|
BPI事例発表1 |
|
|
|
マイクロソフトは基幹業務システムの一つとして、MS Marketという名前の購買管理システムを持っています。MS Marketができる前は、紙の帳票で手作業で処理していましたが、購買申請だけでも10数種類の帳票がありました。しかも、1件あたり1000ドル未満の購買申請が70%を占め、それは経理が処理する金額の3%に過ぎない。それが96年の状況です。 そこで、MS Marketというイントラネットアプリケーションをつくって、選択したサプライヤーから商品とサービスの発注、調達ができるようにしよう。それをSAPのR/3会計システムとリンクしようと考えました。ここでのわれわれの目標は、紙の削減ではなく、ペーパーワークの削減です。 MS Marketで購買できるのは、商品ではPCのハードウェア、ソフトウェア、事務用品、書籍、ケータリング、名刺など、サービスでは派遣社員、出張手配などです。たとえば私がPCを買いたいと申請すると、データベースにたまって、データベースが自動的にマネジャーにメールを出してくれます。メールからウェブにリンクが張ってあって、マネジャーはウェブで承認します。そうすると、私のメールボックスに自動的に入ってきて、その情報がSAPのR/3に渡されます。そして会計の処理、社内のインベントリー処理も終わります。それと同時に、デルさんなどとインターネットのEDIでつながっていますので、デルの何のモデル何台、何月何日どこに届けてほしいという情報が向こうに自動的に入るという流れになっています。 MS Marketはウェブサーバとデータベースで構成されていて、ベンダーさんとはEメールかEDIのメッセージ、もしくはファイルでしか受け取れないところはファイルで渡すかたちです。SAPのデータベース、保管の手続きなどは社内にメッセージとして引き継がれていきます。私が申請したあとに、経理部門が経理のコードを振り替えて再入力するというオペレーションは全くなく業務が進みます。 MS Marketでは年間40万件、3840億円の処理をしていますが、導入前に1件60ドルかけていたものを5ドル未満に落としました。また購買申請にかかる時間を平均20分から約3分に短縮しました。さらに購買センターのスタッフは19名から2名に減少しました。余った17名は、購買提携先との割引交渉など、より戦略的な業務に従事するようになりました。 ●PM(Project Management)によるビジネスプロセスの変革 マネジメントは、まず目標の明確化・数値化を行い、それを実現するスケジュール、情報共有の方法を考え、企画・実施・評価・改善を行うという流れですが、われわれはプロジェクトマネジメントという一つの管理手法に目を向けています。プロジェクトマネジメントはビジネスプロセスのマネジメントです。われわれはいまTQMというかたちで考えていますが、そのターゲットは利害関係者の期待感(stakeholder expectation)にあります。会社の一番の利害関係者は株主ですが、それだけではない利害関係者の期待感をどう高めるのか、そこで経営のクオリティをどう上げていくのかということを考えています。プロジェクトマネジメントは、PMIスタンダードPMBOK、ISO10006、あるいはBS6079で、経営全体クオリティ向上のために重要であると定義されています。 われわれが整理したのは、プロジェクトには必ず初めがあって終わりがあります。その業務の流れを詳細なプロセスに分解して、実施する。次に実施した活動をレビューする。このレビューが重要で、レビュー結果に基づいて是正措置を講じ、次期計画に向けての準備をする。プロジェクトマネジメントは、これを継続的に実施し、マネジメントのクオリティとパフォーマンスを向上させようという試みです。 インターネットは企業のスピード感を変えさせます。たとえばいままでカスタマーセンターは7時ぐらいで終わっていましたが、ウェブに慣れた消費者は企業に24時間の対応を求めるようになります。そうすると、縦割りの組織だけでは立ち行かなくなって、横の組織が必要になります。私どもは従来の機能ベースの組織に対してプロセスベースの組織といっていますが、横の組織で動けるようなマネジメントの仕組みをつくらなければいけないと考えています。その場合、ミッションでつながっているわけではないので、人とコストと時間と品質という明確に数値化できるものでつなげて、お互いにパートナーだから信頼してこのデータを向上させなさいという教育が社内でも必要になってきています。 PMの基本構成要素はインプットと組織とアウトプットであり、アウトプットを出すことが一つのタスクのミッションです。それをPDCAサイクルの考え方で継続的に改善していくこと、これが改革につながると思っています。 PMのあたっては、まずスコープの計画、どこまでを対象範囲とするかを決めます。そしてWBS(Work Break Structure)とスケジュールを策定します。作業順序を決め、どのくらい時間がかかるのかを分析して、クリティカルパスの洗い出しを行います。これはプロジェクトを進めていくうえでの基本です。 このあとEVMS(Earned Value Management System)を利用したプロジェクト分析が重要になります。EVMSの測定要素として、BCWS(Budgeted Cost of Work Scheduled:計画された作業に対する予算化されたコスト)、BCWP(Budgeted Cost of Work Performed:指定された段階で完了した作業における計画上の予算化されたコスト)、ACWP(Actual Cost of Work Performed:指定された段階で完了した作業における実際に費やされたコスト)があります。 具体例として、予算1000万円で100人で100ユニットの部品を製造するプロジェクトがあったとします。50日後に40ユニットが製造され、450万円使ったとして、このプロジェクトはうまくいっているのか、うまくいっていないのか。ここでBCWSは1000万円、BCWPは400万円、ACWPは450万円となります。ここでスケジュールとコストはどのように消化されているのか。それを測る指標と計算式として、CV(Cost Variance)=BCWP-ACWP、SV(Schedule Variance)=BCWP-BCWS、このパフォーマンスを測る指標がCPI(Cost Performance Index)=BCWP/ACWPとSPI(Schedule Performance Index)=BCWP/BCWSです。これで計算するとCPIは0.89となります。CPIが1以下は予算オーバーを示します。SPIは0.80となります。SPIが1以下はスケジュールの遅れを示します。コストもスケジュールもオーバーランしている。0.89と0.80で、完了予定の60%しか終わっていないということが予測できます。つまり、これは大赤字のプロジェクトということになります。 EVMSの各指標をコストと時間のグラフにすることができます。マイクロソフトのProject 98を使えば、コストのデータをデータベースに置いて、そのデータを見て、一つのプロジェクトのある時点でのパフォーマンスを測定することができます。また、マイクロソフトの製品ではありませんが、Windows上で動くwinsightというソフトはCVやSVがどうなっているかを見せてくれます。アメリカのプロジェクトマネジメントのプロはこうしたツールを使って分析しているようです。 アメリカのマイケル・ボルドリッジ賞には、経営のクオリティを上げるメソッドに対して、必ずシステマティックなアプローチを含めることという基準が入っています。システマティックなアプローチというのは、問題をシステム的に解決する仕組みをつくって、それを情報技術で補うのか、人で補うのか、設計してやりなさいということです。マイクロソフトが考えているICMS(Intellectual Capital Management System)は、PDCAをスパイラル的に進めていくために業務システムはどうあるべきかという考え方です。PMは実施のところで必要になりますが、実施で集まったリアルなデータをデータベースに置いて、いろいろな指標でチェックするようにします。 マイクロソフトが提唱するPMソリューションは、国、業種を超えたビジネスに適合できるものです。業務のプロセスを進めていくうえで必要な定量的な情報をデータベースに蓄え、さらに変更の要因などの定性的な情報もデータベースに蓄える。それらがXMLで他社のアプリケーションと連動できる、もしくはERPのシステムと連動できる。それによってE-CommerceとKMや調達がすべて一つの絵になります。E-CommerceやKM、PMというのは、一つを導入すればいいのではなく、仕事ベースで考え、そこに必要なテクノロジーをあてはめていくという絵になっています。 マイクロソフトでは、こういうものを今後社内でマーケティングだけではなく、SIの開発などにも導入しようと計画しています。
|