところは違いますが、米国に3年遅れているわれわれが、3年先のことを理解することはできませんので、それはあとから気づけばいいわけです。VANも企業同士の取引の交換を行うもので、たとえばプラネットというVANは化粧品や雑貨のメーカーと問屋間の電子商取引を請け負い、いわばECの前身にあたるものです。VANは中小問屋の情報化を助ける仕組みでしたが、ASPはインターネットを使い、単に取引だけではなく、さまざまな業務分野までカバーします。
●インターネットの高速化
インターネットの高速化はいくつもの可能性があり、どれかが絶対的に有利だという状況にはありません。米国では1、2年前まではケーブルがインターネットのインフラの主役なるといわれていましたが、最近ではDSL(Digital
Subscriber
Line)が有力だといわれています。これはADSLが代表的ですが、それ以外にいろいろな方式がありxDSLと総称されます。またCS、BSもインターネットのインフラとして考えられています。
固定無線ではWLL(Wireless Local
Loop)がインターネットの高速回線として実用化寸前です。また、いまは高速ではありませんが、ケータイも十分可能性があります。ケータイとカタカナで表記するのは、単に電話ではなく、電子メールも含めた携帯用の情報交換の道具だからです。いまのiモードは大してスピードがありませんが、さらにワイドバンドなものに変わり、もっと高速になります。またNTTの光ネットの敷設も加速しています。こうしたインターネットのインフラの拡充、高速化がASPの前提条件となっています。
●ASPの技術的必然
技術は劇的に進展しています。かつてムーアは、コンピュータの性能は10年で100倍になると言いました。サン・マイクロシステムズの技術担当責任者のビル・ジョイは、ネットワークの性能は10年で1000倍になると言いました。これもほぼそのとおりに進んでいます。ここで、コンピュータの性能向上よりもネットワークの性能向上のほうが速いので、いまはネットワークによるソフトのダウンロードは非効率ですが、どこかで交差点が来て、ネットワークを使って外部にある資源を利用するほうが有利な時代が来るはずです。
最近ジョージ・ギルダーは、インターネットの性能は3、4カ月で2倍に向上していると指摘しています。これは米国のインターネット協会のデータを引用して、彼なりに解釈しているものです。仮に4カ月で2倍になるとすると、1年で2の3乗、8倍に向上します。このスピードが10年続くと2の30乗、10億倍になります。もちろんこの通りに続かないとは思いますが、10年で100倍のコンピュータとの交差点はもっと手前で来て、コンピュータで個々に処理しているよりは、ネットワークを利用してシステムを構築するほうが有利な状況になることは、容易に想像がつくことです。そこから先はASPビジネスの分野となります。
●ASPは中小企業のため
日本でもインターネットの性能が急速に向上しつつありますが、米国に比べればまだまだ劣っています。米国では去年からIDCの建設ラッシュが起き、そのうえにASPが本格的に乗ろうとしています。日本でASPがきちんとできあがるのは2、3年先かもしれませんが、いまからその準備をしておく必要があります。
ASPは、特に中小企業にとってメリットがあります。まず基幹システムを外部委託することで、巨額の情報投資から開放されます。特にインターネットを基盤にした新しいビジネスの仕組みに切り替えていく必要がある現在、これは大きなメリットとなります。2番目に、オフィスソフトの外部管理によって、社内に情報技術者をおく必要がなくなります。3番目に、自社開発と比べ、開発期間を短縮することができます。4番目に、ビジネスがあたり急速に業務が拡張しても、それに対応することができます。米国のベンチャーがあれだけ早く大きくなれるのはASPがあるからです。ASPは中小企業の飛躍を手助けする大きな機能を発揮するものと期待されています。
日本ではまだ環境が十分に整っていません。ただし業種、業務によって、交差点が早く来るところがあります。それを見極め、乗せられるところから乗せていくというのが賢い態度です。あまり早くやると空回りしますが、いまから十分に準備をしておく必要はあります。
●ASP事例
モードを使った例を二つ紹介します。一つは花屋さんの注文システムです。花屋さんは大口の需要を求めて結婚式場、葬儀屋を回っています。「明日大きな葬儀があるから菊の花を7000本くれ」と言われたときに、従来は卸屋からFAXで相場情報を受け取り、FAXで発注していたために、その場で即決ができませんでした。そこで花の卸屋がiモードを使った注文システムを始め、それをASPに任せました。それによって、花屋さんは出先でiモードを使い相場情報を受信し、その場で発注できるようになりました。卸屋も、従来はFAXや電話で受けた注文をコンピュータに打ち込んでいましたが、iモードからの情報はそのままコンピュータに入りますから、入力の手間が省け、スピードアップになります。
もう一つは、人材派遣会社の例です。従来は、登録している人から来週の予定を電話またはFAXで聞いて、それをコンピュータに打ち込む。そしてクライアントからの要望に応じて検索をかけ、その人たちに電話をして派遣者を決めていました。それをウェブを使って、登録者がiモードから来週の予定を入力できるようにしました。この会社もASPに仕組みづくりを頼んでいます。
このような仕組みで、ASPは日本でもじわじわと広がっていますが、ある時点から一挙に広がるというのが私の予測です。
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